阪神・淡路大震災以降、次々に起こる大災害…今、日本で取り組むべき備え、過去に学ぶ教訓を再確認

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜6:59~)。1月17日(水)放送の「激論サミット」のコーナーでは、阪神・淡路大震災の教訓と、災害に向けての今後の対策・備えなどについて議論しました。

◆発生から29年、阪神・淡路大震災を振り返る

1995年1月17日未明に発生した「阪神・淡路大震災」。地震の規模を示すマグニチュードは7.3で、国内史上初の"震度7”を観測。死者数は6,434人で、そのうち災害関連死は約900人。住宅被害は全壊が約10万5,000棟、半壊が約14万5,000棟、一部破壊も含めると約64万棟に及び、経済被害額は約9.6兆円にのぼりました。

この震災により、日本の災害対策には大きな変化がありました。例えば、地震の震度は体感や周囲の状況から8段階で推定されていましたが、震度計による観測に完全移行し、"弱”や"強”といった階級が新設。10段階で表すようになりました。

そして、カセットコンロ・ガスボンベの規格も統一。それまではメーカーによってサイズや構成部品が異なり、共用することはできませんでした。さらに、水道のレバーも以前は上げると止まり、下げると水が出ましたが、震災でレバーにものが落下し水道水が出しっぱなしになってしまう事例があったため、下げ止め式が普及。人・組織面では、DMAT(災害派遣医療チーム)が発足されるなど、ボランティアが活発化。多くの市民が支援活動に従事するきっかけになりました。

その他、ジャーナリストで海洋冒険家の辛坊治郎さんは、阪神・淡路大震災による大きな変化を2つ挙げます。ひとつは"補償”。辛坊さんは「以前は個人に対する財産補償は1円もしてはいけないという常識があったが、今は普通に政府から補助金が出る。しかし、当時は自治体に補助金は出るが個人に対するものはなかった。この震災で変わった」と振り返ります。

もうひとつは、"自衛隊”。「当時、自衛隊が街で活動することにものすごいアレルギーがあり、自衛隊は救助に行きたかったが要請がなく出られなかった。しかし、今は大きな災害が起きるとすぐに自衛隊が出動する。これも大きな変化」と指摘します。

当時、阪神・淡路大震災を経験した辛坊さんとキャスターの伊藤聡子さんは、今と比べて圧倒的に情報量が少なかったと話していましたが、震災後に生まれた法律事務所ZeLoの弁護士・由井恒輝さんは、当時と今の大きな違いとして"SNS”の存在を挙げ、「今はむしろ大量に情報が入ってくる。しかも、そのなかには偽の情報もあり、その取捨選択が非常に難しくなった。それが今の問題としてある」と危惧。

また、阪神・淡路大震災で死亡した方の8割以上が建物の倒壊による「圧死」でした。そこで、その後は住宅の耐震化が進み、2018年の国土交通省発表のデータによると、耐震化総戸数は約5,360万戸。耐震性のある住宅は約4,660万戸で87%に相当しており、耐震性不足の住宅は約700万戸、13%相当となっています。

この耐震性不足の問題は、今年1月1日に発生した「能登半島地震」でも影響しています。というのも、今回の地震で能登地方の旧耐震の建物が多数倒壊。特に高齢者の家は耐震化が進んでおらず、キャスターの堀潤は「今後、過疎高齢化地域の安全をどう確保していくかは重要な問題。都市部は開発が進み、耐震化に関しては補助も出ているが、過疎高齢化世帯の災害に対する備えは、まだまだ足りない」と懸念します。

◆神戸はいかにして復興へと至ったのか

大きな災害が起こると、その土地を離れてしまう人も少なくありません。神戸も震災後1年で約10万人が転出。しかし、徐々に再び人口が増加し、震災発生から10年で元の水準の人口152万人に。

なぜこうも回復できたのか。神戸市の企画調整局・藤岡健部長に話を聞いてみると、早期かつ計画的にインフラ整備、再開発事業を進めたことが要因と言います。事実、震災の9日後には復興のための「神戸市震災復興本部」が設置され、同年6月には「神戸市復興計画」を策定。その計画に基づき、生活再建や経済の活性化、さらには区画整理事業などが推進されたそうです。

そしてもうひとつ、地域の"横のつながり”も大事なことだとか。藤岡部長は「自宅が潰れた時に助けに行ったのは周りの住民、復興も市民力によって早期の回復が図られたと聞いております。市民がひとつになって街を作っていく力が、平時でもそうですが災害時に機能するようまちづくりを進めてきたことがあります。やはり、見知った人がいるから(転出した人も)帰ってくるのではないかと思います」と話していました。

堀は現在の能登地方の状況を見て、「時代によってやらなければいけないことはどんどん変わり、増えてくる。そうしたなかで復興のエンジンを何にするか。そして、インフラで言えば通信。能登半島地震ではスターリンクが投入されていたが、通信網の安定化も今後のインフラづくりの基盤として必要」と論じると、伊藤さんは「情報がないと何もできないというのは災害が起きるたびに実感する。地域で自立・分散した形を整えておくことがこの災害大国では大事」と同意します。

◆災害大国・日本、普段から備えておくべきことは?

現在、日本では2つの大地震が30年以内に発生すると言われています。ひとつは「南海トラフ地震」。その発生確率は政府発表で30年以内に70~80%で、想定される死者数は約32万人。もうひとつの「首都直下地震」の発生確率は30年以内に70%。想定されている死者数は最大で1万1,000人となっています。

今回の議論を踏まえ、大地震への備えに関する辛坊さんからの提言は、"地震動予測図に騙されるな”。「地震動予測図上、能登半島は0.1%~3%だった。予測図の確率の低いところばかりで大きな地震が起き、人が亡くなっていることをもう少し注目すべき」と主張します。

一方、由井さんの提言は"二次避難先への誘導”。「限界集落で完全復興を目指しても元の生活に戻るのは難しい。しっかりとした支援を受けるためには、ある程度の規模があるところにいる必要がある」と言い、「それも(被災者を)無理やり連れてくるのではなく、納得して誘導できるようになれば」と理想を語ります。

伊藤さんは"自助・共助 シミュレーション”。まずは自身の準備が大事であり、さらには「都市部ではコミュニケーションをいかにとっておくかが重要」と指摘。加えて、「自分がいるところがどんな被害が想定され、二次避難の場合にはどうすればいいのか、普段からシミュレーションしておくことが大事」と訴えます。

最後に堀は、「いまだ災害が起きていないだけで、日本列島どこでも(災害は)起こり得るということは肝に銘じておきましょう」と注意を促していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 6:59~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組X(旧Twitter):@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

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