松山英樹に戻ってきたアイアンの距離感 「タテ振りシャドースイング」の効果?

終盤の猛チャージで13位フィニッシュ(撮影/服部謙二郎)

◇米国男子◇ファーマーズインシュランスオープン 最終日(27日)◇トリーパインズGC サウスコース(カリフォルニア州)◇7765yd(パー72)

松山英樹は1イーグル、5バーディ、2ボギーの「67」で回り、47位から13位まで巻き返して競技を終えた。後半5番までパープレーだったが、6番から3連続バーディ、最終9番(パー5)はチップインイーグルと上がり4ホールで5つスコアを伸ばす猛チャージ。前日に喫した5連続ボギーのうっ憤を晴らし、次戦のシグニチャーイベント(昇格試合)「AT&T ペブルビーチプロアマ」(2月1日開幕/カリフォルニア州ペブルビーチGL)を含む3連戦へ弾みをつけた。

ドライバーショットも安定感が出てきた(撮影/服部謙二郎)

首位と8打差で優勝争いから離れてスタートしたこともあってか、この日は自分の調子を上げるため、きっかけを探しているようだった。2日目後半から崩れたショットを修正した。安定感を増したドライバーショットは、特に高難度な17番(パー4)でもフェアウェイ中央をとらえた。イーグルで締めた9番はドライバー、3番ウッドとも完璧だった。

状態を上げてきたショットの中でも、特にアイアンが上向いてきた。昨季まで「アイアンの距離感が合わない」と嘆くシーンが多かったが、今週を見る限り、そのキレ味は戻ってきて、多くのチャンスを作った。この日の14番(パー4)では、グリーン右奥の狭いエリアに切られたピンに対し、右サイドのファーストカットからバンカー越えで、しっかり距離を合わせ、狙い所に落とした。“強い松山英樹”を感じさせる一打で、こんなアイアンショットが増えれば、自ずと上位争いする展開になるはずだ。

アイアンショットの距離感に手応え(撮影/服部謙二郎)

アイアンの良さはスタッツに現れた。ストロークゲインド・アプローチ・ザ・グリーン(グリーンを狙うショットのスコア貢献度)は3.769で全体の11位。松山は「コントロールショットは距離感ができていると思いますけど、フルショットでも距離感を合うようにできたらもっと良くなるかなと思います」と言い、道半ばながらも手応えを感じている。

試合後の練習で連日、黒宮幹仁コーチとスイング修正に取り組む中で、今までやっていなかったようなクラブをアップライト(タテ)に上げるシャドースイングを行っていた。ハーフウェイバックまでタテに上げて、手の位置やヘッドの位置を確認し、構え直して球を打つ。“右に出るドロー”という理想の出球を求め、いろんな課題に取り組み、結果として行き過ぎた動きを修正する取り組みの一環なのだろう。以前より少しタテ振り感が強まったように見えるスイングは、復調の要因の一つかもしれない。

試行錯誤が続くグリーン上(撮影/服部謙二郎)

一方、パットはショットほど“いい段階”に来ていないものの「やることがいっぱいあって、それがちょっとずつ良くなってきてはいます」と言う。3週前の2024年初戦「ザ・セントリー」でかなり狭くしていたスタンス幅は以前のように戻り、依然としてストロークの試行錯誤を続けていた。試合の合間のグリーン上でも、前傾の角度を気にしながらシャドースイングを行っていた。この日の7番で6.5m、8番で3.8mのバーディトライを、読み、ストロークとも完璧で決めたことは、大きな収穫ではないか。

8番は完璧なバーディパットを決めた(撮影/服部謙二郎)

最終盤の猛チャージで、出場した日本人3選手中の最上位でフィニッシュした。今週の開幕前、「久常涼が世界ランキングで迫ってきているが…」と少し意地悪な質問をぶつけた時に、ムッとした表情で「自分のベストをやれば関係ないです。がんばりますよ」と返されたのを思い出す。必至にもがき、結果につなげる松山は“日本勢最上位”のポジションを簡単に明け渡すはずがない。(カリフォルニア州ラ・ホヤ/服部謙二郎)

イーグル締めした9番のティショット(撮影/服部謙二郎)

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