子として、親として、職員として…52年間の感謝“市役所”に刻む 八潮市で旧庁舎お別れイベント

机にメッセージを書き込む市民=27日午前、八潮市旧庁舎

 1971(昭和46)年の完成から52年たち、昨年末に閉庁した埼玉県八潮市役所旧庁舎で27日、お別れイベントが行われた。参加した市民は解体前最後の旧庁舎内を見て回り、壁や窓ガラスに感謝のメッセージを刻んだ。

 旧庁舎は2011年の東日本大震災時に外壁タイルが一部崩落するなど、耐震性が指摘されていた。新庁舎は建設工事が21年に始まり、昨年10月完成。今年1月から供用開始されている。

 市は昨年12月から旧庁舎1階ロビーに、お別れメッセージ記入ブースを設置。市民らが「52年間お疲れさま」「思い出をありがとう」などと感謝の気持ちを記していた。

 この日は旧庁舎に入れる最後の機会とあって、午前9時の受け付け開始と同時に多くの市民が来訪。旧庁舎内の壁や窓ガラス、机に別れのメッセージを書き込んだ。

 かつて市役所に勤めていたという同市八條の加藤芳恵さん(64)は「働いていた当時の記憶がよみがえる。壊してしまうのは残念」と名残惜しそうに話していた。

 普段なかなか立ち入ることのできなかった市長室や議長室も公開され、市民は熱心に見学していた。家族で訪れた同市緑町の岩田悠鶴さん(11)は市長席で笑顔を見せ「座り心地が良かった」、妹の瑚冬さん(8)は「思った以上に市長室が広かった」と話していた。母親の佳子さん(39)は「子どもの時は両親に連れられて何度も来て、自分が親になり育児中は手続きなどで何度も通った場所」と思い出を振り返り、「新庁舎が完成してうれしい半面、この空間がなくなるのは本当に寂しい」としんみり話していた。

 市公共施設整備課によると、旧庁舎の解体工事は2月からの予定。

展示された1971年開庁当時の写真や資料=27日午前、八潮市旧庁舎

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