「知らなかったので検索してみた」みんな驚いた「くふう」って何だ?プロ野球新規参入の球団名が16文字と長すぎる理由

プロ野球2軍「NPBファームリーグ」に2024シーズンから参戦するくふうはやてベンチャーズ静岡。ユニホーム発表に、キャンプインと“ファーストシーズン”に向けて、チーム作りが一気に加速してきました。

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1月25日、ホームスタジアムの「ちゅ~るスタジアム清水」(静岡市清水区)でキャンプをスタートさせたベンチャーズナイン。12球団のキャンプインは、2月1日からですが、ベンチャーズと新潟アルビレックスはファームリーグのみの参加のため、他球団に先駆けてのスタートが可能となりました。

初日から新チームの始動を一目見ようと野球ファンが訪れたスタジアム。話を聞いてみると、こんな声が聞こえてきました。

「ネットでは見た気がするが、くふうの意味が分からない」 「ピンとこない」 「くふうを知らなかったので、何かなと検索してみた」

特に多かったのが球団名。これまで「ハヤテ223(ふじさん)」の名前で親しまれていましたが、これはあくまで運営会社の名前。1月16日に発表された「くふうハヤテベンチャーズ静岡」という16文字の長い名前に、静岡県民は「あれ?」となり、特に「『くふう』って何だ?」となったのです。

16日のチーム名発表会見をあらためて聞き直してみると、ハヤテ223の杉原行洋代表は、こう話していました。

“命名権”を取得したのは敏腕経営者が率いる企業

<ハヤテ223 杉原行洋代表>
「球場のネーミングライツ設定に加えて、球団のネーミングライツ設定を行った」

「ネーミングライツ」とは、簡単にいうと名前を付ける権利。静岡県内では、これまで、清水エスパルスのホームスタジアム「IAIスタジアム日本平」など、公共施設の名前に企業名が付くケースが多く、ベンチャーズの本拠地清水庵原球場も地元・清水の缶詰メーカー「いなば食品」が取得、大ヒット商品のネコ用フードの商品名を冠にした名前となりました。

では、球団名のネーミングライツはどうか。プロ野球の歴史を紐解くと、戦前には小林商店が大東京軍を支援し「ライオン軍」に、戦後、2リーグ制になって以降は1955年、パリーグに所属していた高橋ユニオンズがトンボ鉛筆と業務提携を結び、「トンボユニオンズ」と改名したことが最初だとされています。

2000年代には、オリックスブルーウェーブ(現オリックスバファローズ)の2軍が「サーパス神戸」に、西武ライオンズ(現埼玉西武ライオンズ)が「インボイス」、「グッドウィル」と改名。今回、ベンチャーズとともにファームリーグに参加する新潟アルビレックスBCは、食品通販の「オイシックス・ラ・大地」が命名権を取得し、「オイシックス新潟アルビレックスBC」となりました。

では、本題の「くふうって何だ?」の答えは、これもスポンサー企業名。「食べログ」を作ったほか、「クックパッド」を育てた穐田誉輝さんが代表執行役を務める情報通信業の「くふうカンパニー」が、命名権を取得し、チーム名に「くふう」が加わったというわけです。ズバリ、その狙いを聞きました。

<穐田誉輝 くふうカンパニー代表執行役>
「念願の、待望のプロ野球球団ができるので、ここに協力させてもらい、(球団と)より深い関係を築くとともに、主に静岡エリアに置いて、『くふう』のブランドを高めていきたい」

このネーミングライツ、実は球団側にも大きなメリットがあると専門家は分析します。

<静岡産業大学スポーツ科学部 和所泰史講師>
「球団にネーミングライツが入ることで球団としては財源確保というメリットがある。チームにつけるということはその金はチームに入るので、選手の契約金などに使える」

「静岡初のチーム」を大切に育てていきたい

球団を運営するには、莫大な資金が必要です。例えば、選手の年俸ひとつとっても、2023シーズンのNPB選手の平均年俸は4,468万円、育成選手の最低年俸は230万円とされます(プロ野球選手会調べ)。ファーム限定のチームとはいえ、30人以上の選手を抱えており、間違いなく大きなコストといえます。新規参入という立場で経営の安定が求められる中、こういったスポンサーの存在は欠かせないというわけです。

静岡産業大学の和所講師は、ネーミングライツの方が、広告料より安価なケースがあり、希望する企業が増える可能性はあるとみています。

球団にとってもスポンサー企業にとってもウィンウィンともいえるネーミングライツ。ただ、球団名のネーミングライツには、リスクはつきものです。

かつて、プロ野球でもスポンサーの経営不振や不祥事などで突然撤退するケースがありました。そこで、杉原代表はくふうカンパニーと資本業務提携契約を結び、チーム経営にも関わってもらうほか、今後はユニホームスポンサーや球場フェンスの広告なども増やしていきたいとしています。

「くふうハヤテベンチャーズ静岡」、チーム名が長すぎる背景には、静岡初のプロ野球チームを大切に育てていきたいという深い意味がありました。「育成、再生しながら勝つ」と掲げた生まれたばかりの地元球団を、企業や行政はもちろん、わたしたちも温かく後押ししていきましょう。

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