【インドネシア丸かじり】トウガラシのジャムを作ってみた

「トウガラシのジャム」を作ってみた。レシピは、『+62』で連載中の「西宮奈央さんのMasak Kira-Kira」から。

チレボンでバティック工房を主宰している賀集由美子さんが「気に入って何回も作った」と言う。パンに塗って職人さんのおやつにしたら好評で、「これは何? チェリー?」と聞かれたと言う。「食感がチェリーに似てるみたい。チェリーなんて高い物、買うわけないのに〜」。

チェリーに似たジャムが作れるのか、と、俄然、やる気になり、「うまく出来たら瓶詰めして、日本へのお土産にできるかも……?」と野望を膨らませ、家の近くのパサールでトウガラシを買って来た。

使うのは、「チャベ・メラ」「チャベ・ブサール」と呼ばれる、大きくて真っ赤なトウガラシ。いかにも「トウガラシです」という見かけに反して、オレンジ色や黄色、濃い緑色の小さいトウガラシ(チャベ・ラウィット)よりも辛くない種類だ。

小さくて白い種と、種が付いている白いワタの部分を取り除く。辛さ成分はこれで大体、取り除いたつもり。これを端から千切りにする。レシピでは、ざくざく大きめに切っておいて、後からブレンダーにかけるのだが、ブレンダーがないので、この時点で、できるだけ細かく切っておく。

切っているうちに、手がじんじん痛くなり、熱くほてってきた。両手の甲全体が、トウガラシ成分の攻撃を受けている感じ。作っている時点から、すでに、ただならない状況となってきた(手の痛みは丁寧に水洗いしても消えず、数時間続いた)。

刻んだトウガラシの半量の砂糖を投入し、そのまま置くと、砂糖が自然に溶けて、とろっとしたシロップにトウガラシが浸かっているような状態となる。ジュルック・ニピスの搾り汁を種ごと投入し、火にかける。あっという間にグツグツ煮立ってきた。レシピには「アクは、こまめにすくう」とあるが、鍋全体があくの沸き立ったような状態なので、そのまま放置する。

煮詰まってきたところでトウガラシを1片つまんで味見したところ、不意打ちをくらって、しゃっくりが出そうになった。食べ物とは思えない激辛具合なのだ。

「辛いの苦手」な賀集さんによると、「白いワタはガシガシこすり取って、その上で、水に漬けてしばらく置いておく」と言う。ワタの取り具合が不十分だったのかもしれない。あまり辛くない種類だと思って、高をくくっていたのが甘かった。

西宮さんが「砂糖をもっと足せ。チョコレートでもいい」とアドバイスをくれた。「甘さと辛さのバランスが取れたとこが正解ポイントなので、砂糖を足しちゃってOKです。普通のジャムの感覚のはるか上を行く量を使っちゃって大丈夫です」とのこと。

しかし、砂糖をいくら足したところで、辛さ自体は変わらないだろう……と半信半疑ながら、最初の時と同じぐらいの砂糖をどばっと投入してみた。そして味見をしてみたら、あら不思議、あまり辛くない。強い甘みが来て、その後、ピリピリと辛みが広がる。これは、砂糖でトウガラシをねじ伏せた、ということか。

ところが、砂糖を入れすぎたのか、全体が水飴のようになって、ぐちゃっと固まってしまった。レシピにはないのだが、水を入れて、ゆるめる。ゆるんだところでジュルック・ニピスの種をすくい取る。またまた賀集さんによると、イチゴジャムなど出来合いのジャムを何でもいいので、混ぜてしまってもいいそうだ。ジャムっぽくならなかった場合は、これからは、ちょっとズルをすることにする。

こうして、レシピとは大分外れた感じで、トウガラシのジャムが出来上がった。瓶詰めしたジャムは、赤というより黒。アメリカンチェリーのような、ダークな色合い。上の方のトウガラシ片は光に透けて、はっとするほどの赤さだ。何に似ているのかなーと思ったら、暑い1日を終えた、ジャカルタの夕日の色に似ているのだった。

パンにつけて食べると、甘さと辛さがぶつかり合う。砂糖コーティングしたような甘みが強いが、奥の方からピリピリピリピリ、辛さが襲撃してくる。食べていると、口の中が辛さでいっぱいになる。甘さと辛さ、これがインドネシアなんだな。

トウガラシのジャムの(正しい)作り方

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