柔道ツアー訪日客誘致 茨城県企画、名所巡りや文化体験 嘉納治五郎ゆかり 〝聖地〟筑波大で練習も

モニターツアーに参加して寝技の練習に励むフランスの柔道家たち=つくば市天久保の筑波大

新たなインバウンド(訪日客)需要を生み出そうと、茨城県や関係団体が柔道ツーリズムの可能性を模索している。競技人口約50万人のフランスをターゲットに実施したモニターツアーでは、柔道を中心に日本の伝統文化に関する茨城県の名所を紹介。今後は参加者の意見を参考にツアー企画を練り、長期滞在による観光消費額の拡大を狙いたい考えだ。

モニターツアーは同県内の鹿行5市などで構成するアントラーズホームタウンDMOと筑波大、県などが企画。武道の神を祭る鹿島神宮、日本遺産の偕楽園や弘道館の名所巡りと座禅、ミニ畳作り体験を織り交ぜ、5泊6日の日程で実施した。

筑波大で今月12日早朝に行われた寒稽古には、フランスの柔道家ら3人が参加。同大柔道部員や他の外国人選手らに交じり、約2時間にわたって寝技や乱取り、立ち技の練習を熱心にこなした。

「柔道の父」と呼ばれた嘉納治五郎(1860~1938年)は、同大前身の高等師範学校と東京師範学校で校長を務めた。練習に参加した柔道2段のシルバニ・ブリソンさん(27)は「フランスの柔道家にとって、ここは聖地」と話した。

フランスでは、子どもが礼儀作法を学ぶ習い事として柔道が広く普及し、日本の伝統文化に対する関心も高い。柔道雑誌の編集長、オリビエ・レミさん(47)は「40~50代の愛好家は、日本で練習するのが夢。ツアーがあれば参加可能性が高まるのでは」と予測する。

県などは、学外選手にも練習の場を提供している筑波大と連携。今後はツアー参加者の意見を踏まえ、高付加価値ツアーの企画開発を目指す。さらに県と友好都市の同国エソンヌ県の柔道連盟を通じ、欧州全体へのプロモーション展開を視野に入れる。

筑波大柔道部の岡田弘隆総監督(56)は「柔道を通して海外の方々と交流を深めることができる」と教育上の利点も指摘し、「茨城の良さを海外に発信することに貢献できれば」と協力に意欲的だ。

県内の2023年1~10月の外国人延べ宿泊客数は13万1000人。このうち台湾や韓国などアジアからの訪日客が6割を占める。今後さらに外国人の誘客を図るには、欧州の需要をいかに取り込むかが鍵を握る。

県国際観光課の幡谷佐智子課長は「柔道を通して茨城県の伝統文化や魅力を伝え、観光消費の拡大と地域振興につなげたい」と話した。

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