「災害時の労務管理改善を」 田辺市職員急死で第三者委が再発防止策を提言、和歌山

真砂充敏市長(右)に報告書を提出する、第三者調査委員会の安部将規委員長(左)=和歌山県田辺市役所で

 2018年に和歌山県田辺市危機管理局長として台風の災害対応に当たった中野典昭さん(当時57)がその直後に脳出血で亡くなった件を巡り、弁護士らでつくる「第三者調査委員会」は27日、真砂充敏市長に報告書を提出した。中野さんへの負荷を強めた可能性がある組織上の問題点について指摘し、再発防止策を提言した。

 中野さんは18年8月23日朝から一昼夜にわたって災害対応に当たり、24日夕方に帰宅。翌朝自宅で倒れ、26日朝に亡くなった。20年6月には、民間の労災に当たる「公務災害」に認定されている。

 その後、中野さんの遺族から当時の事実経過を詳しく調べてほしいという申し入れがあり、市が第三者委員会を設置。委員会は昨年7月以降、市職員や遺族ら延べ45人から聞き取りを行うなどして調査を進めていた。

 報告書は、長時間の連続勤務や危機管理局長としての重責などが中野さんに肉体的、精神的な負荷を与え、本人の基礎疾患を著しく悪化させて発症に至ったと考えられると結論付けた。

 その上で、避難勧告を発令する場合の判断権者が曖昧であるなど、市の組織上の問題点が中野さんへの負荷を強めた可能性があると指摘した。

 再発防止策として、災害対応時でも適切に休息を取れるようにするなど、職員の働き方を見直すこと▽業務効率化や職員交代を容易にする取り組みなど、危機管理局の業務を見直すこと▽災害対応時の判断手続きの明確化や組織体制の徹底など、防災体制を見直すこと―を提言した。

 市役所で会見した調査委員長の安部将規弁護士(大阪弁護士会)は「災害対応に当たる職員の健康と福祉に配慮して持続可能な体制をつくることは、市民にとっても重要。今後、さまざまな見直しをしていってほしい」と述べた。

 真砂市長は「報告書を重く受け止め、早急に内容を精査した上で対応を十分に検討し、適切に取り組んでいきたい」と話した。遺族に対し、哀悼の意を表するとともに、今後の対応について改めて説明する場を設けることを伝えたという。

 中野さんの妻(63)は「これまで知りたかった問題点を明らかにしていただけた。夫の死が無駄にならないよう、市には改善すべき点について真摯(しんし)に向き合ってほしい」と語った。

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