浜田チャーハンで再注目、カネテツ「ほぼシリーズ」開発秘話

1月7日に放送された年始恒例の人気番組『芸能人格付けチェック!2024』(ABCテレビ)で、もっとも注目を集めたのが、ミシュランシェフが作ったチャーハンを当てるというお題だった。

多くの芸能人を惑わせた、カネテツデリカフーズの「ほぼシリーズ」(各350円)。スーパーでも取り扱われている

3つある選択肢のなかでも「絶対アカン」答えとして登場したのが、MCの浜田雅功が作ったチャーハンだったのだが、ほとんどの芸能人が浜田作を「ミシュランシェフが作ったチャーハンだ」と思って選択。その結果を受け、SNSでは「浜田チャーハン選ぶ人多すぎて笑う」「店開いて」など盛り上がり、多くの芸能人を虜にしたチャーハンを自宅で作って見たいという声が続出した。

そんな話題のチャーハンで使われたのが、「ほぼカニ」「ほぼホタテ」「ほぼエビ」。神戸の食品メーカー「カネテツデリカフーズ」(本社:神戸市東灘区)による、魚を再現した練り製品「ほぼシリーズ」の海鮮だ。同社の担当者に、放送後の反響や「ほぼシリーズ」について改めて話を訊いた。

■「ほぼエビ」は完売し、急ピッチで生産中

──私も番組を見て、翌日スーパーに「ほぼシリーズ」を買いに行っちゃいました・・・! 採用されたことへの率直な感想をお願いします。

ほぼシリーズのなかでも「ほぼエビ」は2023年9月に発売した比較的新しい商品。オンラインストア限定ということもあり、まだまだお客さまのお声を集めきれていないところだったので、芸能人の方に認めていただけるかドキドキでした。

結果、多くの芸能人のみなさまに「ほぼ海鮮チャーハン」をミシュランシェフのチャーハンだと思っていただくことができたのはうれしい限りです! 今回、浜田さんにほぼシリーズを美味しく調理いただき、お墨付きをいただいたことが社員一同とてもうれしく、ほぼシリーズへの自信と今後の開発の励みになりました。

──視聴者からは、どのような反響がありましたか?

放送日以降、弊社オンラインストアにはたくさんお問い合わせをいただいております。オンラインストア限定の「ほぼエビ」は一度完売し、急ピッチで生産をおこなっています。

また番組で紹介された「ほぼ海鮮チャーハン」のレシピページもたくさんの方にご覧いただき、さらには「作った」という投稿をSNSで拝見し、ほぼシリーズを楽しみ続けていただいていることが、とてもうれしいです!

■ 社内でも賛否両論あった「ほぼシリーズ」

──改めて「ほぼシリーズ」はいつ、どのようなことをきっかけに開発されたのでしょうか?

ほぼカニは、「世界一ズワイガニに近いカニ風味かまぼこを作る」をテーマに掲げ、社内でプロジェクトチームを発足、2012年に開発をスタートさせ、2014年に発売した商品です。

練りものはおでんやおせち料理など、冬は食べていただく機会が多いのですが、夏は冬に比べて利用していただく機会が少ないことが課題としてありました。「夏場も練り製品を楽しんでいただきたい」という思いと、開発当時ズワイガニが高騰していたことから、安価でカニを食べているような気分になれる商品をお客さまにお届けしたいという思いが込められています。

ほぼ海鮮チャーハンで使われた、ほぼカニ・ほぼエビ・ほぼホタテ。見た目もクオリティがすごい…

──今ではその一風変わった商品名も浸透していますが、発売当時は驚かれる方も多かったのでは?

