ライドシェア解禁間近、ドライバー視点で魅力ある仕事になるのか?

ライドシェアが2024年4月に一部解禁される。しかし、猛反発しているタクシー業界への配慮なのか、運行管理などをタクシー会社が行う内容となることで、外国で行われているライドシェアとは別モノとしてスタートすることになりそうだ。

ライドシェアそのものについても、前述のタクシー業界などの反対派と推進派とで意見は割れているが、4月スタートのタクシー会社が運行管理を行う体制についても賛否両論飛び交う事態となっている。

しかし、こうしたライドシェアの賛否両論は、既得権と新規参入の対立といった業界視点のものか、トラブルや事故などの安全への不安、タクシー不足解消などの利便性向上といった利用者視点のものが多く、働き手であるドライバーにとってどういった労働環境になるのかを考えるものは少ない。

そこで今回は、運営するシニア専門求人メディアでシニア向けのタクシードライバー求人を扱っている私自身の経験も踏まえ、ライドシェアの4月の解禁内容が働き手にとって魅力的なのか、問題点はないのか、解説していく。

制限まみれの解禁内容に?

まずは4月に解禁される内容を簡単に整理するが、ライドシェア解禁は以前から議論されてきたものの、タクシー業界などの反発もあり、これまでは解禁の見通しが立たなかった。2023年8月の菅義偉前総理の講演以降、急に推進の機運が高まり、10月以降、デジタル行財政改革会議で協議され、決定されたものが12月20日に「デジタル行財政改革中間とりまとめ」として出された。

ここで4月解禁の内容として示されたのは、一言で言えば、非常に限定的な内容と言える。タクシー会社の運行管理の中で、エリアや時間帯を限って解禁される、というものだ。

例えば、運行管理の他、ドライバー教育、車両整備、運送責任などもタクシー会社が行うとされ、料金もタクシーと同額、配車依頼もタクシー配車アプリを使うという。エリアや時間は配車アプリのデータに基づき、タクシー不足のエリア・時間に限定となる。ドライバーは雇用契約に限らないとされるので、Uber Eatsのような業務委託契約となるのだろう。

タクシードライバー以上の魅力にはならない?

上記のような限定的な解禁となることで、働き手の立場としてもライドシェアのドライバーは制限の多い仕事となる可能性が高い。

ライドシェアは、外国では自家用車を持つ人が自分の好きな時間にアプリで旅客の依頼を受け、有料で目的地まで運ぶイメージが一般的だ。米国などでライドシェアサービスを提供するUberによるフードデリバリーサービス・Uber Eatsの場合、日本でも登録した配達員が自分の好きな時間にアプリで受けた配達を請け負う。ライドシェアでもこのイメージが強そうだが、4月の解禁では違うものになりそうなのだ。

タクシー配車アプリからタクシーと同じ金額で、タクシー会社の運行管理によって配車され、しかもドライバー教育までタクシー会社がやるというので、ドライバーはタクシー会社で教育を受けた上で、タクシー会社に管理されながら働く形になるかもしれない。単にタクシー会社の中に一般ドライバーが混ざって働くだけになるのではないだろうか。すると、乗務開始と終了後に個人タクシーであっても義務付けられるアルコールチェックを含め、細かい管理内容を守りながら一般ドライバーはライドシェアの仕事をすることになるだろう。

また、料金もタクシーと同じであれば、ライドシェアのドライバーの報酬もタクシー以上ということはないだろう。タクシーのドライバー募集が難しい中、タクシーと変わらない勤務や報酬だったとして、ライドシェアが魅力的な仕事として働き手が集まるかは非常に疑問だ。解禁がタクシー不足のエリアと時間に限定されるのも、自分の好きな場所や時間に働けるわけでないということだ。

ライドシェアそのものへの賛成・反対はさておき、働き手・一般ドライバーにとって2024年4月の解禁の内容は、タクシードライバーになるのとそこまで大きな差がないものにしかならず、魅力ある仕事と言えるかは微妙なものになってしまいそうだ。

寄稿者 中島康恵(なかじま・やすよし)㈱シニアジョブ代表取締役

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