プレミアリーグのクラブが輩出した最高の現役タレントは誰? <1位〜5位編>

プレミアリーグの各クラブが輩出した最高の現役タレントは誰なのか?

どんなチームにおいても圧倒的な支持を得るのは生え抜きのスター選手である。クラブの下部組織から台頭した選手に対してサポーターは「One of our own(俺たちの一員だ)」と大声援を送る。注目を浴び、そのまま世界的なプレーヤーへと覚醒していく者もいれば、期待通りの活躍ができずに消えていく者もいる…。

果たして最も高価な現役プレーヤーを輩出しているクラブはどこなのか? 各クラブが輩出した最高の現役プレーヤーを市場価値と共に見てみよう。今回は上位5位とトップ10以外の気になる選手を紹介する。

[写真]=Getty Images

■トップ10以外

惜しくもトップ10入りを逃したクラブの1つがフルアムだ。彼らが育てた最高額の現役プレーヤーは現在クリスタル・パレスに所属するMFエベレチ・エゼ(25歳)で、その市場価値は4100万ポンド(約77億円)。ロンドン生まれのエゼは、アーセナルの下部組織に入団するも13歳で放出されて「1週間ほど泣き続けた」そうだが、フルアムに拾われたという。それ以降も、紆余曲折の連続だった。2年半ほどでフルアムからも放出され、レディング、ミルウォールとロンドン付近のクラブで腕を磨くもプロ契約を結ぶことはできず。それでも諦めずに参加したQPR(イングランド2部)のトライアルで認められ、ようやくプロ契約を勝ち取った。

圧倒的な個の能力で局面を打開するエゼは2部リーグで結果を残し、2020年にクリスタル・パレスに引き抜かれると昨シーズンはプレミアリーグで2桁ゴールをマークし、昨年6月にイングランド代表デビューまで飾った。フルアム下部組織の在籍はわずか2年半だが、一応彼らが育てたタレントと呼ぶことにしよう。

同じく4100万ポンドの選手を世に送り出したのはノッティンガム・フォレストだ。彼らは親子2世代で活躍するアタッカーを輩出した。フォレストOBの父を持つFWブレナン・ジョンソン(22歳)は、8歳にして同クラブの下部組織に加入し、昨夏トッテナムに4750万ポンド(約89億円)で引き抜かれるまで14年間も地元のクラブに所属した。エースとして2022年にはフォレストを23年ぶりにプレミアリーグに返り咲かせたが、その1年後に「難しい決断」と語りながらも地元を離れた。昨年12月に古巣ノッティンガム・フォレストと対戦した際には、頭部のケガで前半のうちに交代したがフォレストファンからは「One of our own(俺たちの一員だ)」という温かいチャントが送られた。

■2位タイ:マンチェスター・シティ(MFフィル・フォーデン) 9400万ポンド(約177億円)

2位には4クラブも並ぶことになったが、そのうちの1つがマンチェスター・シティだ。子供の頃からシティファンだというMFフィル・フォーデン(23歳)は4歳でクラブの下部組織の練習に参加し始めると、着実に成長を遂げて今では世界的プレーヤーの地位を確立し、昨季はクラブの歴史的トレブル達成に貢献した。サッカー情報サイト『Transfermarkt』によると市場価値は9400万ポンド(約177億円)となっている。

2017年に17歳で初めてトップチームのプレシーズンツアーに参加した時には「憧れのダビド・シルバと一緒にプレーできるのは最高」と目を輝かせたフォーデン。同年のU-17ワールドカップで大会MVPに選ばれてイングランドを初優勝に導き、一気に脚光を浴びることに。同世代のFWジェイドン・サンチョなどがマンチェスター・シティのユースチームから他クラブへ移籍するなか、生え抜きのフォーデンはファンにとって貴重な“宝物”となっている。2020年、憧れのダビド・シルバはクラブを去る時に「フォーデンがいる。クラブの未来は安泰だ」と語っていた。

■2位タイ:トッテナム(FWハリー・ケイン) 9400万ポンド(約177億円)

