カギはコンテンツの「再利用」 “売れ続ける”状態をつくる新たなマーケ手法とは

シリーズを通してご紹介してきた「トリプルメディアの近未来」。第3回の記事では、オウンドメディアの在り方と具体的なコンテンツについてご紹介しました。最終回となる今回の記事ではSNSの影響で大きく変化したマーケティングプロセスと、インフルエンサー活用に必要な知識についてご紹介しましょう。

SNSの登場で大きく変化したマーケティングプロセス

これまで、マーケティングプロセスと言えばAIDMAに代表されるような認知から購入までの流れが重要で、多くの認知を獲得して分母を増やし、その中からいかに購入に繋げることができるかという一方通行的な考え方が主流でした。

しかし現在、消費者はTVCMに触れる機会が減るばかりか、SNS上ではステルスマーケティングを反射的に嫌うようになっており、企業から直接届く謳い文句には慎重になっています。そんな現在の消費者にアプローチするためには、認知・理解・興味などさまざまなマーケティングプロセスにおいて、『ユーザーから拡散され、さまざまなメディアで再利用される状態を作る』という意識が重要になっています。

図表1 従来のマーケティングプロセスは認知から推奨までの流れが重要で一方的だった

『再利用される』とは、例えば購入した商品を気に入ったユーザーが他者にその商品を推奨するAというコンテンツをSNSに投稿したとします。そのコンテンツを見て、購入段階で後押しされるユーザーもいれば推奨内容から新たな商品の利用価値を発見したり、興味を惹かれるユーザーもいるでしょう。そうして購入に至ったユーザーがその商品に好意を抱いてリポストしたり、また別のメディアにオススメ商品として紹介する場合もあります。なかには公式がオウンドメディアで発信している内容と合わせて新たなコンテンツを再作成して投稿する場合も考えられます。これらのUGC(User-Generated Content、企業ではなく消費者が制作するコンテンツ)作成は、良い商品であればあるほど、あらゆる段階で生み出されるようになり、全てのマーケティングプロセスに良い影響を与えることが期待されます。

図表2 現在はマーケティングプロセス各段階で、再利用される状態を作ることが重要

このような現代的なマーケティングアプローチを理解して活用するためには、各メディアの得意分野と、それぞれのメディアでコンテンツ化を助けてくれるインフルエンサーの役割まで理解する必要があります。

メディアごとの得意分野とは TVCM一強時代は終焉

以下の図はメディアごとの認知から購買後の流れの影響度合いを数値化してグラフ化したものです。

図表3メディアごとの認知から購買後の流れの影響度合い    出典:トライバルメディアハウス(https://www.tribalmedia.co.jp/note/socialmedia-marketing-210408/)

出典:トライバルメディアハウス(https://www.tribalmedia.co.jp/note/socialmedia-marketing-210408/)

特徴的な部分を抜粋して見てみましょう。

まず入り口となる認知から興味の段階においてInstagramの効果が非常に高く、マーケティング活動を行う上で無視できないほどの影響力となっています。一方で、テレビCMは認知には寄与しているものの、購入後のアーンドメディアに関わる後半の段階ではその効果が低下しています。

YouTubeも上位の段階において影響があり、特に商品やサービスの理解を促進する点で優れていると言えます。また、YouTubeは動画の長さとメディアの性質から、情報を効果的に伝える手段として優れており、InstagramやTwitterと比較しても高い情報伝達能力を持つと言えます。このように、現在のマーケティングにおいてはフェーズごとに得意分野の異なるSNSやメディアを使い分けることで、消費者の認知から購買までのプロセスに影響を与える必要があるのです。

つまり、昔のようにTVCM一強の時代ではないため、これさえやっておけば認知が獲れるという媒体は存在しません。今求められているのは、自社に影響のあるメディア全てにおいてそのメディアに合致したコンテンツが提供されている状態が必要なのです。

一見すると、代理店を巻き込んだ大規模なマーケティング活動が必要なように見えますが、多岐に渡るメディア全てのコンテンツを自社で生みだすのはあまり現実的ではありません。だからこそ企業は得意分野であるオウンドメディアを充実させて、第三者によるUGCの拡散を促進する戦略が重要であり、その助けとなるインフルエンサーに注目が集まっているのです。

インフルエンサーの種類と役割の違い

前述の通り、多岐に渡るメディアで影響力を与えるコンテンツを自力で作り続けるのは、あまり現実的ではありません。

そこで、メディアごとに消費者へアプローチするため、アーンドメディアや第三者コンテンツを活用することになるのですが、インフルエンサー・KOL(Key Opinion Leaders)・KOC(Key Opinion Consumers)といった『異なるタイプの第三者』が重要な役割を果たします。まずはこれら第三者の違いと、それぞれの特性について理解し、適切なアプローチを行うことが必要です。

図表4インフルエンサーの種類と役割の違い

インフルエンサー (Influencer)

インフルエンサーは、一般的に大規模なフォロワーを持ち、特定のテーマや分野で影響力を持っている個人や有名人を指します。彼らは広告主の商品やサービスを紹介し、彼らのフォロワーに対して多くの認知を得ることができます。しかし、インフルエンサーが広告を行う際には、今年10月から施行されたステマ(ステルスマーケティング)規制に準拠し、広告であることを明示する必要があります。企業として消費者に正しい情報を届け、顧客との信頼関係を築いていくことが大切です。

KOL (Key Opinion Leader)

KOLは、特定の分野やテーマにおいて専門知識を持つことから、特に信頼性の高い情報提供者です。彼らは専門家や業界関係者としての地位を築いており、その専門知識に基づいたアドバイスや意見は消費者にとって情報価値が高いコンテンツとなります。このようなKOLと提携することで、消費者は専門的な情報を得て商品やサービス理解を深めることができ、信頼性のある情報源として活用することが可能です。

KOC (Key Opinion Consumer)

KOCは、普通の消費者でありながら特定の商品やサービスに対して強い愛着や信頼を持ち、自発的にその経験や意見を発信する人々を指します。彼らの意見や体験談は、他の消費者にとって非常に信頼性が高い情報源となります。このようなKOCとの関係を築くことで、口コミやエンゲージメントを通じて広報効果を高めることが可能です。

インフルエンサーの種類と役割の違い

一見すると消費者に影響力のある消費者として同じように見えますが、明確にその性質は異なります。曖昧にせず、しっかり理解して各メディアで発信すべき内容に合致したインフルエンサーを活用するようにしましょう。

特にKOL(Key Opinion Leaders)は、高い専門知識からアーリーアダプターとして活躍し、そのコンテンツをイ ンフルエンサーやKOCに拡散する役割も果たしてくれます。

企業がオウンドメディアで発信した提案をKOLが受けて、第三者として消費者に情報発信を行うといった流れは、現代のマーケティングにおいて非常に重要な役割を持ちます。KOLが実際に商品やサービスを理解・評価し、分かりやすくその情報を発信してくれることで、消費者に信頼性の高い情報を提供することができるのです。

まとめ

今後、オウンドメディアとアーンドメディアを組み合わせてマーケティング戦略を構築するためには、バラバラに展開するメディアごとに最適化されながらも統一されたメッセージを発信・管理するバランス感覚が求められます。インフルエンサーを含めた消費者との関係性を構築しながら効果的なマーケティングを展開するためには、優れたデジタル戦略の統括者と、組織全体の協力体制が必要不可欠となるでしょう。

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