あいまいな旅行記 温泉がつくる熱帯園「熱川バナナワニ園」 下田温泉から熱川温泉へ③

下田駅から下田ロープウェイ駅はすぐ。初めて乗ってみようと思って行ったら、出たばかりで次は15分後。待つのに長い時間じゃないけど、この2日、小高い展望台から海はたくさん眺めてきたし、もういいかなと思い返して下田駅にもどった。ちょっとのタイミングで旅の予定は変わるものだ。

温泉櫓と噴煙が印象的、正面に伊豆大島を望む熱川温泉

温泉櫓からの噴煙がホームに届きそう

電車の時刻表を見ると、すぐに熱海方面行きが出る。午後もまだ浅く、遠くまで来てこのまま帰るのはもったいない。下田から30分ほどの伊豆熱川駅で降りて、熱川バナナワニ園と時間があれば温泉街を散策しよう。

伊豆熱川駅から次の熱海方面の電車までは1時間半ほど。ちょうどいい時間に思える。ホームから熱川温泉街を見下ろし、相模湾を挟んで伊豆大島が見える。駅のすぐそばにある温泉櫓から噴気が立ち上っていて、ホームにも届きそうだ。この景色は、相当珍しいと思う。噴気を出している温泉櫓はほかにもいくつかあって、いつも別府温泉が思い浮かぶ。

どこにあって、なにを見られるかが分かる秀逸なネーミング

温泉街とは反対方向に駅を出て、熱川バナナワニ園はすぐ近く。このネーミングが分かりやすくていい。バナナとワニを見られる熱帯園だと分かる。ここの敷地にも温泉櫓があり、水槽の温水や温室には、温泉熱を利用している。施設はワニ園、植物園、分園の3カ所に分かれている。ワニ園と植物園は隣接していて、分園へはマイクロバスが送迎してくれる。

ぐるりと1時間半ほどいた

以前来たときは、子どもが小さくて、いきなりワニを怖がって大泣きして、ワニ園はすぐに撤退したから、熱川バナナ園に来た感じだった。ここには大小いろんな種類のワニがいる。世界には20種類ほどのワニがいるそうだ。ジャガーがワニを狩る動画や、ワニが豹を狩る動画をユーチューブで見ることがあって、近くで見る大型種のワニは本当に大きい。かつて日本にもワニはいて、大阪で発見された全身骨格は体長が7メートルほどだそう。

分園へのバスは頻繁に出ていて、この日はバス乗り場に行くと、客が1人でも出発した。分園にはレッサーパンダがいた。飼育場でレッサーパンダはよく動いて、木登りをする様子も見られた。温室にはバナナがなっていた。バナナの木は大きいけど、木ではなく草だという解説板があった。バナナが草だということはいろんな機会に何度も知った話だけど、忘れてしまうから、いつも新鮮に受け止める。

カンザクラとメジロ

最後の温室から出ると、建物の従業員用の出入り口に「駐車場のサクラが見ごろです」と手書きの案内があって、見逃さなくてよかった。駐車場に2本のカンザクラがあって満開だった。メジロが蜜を吸いに集まっていた。分園ではこのサクラの前で一番長い時間を過ごした。一足先にいいものを見られたと気持ちよかった。

最後に駅に一番近い植物園に行った。外からは温室が1棟あるだけに見えたけど、園は斜面にそって奥まで続いていた。さっと見て電車に飛び乗るつもりなら後悔する。30分以上は見学するつもりで入った方がいい。

アマゾンマナティは食事の時間で白菜を食べていた。日本では、ここでだけ飼育されているそうだ。何種類かいるマナティで淡水域に生息するのは唯一アマゾンマナティとのことだった。食事中だったけど何度かガラス面の方にも来てくれた。沖縄の海洋博公園ではアメリカマナティ、三重県の鳥羽水族館ではアフリカマナティを見た。

これでも小さ目なオオオニバス

食虫植物園では久しぶりにウツボカズラを見た。サクソフォンのような特徴のある形で、食虫植物といえばウツボカズラだ。坂道を登り、いくつかの温室を通り抜けると熱帯スイレンのエリアに出て、その奥にオオオニバスが展示されていた。大きくなると人が乗れるほどになるという、あのハスだ。

売店の人に聞くと、オオオニバスは一年草で、いつでも大きいわけじゃないそうだ。この時期はまだ小さいですよ、夏にはもっと大きくなりますと教えられてから来たけど、それでも大きかった。

熱川バナナワニ園のあとは、熱川温泉を海岸まで歩いて下るつもりだったけど、けっこう長居してしまい、次の電車まで時間がなかった。熱川温泉の東に位置する伊豆大島は、昼間より夕方以降に輪郭がはっきりと見えるようになる。帰りの電車からは、正面の元町港地区を中心に、だんだんと街に灯りが増えていくのが見えた。(おわり)

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