【今週のサンモニ】森羅万象を「アベガ悪い」と結論付ける病的番組|藤原かずえ 『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。今週も森羅万象を「アベガ悪い」と決めつけております。

今週も「アベガー」

2024年1月28日の『サンデーモーニング』のトップニュースは、前週と同様に自民党派閥の裏金問題でした。しっかりと正攻法で追求すればと思うのですが、相変わらずズレたコメントが散見されました。

寺島実郎氏:国民としてこの問題をどう考えるのかと言うと、この本質はアベ政治なるものが持っていた権力と金、つまり政治と経済の過剰同調がなぜ起こったのかについて、本気で考えなければいけない。

今週も出ました。相変わらずの「アベガ―」コメントです。政界で発生する森羅万象を「アベガ悪い」と安易に結論付けてしまうところがこの番組の病的なところです。

あえて説明すれば、安倍政権は国民から絶大なる支持を受け、議席数という形で権力を持っていましたが、安倍総理はけっして権力を濫用することはなく、選挙で信を問うとともに、慎重に議論を進めてきました。まさに安保法制の議論はその典型です。

また、安倍総理が政治資金を濫用したようなケースは報告されてなく、かつての経世会の金権体質とは程遠いクリーンな政治家であったと言えます。

政治が先頭に立って経済政策を打って行ったことを「政治と経済の過剰同調」と表現するのも悪意を感じます。そもそも今回の裏金問題と安倍政権とは何の接点もありません。単なる思わせぶりに過ぎない安易なコメントです。「本気で考えなければいけない」のは寺島氏の方です。

テレビ番組で飯を食う人を極小化しよう

寺島実郎氏:国民が真剣に考えなければいけない政治改革は何だということだが、民主政治の究極の目的は、政治で飯を食う人を極小化していく努力が大事だ。米国の人口比3倍も抱えている国会議員の数を少なくともこれを機会に、人口3割も減っていく国だって言うのだから3割以上代議士を削減するところに踏み込まないと改革にならない。

これも何度聞いたかわからないほど繰り返されてきたコメントです。今回の問題は、政治資金の報告書不記載の問題であって、必ずしも政治家の数を減らせば問題が解決するとは言えません。

また、民主政治の究極の目的は、民意を政治に反映することであり、「政治で飯を食う人を極小化」することではありません。むしろ寺島氏のような「テレビ番組で飯を食う人を極小化」する方が無駄な広告費を支払う必要がなくなるので、国民にとっては好都合です(笑)。

三輪記子氏:これだけ自民党が緩み切っているのは、政権交代が起こらないことでタカをくくっているのだと思う。このままタカをくくらせていいのかというところで、野党やメディアが頑張っていかなければならないが、野党やメディアの力が削がれてきたのもアベ政権の負の遺産だ。

これもどうしようもない「アベガ―」コメントです。

安倍政権が野党やメディアの力を削いだという主張の根拠はどの事実に基づいているのか、まったく出所不明です。安倍政権時に野党やメディアが、人格攻撃や偏向報道で勝手に醜態を晒したのは事実ですが、それは安倍政権とは無関係なことです。

TBSも第三者委員会を設置しろ

三輪記子氏:民間企業とかであれば、第三者委員会が設置されて客観的な捜査がされる事案であるにもかかわらずこれが行われないというのが今の緩み切った現状だ。法律上の責任さえ問われなければいいことではない。

これはまったくおっしゃる通りです。自民党も第三者委員会を設置して客観的に問題を精査することが必要です。

なお、民間企業で第三者委員会が必ず設置されているかと言えば、そうとも言い切れません。緩み切った企業は、第三者委員会を作らないで客観的な検証を行いません。例えば、ジャニーズ問題におけるTBSがそうでした。本当に国民をバカにした緩み切った企業です。

松原耕二氏:やはり「秘書が秘書が」ではなくて、何が起きていたのかを第三者委員会か国会でやるべきだ。つまり、まだ何もやっていない。すべてはこれからだ。

そんなことを言うからには、松原氏が所属するTBSも、第三者委員会を設置してジャニーズ問題を検証して下さい。「まだ何もやっていない。すべてはこれからだ」と言えます。自分ができもしないことを他人に強要するのは傲慢としか言えません。

みたらし加奈氏:政治家や官僚や政党の政治の担い手が役割に反する行動を取っている場合にそれが大学生の社会一般のことから身を引いていたいとか、社会への関心を削いでいく関連性を示したデータがある。やっぱりどう考えても、政治に携わっている人が嘘をついたり言い訳を述べたりする姿は若者や子供たちにいい影響を及ぼすとは考えられないので責任をどう取るのか追及の声を大人たちが弱めないことも大事だ。

