【海外試乗】3世代目となる新型ポルシェ カイエンの第二章はハイブリッド化されたフラッグシップから始まった

大幅な改良が施された新型カイエンには3種類のPHEVが用意されており、ベーシックなE-ハイブリッドにはすでに試乗済みだ。今回はS E-ハイブリッドとトップモデルのターボ E-ハイブリッド、そしてターボE-ハイブリッドwith GTパッケージに試乗した。(Motor Magazine2024年2月号より)

出力&トルクは同じだが軽量化されたGTパッケージ

ポルシェのセールスは2023年も好調だが、それを支えるのはSUVのカイエンとマカンだ。この2モデルで全体の約55%を占めている。ちなみに年1〜9月の第3四半期は6万4457台のカイエンがデリバリーされている。これは24万2722台(前年同期比+10%)を販売したポルシェ全体の約27%となる。当然、その改良にも力が入るというものだ。

ターボ E-ハイブリッドとターボ E-ハイブリッド with GTパッケージが搭載するハイブリッドシステムは同じものでモーター出力はともに176ps、モータートルクは460Nmとなる。

春には大幅に改良されたベースモデル、S、カイエンE-ハイブリッドの国際試乗会に参加、その印象を報告した(23年7月号)が、それが3世代目の新型カイエンの第一章だとすると、今回の電動化されたPHEVカイエンは第二章だと言えるだろう。

ちなみに3世代目カイエンは、車両型式がE3となるため、この改良版はE3IIと呼ばれる。試乗したのは、トップグレードのターボE-ハイブリッドとターボE-ハイブリッド ウイズGTTパッケージ(以下GTパッケージ)、S E-ハイブリッドである。

ポルシェのモデルには、ベース、S、ターボという基本グレードがあり、さらにモデルサイクル途中でSとターボの間を埋めるGTSSが用意されるというのが通例で、それは9111シリーズでもカイエンでもマカンでも同様となる。

エアサスペンションを装着するターボ E-ハイブリッドの渡河可能な深さは280mm、ランプルアングルは21.6度、標準レベルの最低地上高は198mm、ハイレベルは243mmとなる。

ポルシェ自らが「ポルシェ史上最大級の製品アップデート」と謳うE3IIカイエンのPHEVにもこのグレード体系は踏襲され、E-ハイブリッド、S E-ハイブリッド、ターボ E-ハイブリッドが揃う。またそれぞれボディタイプはSUVとクーペがラインナップされるが、GTパッケージはクーペのみの設定となる。

そのGTパッケージの特徴は、スポーツデザインや22インチホイール、スポーツエキゾーストシステム、ポルシェセラミックカーボンブレーキ(PCCB)、カーボン製サイドプレート、カーボンルーフなどが採用されることだ。

インテリアでは、12時の位置にレーシングイエローでマーキングされたGTスポーツステアリングホイールやスポーツクロノパッケージに赤いスポーツレスポンスボタンが採用される。

試乗の舞台は、スベイン バルセロナ郊外にあるパルクモーターサーキットとその周辺である。そうポルシェは、SUVであってもサーキットを使ったテストドライブを行う。これは相当、製品の完成度に自信がないとできない。

トップモデルはターボGTに変わりGTパッケージとなる

さて、まずはカイエンS E-ハイブリッドのハンドルを握った印象から話を進めていきたい。このモデルはV6ターボエンジンにモーターを組み合わせたPHEVである。

カイエン SはV8搭載だがS E-ハイブリッドはV6ターボにモーターを組み合わせる。

新型カイエンのICEは353ps&500Nmを発生する3L V66ターボと599ps&800Nmを発生する4L V8ツインターボが用意されているが、話を複雑にしているのは、ICEのSが積むのはV8ツインターボエンジンであり、S E-ハイブリッドにはV6ターボエンジンが積まれるということ。

つまりSモデルは、ICEとPHEVで搭載エンジンが変わるのである。

V8カイエンはエンジンが主役だったが、それがV6になってどうなるのか気になっていたがS E-ハイブリッドはモーターもしっかりと存在感があった。つまりダブル主演というわけだ。試乗前から期待も大きかったがそれは裏切られなかった。軽快なハンドリングや身のこなし、パフォーマンスなど、さすがポルシェの製品だと言える高い完成度である。

ターボ E-ハイブリッドwith GTパッケージはV8ツインターボエンジンにモーターを組み合わせる。

サーキットでは、GTパッケージに試乗した。このモデルは、従来型で用意されていたトップモデルのターボGTがデリバリーされない日本や中国など向けに用意されたものである。

