世界4位シナーが全豪OPで四大大会初優勝!メドベージェフに2セットダウンから大逆転勝利「本当にハッピースラムだと思う」<SMASH>

シーズン最初のテニス四大大会「全豪オープン」は大会最終日の現地1月28日に男子シングルス決勝を実施。第4シードのヤニック・シナー(イタリア/世界ランク4位)が第3シードのダニール・メドベージェフ(ロシア/同3位)を3-6、3-6、6-4、6-4、6-3の大逆転で下し、悲願の四大大会初優勝を飾った。

2日前の準決勝では18年大会の4回戦以来全豪では負けなしだった世界1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)から殊勲の勝利をつかみとった22歳のシナー。今大会はジョコビッチ戦以外全てストレートで勝利し、23年シーズン後半からの好調を維持したまま素晴らしい勝ち上がりを見せてきた。

決勝で顔を合わせたメドベージェフには過去3勝6敗と負け越しているものの直近では3連勝中と苦手を克服しつつある相手だ。それだけに俄然シナーの四大大会初制覇への期待は高まっていた。
ところが試合は予想外の展開となる。立ち上がりのシナーは、メドベージェフがバックハンド側にボールを集めてきたことで自分の形を作れず悪戦苦闘。

さらには相手の正確なコート中央への配球により得意のフォアハンドのアングルショットも封じられ、ストローク戦ではミスが多発してしまう。第3ゲームで先にブレークを献上すると、以降もメドベージェフを崩せず。最終第9ゲームでもサービスダウンを喫し、36分で第1セットを落とした。

第2セットに入ってもシナーは反撃の糸口をつかめない。フォア、バック共にストレートを封じられたことに加え、メドベージェフの正確なリターンにも苦戦。

10分以上にも及んだ第2ゲームをキープするなど粘りを見せたシナーだったが、第4、6ゲームではそれぞれストローク戦で再び後手に回ってしまい痛恨のブレークを許してしまう。第7ゲームでは意地を見せて1つブレークを返すも、メドベージェフの2度目のサービング・フォー・ザ・セットとなった第9ゲームはブレークバックできず、早くも2セットダウンに追い込まれる。 それでも22歳のニューヒーローは諦めなかった。第3セットは終盤まで互いにキープが続く緊迫の展開となる中、徐々にシナーは本来のプレーを取り戻していく。

ストローク戦でのエラーも減り、反対に安定したプレーを続けていたメドベージェフがミスを犯す場面が増加。膠着状態のまま迎えた第10ゲームではシナーが力強いプレーでメドベージェフを押し、ブレーク及びセットポイントを取り切って逆転勝利に望みをつないだ。

第4セットも第3セットと似たような流れに。だがここではメドベージェフに疲労の色が見え始め、余力を残していたシナーが攻勢に出る。

序盤はなかなか機能しなかったバックハンドのダウン・ザ・ラインやフォアハンドのカウンターも出始め、ポイントを先行されても我慢強いプレーでサービスキープを継続。すると第10ゲームではロングラリーをことごとく制してセットポイントを握り、最後は攻撃的なリターンを起点にポイントを奪って2セットオールとする。
こうなるとシナーの勢いは止まらない。勝負のファイナルセットでは消耗の激しいメドベージェフに対して、容赦ない攻めのテニスを貫いたシナーが主導権を掌握。相手を左右に振り回し、強打からのネットプレーも織り交ぜて先にブレークに成功する。

特に表情を変えず淡々とプレーを続けたシナーは、プレッシャーのかかる最終第9ゲームでも順調にポイントを獲得。チャンピオンシップポイントではシナーらしい強烈なフォアハンドのウイナーを決め、3時間44分の熱戦の末に華麗な大逆転勝利を収めた。

ちなみにイタリア人男子選手の四大大会優勝は、1976年の全仏オープンを制したアドリアーノ・パナッタ氏(元4位/現73歳)以来約48年ぶり。全豪優勝は男女を通じて初めての快挙だ。試合後の表彰式でシナーは以下のように感謝の言葉を口にした。

「全豪は素晴らしい大会。本当にハッピースラム(全豪の愛称)だと思う。みんなに感謝している。僕はチームと共に毎日毎日努力していて、もっと強くなろうとしている。どんな状況にも対応できるように成長しようとしている。そんな僕を理解して日々支えてくれているみんなに感謝したい」

驚異の巻き返しで大きなマイルストーンを築き上げたシナー。今後のさらなる成長を期待せずにはいられない。

文●中村光佑

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