「大人たち」に求められることは、そんなことを理由に社会から逃避するようなナイーヴな大学生を見捨てることであり、そんな大学生を「大人」と考えずに過保護に擁護するようなコメンテーターの説教など聞かないことです。

専門知識もなく、不安を煽るだけ

さて、裏金問題に続いて今週も能登半島地震が話題となりました。志賀原発の安全性に対して誤解を生じさせるような報道がありましたので紹介したいと思います。

アナウンサー:今回の地震をめぐって活断層にこれまでにない動きがあったこともわかり波紋が広がっています。(中略)能登半島地震では、志賀原発に対する新たなリスクが浮き彫りになりました。側溝の蓋は壁との間に隙間ができため落ちてしまいました。道路の白線10cmほどズレていることがわかります。この異変が確認された3つの地点は富来川南岸断層に沿った形で見つかったのです。9km南には志賀原発があり、地震を引き起こしたと見られる断層からは20kmほど離れています。現地調査を行った専門家は震源の断層と連動して動いたと指摘します。

名古屋大学鈴木康博教授:20kmも離れた断層も一緒にある程度の活動をすること自体も今までは確認されたことがないので…。富来川南岸断層は陸上だけではなくて、さらに海の中へ続いていることがわかった。

アナウンサー:近くの海岸でもずれが確認できたことから、この断層は従来の想定より長い可能性が出てきたのです。

鈴木教授:長い断層になればなるほど大きなマグニチュードの地震を起こしうることになりますから、原発から非常に近い断層の一つですから、そこは良く調べないといけない。

アナウンサー:現在再稼働の審査が行われている志賀原発。今回の地震は大きな課題を突き付けています。

あえて、専門的にコメントさせていただきますと、一定のせん断応力下にある脆性材料において、せん断亀裂の破壊が連動するのは今になって判明したことではなく、マイクロメカニクスの常識です。

(*「せん断応力」については、下記リンク先を参照)
https://suumo.jp/yougo/s/sendanouryoku/#:~:text=%E7%89%A9%E4%BD%93%E3%81%AE%E3%81%82%E3%82%8B%E6%96%AD%E9%9D%A2%E3%81%AB,%E3%82%92%E3%80%8C%E3%81%9B%E3%82%93%E6%96%AD%E5%BF%9C%E5%8A%9B%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E3%80%82

このような破壊挙動は岩石の三軸圧縮試験におけるAE震源のローカリゼーションによって実際に確認されていますし、そもそも、いたる場所で観察可能な雁行裂罅(がんこうれっか)は離間した位置での亀裂の発生・進展の連動が普通に起きている明確なエヴィデンスです。

今回はそれがたまたま目視で確認されただけに過ぎません。

また、連続性に乏しい富来川南岸断層の延長が少々伸びたところで、今回の地震を引き起こした断層の長さには遠く及ばず、松田(1975)の経験式でマグニチュードと変位量を算出しても、その大きさは限定的であると考えられます。

現実の材料内における亀裂の発生・進展過程(疲労試験)

非常によくあるパターンですが、科学の専門家が、専門知識もない『サンデーモーニング』のスタッフに現象を科学的に説明したところで、完全に「馬の耳に念仏」です。

彼らは内容を理解できずに、説明の一節を理不尽に危険視して「波紋が広がっています」「新たなリスクが浮き彫りになりました」「大きな課題を突き付けています」などと社会の不安を全力で煽るだけなのです。

松原耕二氏:原発事故があった時の避難の問題。あれだけ道が寸断されていて果たして万が一の時に避難できるのか! この問題は想定外では絶対すまされない。

原発事故時の緊急時区域であるPAZ(5km圏内)で孤立はなく、UPZ(5~30km圏内)で400人が8日間孤立したものの、当面必要となる屋内避難が不可能な状況は報告されていません。

また、実際に事故が発生していれば、自衛隊をはじめとする救出作業が行われたことは想像に難くありません。道路が寸断されたときの避難のシミュレーションも具体的に行われており、けっして想定外ではありません。原子力規制委員会は「現在の指針や地域防災計画で対応できる」としています。

素人がいたずらに不安を煽るのは厳に慎むべきです。

原子力災害時の避難時間推計シミュレーション結果藤原かずえ | Hanadaプラス

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