整形、不倫、ストロングゼロ......金原ひとみが『アンソーシャル ディスタンス』で描く、絶望する女性たちの暴走。朝井リョウによる解説を収録した文庫版が本日発売!

2021年に谷崎潤一郎賞を受賞した金原ひとみの短編集、『アンソーシャル ディスタンス』の文庫版が本日発売された。 絶望の果てに、必死に摑んだ一筋の希望。それがアルコールや整形、不倫だとしたら……? 『アンソーシャル ディスタンス』が浮き彫りにするのは、現代の女性たちの苦悩と喜び、依存そして暴走。 〈朝起きてまずストロングを飲み干す。化粧をしながら二本目のストロングを嗜む。通勤中は爆音で音楽を聴きながらパズルゲームをやり、会社に着くとすぐにメールや電話の連絡作業をこなす。昼はコンビニで済ませてしまうか、セナちゃんや他の同僚と社食や外食に行き、食事中あるいは戻る前にビールかストロングを飲む〉(「ストロングゼロ」より) 本作で描かれる、5人の“絶望する女性たち”が絶望に溺れ必死にもがく姿はまったく他人事ではなく、やがて共に転がり落ちるように、一気に物語に引き込まれる。 ・心を病んだ恋人との生活に耐えきれず、高アルコール飲料に依存する女性(「ストロングゼロ」)

・十歳年下の彼氏の肌の若さに当てられ、整形沼へ走る女性(「デバッガ―」)

・夫から逃げだしたのに、今度は不倫相手に振り回される女性(「コンスキエンティア」)

・生きる糧だった推しのライブが中止になり、彼氏と豪遊の心中旅行に繰り出す女性(「アンソーシャル ディスタンス」)

・恋人と会えない孤独の日々の中、性欲と激辛欲が荒ぶる女性(「テクノブレイク」) また、文庫化にあたって、直木賞作家・朝井リョウが解説を寄稿している。 〈すぐに全編を一気読みした私は、これぞ金原ひとみ、ありがとう金原ひとみ、いつも心に金原ひとみ、と万歳三唱せんばかりの高揚感を抱いた。本書は、著者の作品を愛する読者の方々には勿論胸を張って差し出したいし、著者の作品が初めての方、購入を迷われている方にはそれ以上の自信を持って推薦したい一冊なのだ。〉(解説より)

【金原ひとみプロフィール】

1983(昭和58)年、東京生れ。2003(平成15)年、『蛇にピアス』ですばる文学賞。翌年、同作で芥川賞を受賞。’10年、『TRIP TRAP』で織田作之助賞、’12年、『マザーズ』でドゥマゴ文学賞、’20(令和2)年『アタラクシア』で渡辺淳一文学賞、’21年『アンソーシャル ディスタンス』で谷崎潤一郎賞、’22年『ミーツ・ザ・ワールド』で柴田錬三郎賞を受賞。著書に『アッシュベイビー』『AMEBIC』『ハイドラ』『持たざる者』『マリアージュ・マリアージュ』『軽薄』『fishy』『デクリネゾン』『腹を空かせた勇者ども』、エッセイに『パリの砂漠、東京の蜃気楼』などがある。

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