そうですね。実は「ZY(ズワイ)」などさまざまな商品名のアイデアが出ましたが、当時の社長が試作品を食べた際に、「これはほぼカニやね」という感想を話したことから「ほぼカニ」と名付けられました。

社内でも賛否両論あり、特にこのネーミングにより「本物」という誤解をお客さまに招く可能性はないのかという懸念はありましたので、注釈として「※カニではありません」のコピーをパッケージに記載しました。

──分かりやすいですよね。

発売後は、「商品名とコピーが面白い」「面白いと思って食べたら、ほぼカニだった」という反応をSNSなどでいただくことが増えていき、その投稿を見た方がまた興味を持ってくださるという連鎖が広がっていきました。

カネテツ「ほぼシリーズ」の特設ページ(写真はスクリーンショット)

■ 食の不安やお困りごとを解決するというミッション

──それでその後、カニ以外の商品も増えていったんですね。

はい。ほぼシリーズ第2弾として2015年に発売したのが「ほぼホタテ」。こちらも魚介類の価格高騰を背景に開発しました。

その後、毎年新商品を開発するなかでほぼシリーズは、当初の価格高騰している食材への着目に留まらず、アレルギー物質を含む食材(いくらやエビ)、大切な食文化でありながら絶滅危惧種である鰻など、食の不安やお困りごとを解決する、というミッションのもと商品開発を進めるようになりました。

単なる代替食品という位置づけではなく、食べられない人も一緒に楽しく食べられる食卓を「ほぼシリーズ」で創っていきたいと考えています。

──商品名通りほぼその食材の味わいなのに、その食材はまったく使われていなくて、本当に不思議です! どうやって開発しているんですか?

たとえば「ほぼカニ」ですと、理化学分析により本物のカニのうまみ成分(アミノ酸)を分析し、旨み成分数値を参考に味を組み立てています。ただ本物とまったく同じ数値で再現しても、期待する美味しいカニの味にはなりませんでした。

そこで本物の旨み成分の分析値をベースに、人の舌にも頼りながら、いいとこ取りをする形で人が期待するカニの美味しさを作りました。

食感については、従来のカニ風味かまぼこが「縦」にまっすぐ繊維が入っていたところを「斜め」に繊維を入れ巻き、またカットの角度や繊維の細さも何度もテストすることで、口のなかでほぐれるカニ特有の食感を再現しています。

オンライン限定商品の「ほぼエビ」(498円)と「ほぼうなぎカツ」(698円)

──今後もほぼシリーズは増えていくのでしょうか?

現在、世界的に水産物の需要が増加しています。その背景を受け、直近の取組みとしては2022年より「ほぼ乱獲コンテスト」という社内コンペを開催しています。このコンテストは「乱獲で減少した海の資源保護のため、アイデアを乱獲する」という発想のもと、普段開発をおこなわないスタッフや年齢や役職もさまざまなメンバーが複数のチームを構成し、みんなでアイデアを出し合って、食の課題への貢献度や品質の高さを競いあっています。

過去何度かおこなわれたコンテストで1位を受賞し、商品化に漕ぎつけたのが「ほぼ毛ガニ」や「ほぼエビ」です。シリーズ化したことでお客さまに求められるクオリティが高まり、社内で切磋琢磨しながら日々、商品開発をおこなっております。ぜひ今後も楽しみにしていただければと思います。

「ほぼシリーズ」はスーパーのほか、同社の公式オンラインショップにて販売中。オンライン限定商品の「ほぼエビ」は完売しており、今後再販が予定されている。

また同社の公式サイトには、ほぼシリーズ(ほぼエビ、ほぼカニ、ほぼホタテ)3種を贅沢に使い、ラードと紹興酒がポイントとなっている「浜田チャーハン」のレシピのほか、「ほぼカニ天津飯」や「ほぼカニトースト」など、さまざまなレシピが公開されている。

噂のチャーハン作ってみた。白ねぎは粗みじん切りにし、ほぼカニ・ほぼホタテ・ほぼエビと一緒にラードで炒め、卵を溶いて入れ、卵が半熟になったらご飯を入れ、ご飯がパラパラになる様に炒め、紹興酒・塩・こしょうを入れて味をととのえれば完成!簡単なのに、今まで作ったチャーハンのなかで一番美味しく感じた。1人前で使ったほぼシリーズの量(各20g)→ほぼカニは2本、ほぼホタテは1.5個、ほぼエビは3尾。

取材・文・写真/野村真帆

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