出力&トルクはターボ E-ハイブリッドもGTパッケージも同じ739ps9&950Nmmだが、カーボンパーツの積極的な採用で車両重量が100kgほど軽量化され、0→100km/h加速はターボE-ハイブリッドより0.1秒速い3.6秒となる。最高速度も10km/h高い305km/hである。

モーター出力は130kWでこれは従来比+30kW、最大トルクは460Nmとなりこちらは+50Nm、高電圧バッテリーの容量は、従来の17.9kWhから25.9kWhと+8kwh、一充電時のEV走行距離はS E-ハイブリッドが71〜78km、ターボ E-ハイブリッドが70〜73km、GTパッケージが71〜72kmである。

快適性と安全性を向上させた2チャンバー、2バルブ技術

シャシの特徴は、伸び側と縮み側の減衰力をそれぞれ個別に制御する2チャンバー、2バルブ技術が採用されたPASMでハンドリング性能と安全性能の向上を両立、ボディのロールが抑制されフラットライドを実現する。

カイエンのボディタイプはSUVとクーペの2種類あり、これまでの販売割合はSUV75%、クーペ25%となる。またターボ E-ハイブリッドwith GTパッケージはクーペにのみ設定される。

またPTVプラス、エレクトリックブレーキブースター、リアアクスルステアリングなども洗練されたGTパッケージを好印象にした。

一番強烈だったのは、2.5トン以上ある重さを感じさせないパフォーマンスだ。サーキットでは、911ターボに迫る加速性能を見せ、ワインディングロードでは後輪操舵機能の効果もあり、車体の大きさがネガにならないハンドリング性能が味わえた。

ここでは積極的にV8ツインターボエンジンを使ったが、そのパンチの効いた痛快な走りに惚れ込んだ。

ハイブリッド性能も高く、バッテリーに電気が残っていれば、高速道路を100km/hぐらいで楽に巡航できる。実際にバルセロナ市内は電気のみで走りエンジンの出番はなかった。

高速道路に入っても135km/hまでEV走行ができるので深くアクセルペダルを踏み込むようなシーンがなければ、モーターしか使わない。またバッテリー残量がなくなってもチャージモードにすれば、走りながらエンジンで充電し、必要なときにまたEV走行できる。

ポルシェのEパフォーマンスは2013年に登場した918スパイダーから始まっている。ちなみにEパフォーマンスのEは、エモーション/エクスペリエンス/エンドルフィンを表している。

新型カイエンのPHEVは、今回も「最新のポルシェが最良のポルシェ」だと強く感じさせる完成度であった。まるでブランニューモデルのように開発に力が入ったこのモデルは、24年には一番売れたポルシェとなることだろう。(文:Motor Magazine編集部 千葉知充/写真:ポルシェジャパン)

ポルシェ カイエン 主要諸元

ポルシェ カイエンS E-ハイブリッド クーペ主要諸元

●全長×全幅×全高:4930×1983×1657mm
●ホイールベース:2895mm
●車両重量:2315kg
●エンジン:V6DOHCターボ+モーター
●総排気量:2995cc
●最高出力:290kW(353ps)/6500pm
●最大トルク:500Nm/1450-4500rpm
●モーター最高出力:130kW(176ps)
●モーター最大トルク:460Nm
●システム最高出力:382kw(519ps)
●システム最大トルク:750Nm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム ・70L
●一充電走行距離(WLTP):71.78km
●タイヤサイズ:前255/50R20、後295/45R20
*EU準拠、スポーツクロノパッケージ装着車

ポルシェ カイエン ターボ E-ハイブリッド クーペ[with GTパッケージ]主要諸元

●全長×全幅×全高:4930×1983[1995]×1664[1652]mm
●ホイールベース:2895mm
●車両重量:2670[2570]kg
●エンジン:V8DOHCツインターボ+モーター
●総排気量:3996cc
●最高出力:441W(599ps)/6800pm
●最大トルク:800Nm/2400-4500rpm
●モーター最高出力:130kW(176ps)
●モーター最大トルク:460Nm
●システム最高出力:544kw(739ps)
●システム最大トルク:950Nm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム ・70L
●一充電走行距離(WLTP):70-73[71-72]8km
●タイヤサイズ:前285/45R21[258/40R22]、後315/35R21[315/35R22]
*EU準拠、スポーツクロノパッケージ装着車

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