「高岡発ニッポン再興」その126 液状化の「潜り込み」判定、支援金を左右

出町譲(高岡市議会議員・作家)

【まとめ】

・能登半島地震の被害を受けた高岡市。液状化現象が深刻な状態に。

・「罹災証明書」の判定次第で支援金の額が大きく左右される。

・判定のポイントは「傾斜」と「潜り込み」。高岡市はどのような判定を下すのか。

能登半島地震が発生以降、テレビでは、石川県の市町村の状況を刻一刻と伝えていました。死者の数は日に日に増えます。倒壊した家屋の下敷きになったりして死亡が確認されたのです。また、避難所の映像も映し出されます。人々は死こそ免れたものの、身を寄せ合っていました。あの地震は、人々の日常を奪ったのです。

そんな中、高岡市でも、深刻な被害が出ていました。液状化現象です。家が傾いたり、沈み込んだり。道路では、地下から汚泥が噴き出したり、き裂が入ったりしたのです。高岡市では、とりわけ、海に近い「伏木地区」や「吉久地区」で深刻でした。地震がまた起きたら怖いとして、親戚の家などを転々としている住民もいるのです。

私は先日、先輩市議会議員の薮中一夫さんらと一緒に長岡技術科学大学の木村悟隆准教授と「吉久地区」を歩きました。木村さんは災害支援制度に詳しく、全国の災害現場を視察している方です。

驚いたのは、道路に隣接する片側の住宅が、ずらりと沈み込んでいる光景でした。70センチほどの深さの家もあります。入口に車庫のある家も多く、車が出せない状況になっています。これでは生活は厳しいですね。

一方、道路の反対側の家は、沈んでいません。片側の家だけが沈んでいるのです。木村さんはメジャーをつかって、道路と沈んだ家との落差を測っていました。その差が重要なポイントなのです。木村さん曰く、道路面から1メートル下がれば、罹災証明書で「全壊」の認定が出る可能性が高くなります。また、床が道路面より下にあれば、大規模半壊といいます。

罹災証明書とは、国や県の支援を受ける際に、極めて大事な証明書です。「全壊」「大規模半壊」「中規模半壊」「半壊」「準半壊」「一部損壊」と、被災の深刻さによって、分けられています。高岡市の職員らが、現場で調査し、判定します。高岡市では1月22日現在、「全壊」はゼロ、「大規模前半壊」は15、「中規模半壊」は54、「半壊」は14、「準半壊」は154、「一部損壊」は1245です。

「全壊」がないのはいいのですが、木村准教授は「被災者にとっては判定が厳しいほうが、国や県の支援が多くでる」と語ります。そうなのです。県からの住宅再建の支援も、「全壊」なら最大で300万円ですが、「半壊」なら100万円にとどまります。

この罹災証明に関しては、市町村が責任をもって行います。国や県が決めることではありません。ただ、液状化に関しては内閣府が被害認定運用指針を出しています。それに沿って、市町村が判断できるのです。

ポイントとなるのは、「傾斜」「潜り込み」です。読んでみると、「住家の床上1メートルまでのすべての部分が地盤面下に潜り込んでいる」と明記してあります。この場合、損害割合50%以上で「全壊」というのです。一方、「住家の床までのすべての部分が地盤面下に潜り込んでいる」。このケースでは、損害割合40%以上50%未満の「大規模半壊」というのです。

木村准教授は「地盤面」に関して、「道路」を基準に見ています。道路より、床が低い家は数多くあります。その考えに照らせば、それらの家は「大規模半壊」となります。それでは高岡市はどのような判定をしているのでしょうか。

トップ写真:薮中議員(中央)と木村准教授(右側)(執筆者提供)

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