現在バイエルンでゴール記録を塗り替え続けるイングランド代表FWハリー・ケイン(30歳)はトッテナムの英雄だ。8歳の頃に1年だけアーセナルに在籍した過去を持つケインだが、同クラブから放出されると、家族の大半がファンだというスパーズで腕を磨くことに。そしてユースチームでゴール量産してトップチームに呼ばれるようになるが、なかなか出番を貰えずに4度もローン移籍を繰り返した。レスターに貸し出された際には、まだブレーク前だったFWジェイミー・ヴァーディと並んでベンチを温める場面もあった。

当時、スピードのないケインは大成しないと見られていた。2014年4月にケインを初めてプレミアで先発させたティム・シャーウッド元監督はこう語ったことがある。「彼のローン先の監督たちは、ケインは無理だと言っていた」とシャーウッド氏。「私の前任のアンドレ・ヴィラス・ボアス監督も全くケインに興味がなかった。当時のスポーツダイレクターもケインはプレミアでは通用しないと言った。でも私はそういった声に耳を貸さなかった」

シャーウッドはわずか半年で退任するが、シーズン最後の6試合でケインをスタメン起用した。するとケインは3戦連続ゴールを決めるなど期待に応え、実力を証明したのである。翌シーズンからは、9季連続で公式戦20ゴール以上を奪う活躍を見せて3度もプレミア得点王に輝いた。それでもチームでのタイトルは無縁だったため、新たな挑戦を求めて昨夏バイエルンへ移籍した。

■2位タイ:チェルシー&ウェストハム(MFデクラン・ライス) 9400万ポンド(約177億円)

チェルシーとウェストハムが育てたのはイングランド代表MFデクラン・ライス(25歳)だ。ロンドン出身のライスは、7歳にしてチェルシーの下部組織に加入。いとこが同クラブに在籍していたことで入団のきっかけを掴んだライスは、同学年で大親友のMFメイソン・マウント(現在マンチェスター・ユナイテッド所属)と共に西ロンドンで腕を磨いたが、14歳で放出されることになった。

打ちひしがれたライスに声をかけたのは当時のチェルシーの主将、ジョン・テリーだった。自身もチェルシー下部組織で育ったテリーは電話越しに45分間もライスを励ましたという。前を向くことにしたライスは翌日、フルアムに誘われて練習に参加した。その後、ウェストハムやトッテナムの練習にも誘われたライスは、歩いて通えるフルアムではなく、育成に定評のあるウェストハムを選んだ。

そこからウェストハムでトップチームに上り詰めたライスは、18歳でデビューを果たすと、チームに欠かせない選手へと成長する。その間も、ジョン・テリーがそうしてくれたように、自分もアカデミー所属の少年たちに気さくに声をかけたという。そして2022年にクラブキャプテンに就任すると、2022-23シーズンにはヨーロッパ・カンファレンスリーグを制してクラブに43年ぶりのタイトルをもたらした。大きな置き土産を残し、昨夏ライスはアーセナルへと移籍した。

■1位:アーセナル(ブカヨ・サカ) 1億300万ポンド(約194億円)

最も市場価値の高い現役プレーヤーを送り出したのはアーセナルだ。彼らの自慢のスター選手、イングランド代表FWブカヨ・サカ(22歳)は市場価値が1億300万ポンド(約194億円)。その価値はFWアーリング・ハーランド(マンチェスター・シティ)、MFジュード・ベリンガム(レアル・マドリード)などに次いで世界5位となっている。

西ロンドンで生まれたサカは、小さい頃から地元で一目を置かれる選手で、スカウトに誘われてアーセナル、チェルシー、トッテナムなどのトライアルに参加したという。最初は家から一番近いという理由でワトフォードのアカデミーで練習を始めた。EURO2020でサカがスタメン出場した際、ワトフォードのアカデミーは子供の頃のサカの写真をSNSにアップしていた。

その後、ワトフォードと練習場が隣接するアーセナルのアカデミーに8歳で入団し、着実にステップアップを果たした。17歳でトップチームデビューを果たすと、徐々に出場機会も増えて定位置を確保。そして2021年5月からケガで欠場する昨年9月まで、プレミアリーグで87試合連続出場というアーセナルのクラブ記録を樹立した。世界有数のウィンガーとしてイングランド代表でも主軸となったサカは、今ではプレミアリーグのクラブが輩出した市場価値最高額の現役プレーヤーとなっている。

(記事/Footmedia)

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