アングル:米大統領選、多額の献金ではトランプ氏復帰を阻止できず

Alexandra Ulmer Jason Lange

[26日 ロイター] - ウォール街からシリコンバレーに至る全米各地の富裕層は、トランプ前米大統領のホワイトハウスへの復帰を阻止するため、共和党候補指名を争うヘイリー元国連大使の陣営に多額の資金を献金してきた。

彼らが学んだ教訓は「多額の資金を献金しても、少なくともトランプ氏の対抗馬は、共和党候補指名を勝ち取れない。トランプ氏は幅広く有権者の支持を確保している」ということだ。

連邦選挙委員会(FEC)に提出された選挙資金報告をロイターが分析したところ、ヘイリー陣営は過去1年間にトランプ陣営の2倍を上回る資金を支出している。

ヘイリー氏を支持する特別政治活動委員会(スーパーPAC)であるSFAファンドは過去1年間に7000万ドル余りを支出。実業家チャールズ・コーク氏が関連するスーパーPACはヘイリー氏を支援するため約4000万ドルを投じた。

これに対しトランプ氏を支援するスーパーPACのMAGAは同じ期間に支出が約5000万ドルにとどまっている。

それにもかかわらず、トランプ氏は1月15日のアイオワ州共和党党員集会と23日のニューハンプシャー州予備選で大勝した。

反トランプを掲げる献金者やストラテジストら十数人へのインタビューでは、無力感がにじみ出ていた。

金属王として知られるアンディ・サビン氏は「トランプ氏は基本的に入り込めない支持基盤を持っている。選挙資金の問題ではないと思う」と述べた。

反トランプを強く掲げるサビン氏は当初、フロリダ州のデサンティス知事を支持していたが、デサンティス氏の外交政策姿勢を踏まえ、スコット上院議員の支持に回った。

だがスコット氏が指名候補争いから撤退すると、ヘイリー氏支持に切り替えた。サビン氏は24日、ヘイリー氏がニューハンプシャー州予備選で敗北したことを受け、指名候補争いは実質的に終わったと述べた。

反トランプ派の共和党員がトランプ氏指名を阻止できないとみられる状況は、トランプ氏の支持者からの人気を浮き彫りにしている。支持者の多くは、トランプ氏が直面している刑事訴訟を政治的な動機によるものとして意に介していない。

富裕層献金者を無力化することこそ、トランプ氏が共和党を作り直している新たな手法なのだ。同氏は小口献金によって大半の資金を集めている。

反トランプの保守系団体リンカーン・プロジェクトの資金を集めている元共和党コンサルタント、リード・ガレン氏は、仮に反トランプ運動の支出を1年ほど早く始めて、容赦なくトランプ氏を攻撃し、より強力な対抗馬からの追い風があれば、もっと成功していたかもしれないと述べた。

それでもガレン氏は、こうした戦略が「奏功したかどうかさえ分からない」と語った。

反トランプを掲げていた一部の献金者は既に、トランプ氏支持に回っている。

当初はデサンティス氏を支持していた著名献金者のダン・エバーハート氏は現在、トランプ氏を支持している。またサビン氏は、トランプ氏に献金するつもりはないとしつつも、11月の大統領選本戦ではトランプ氏に投票すると話している。

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