莉子「こんなにセリフ量のある作品を経験したことで、怖いモノなしになりました」映画「違う惑星の変な恋人」

By GetNavi web編集部

4人の男女による厄介なシーソーゲームを描いたラブコメディ「違う惑星の変な恋人」が1月26日(金)より公開中。期待の新鋭・木村聡志監督による笑いと共感必至な恋愛群像劇で、年上男性にひと目ぼれする主人公・むっちゃんを演じた莉子さん。モデルとして同性からの絶大な人気を得ている彼女が、初主演映画で得た経験を振り返ってくれました。

莉子●りこ…2002年12月4日生まれ。神奈川県出身。モデルとして活躍するなか、2018年にドラマ出演を果たし、女優デビュー。その後、「小説の神様 君としか描けない物語」(2020年)、「君が落とした青空」(2022年)、「牛首村」(2022年)、「女子高生に殺されたい」(2022年)、「なのに、千輝くんが甘すぎる。」(2023年)などの映画にも出演。現在は出演ドラマ「アオハライド」(WOWOW)、「SHUT UP」(テレビ東京系)が放送中。X(旧Twitter)/Instagram

【莉子さん撮り下ろし写真】

パンティーが話題のシーンだけで、台本6ページ分も(笑)

──とても独特な雰囲気を持った脚本を読んだときの率直な感想は?

莉子 私の役名がむっちゃんで、ほかのキャラの名前もグリコ、ベンジー、モーというあだ名で脚本が書かれているんです。しかも、それぞれのセリフの分量が多くて、モーとのパンティーが話題のシーンだけで、台本6ページ分もあったり(笑)、どこで誰がしゃべっているのかを一致させるのだけで大変でした。だから、脚本を読んだだけだと、どんな映画になるのか分からなかったです。だからこそ、早く映像化した作品を見たいっていう、ワクワクした気持ちになりました。

──会話劇ならではの膨大なセリフ量なうえ、初主演映画ということに関しては?

莉子 セリフに関しては、正直ヤバいなと思いました(笑)。撮影時期が別の作品と重なることが分かっていて、そちらもかなりのセリフ量だったので、「それやりながら、この映画やれる?」と、どこか挑戦する感じでした。初主演映画ということに関しては、すごくうれしかったです。私、かなり気負っちゃう方ですが、この作品にはそこまで気負わないでいい雰囲気を感じたんです。個性的な4人の群像劇でもあるので、みんなそれぞれ同じ分量を背負っていることも大きいと思いますし、私一人が「頑張ります!」というより、皆さんと一緒に作り上げていけたらいいなっていう気持ちになっていました。

──脚本も書かれた木村聡志監督の印象は?

莉子 木村監督は、実際にお会いしてもよく分からない人でした(笑)。「むっちゃんは莉子さんと近いですか?」とは聞かれましたが、むっちゃんのキャラについて教えてくださるわけでもないんです。人見知りの性格なのか、具体的な説明や細かく演出されるというよりは、フィーリング重視なスタイルの監督さんだったので、とてもやりやすかったです。あとは、ほかの共演者さんと一緒に現場でやってみることによって、木村監督らしい会話劇の感覚をつかむ感じでした。

──美容師である、むっちゃんの役作りに関しては?

莉子 この映画の登場人物って全員、いそうでいない感じだと思うんです。そんななか、どこかちょっとフィクションな感じを出さなきゃいけないんですけれど、皆さんに面白いキャラだと思っていただきたいっていう意識に持っていきすぎてもいけない。むっちゃんは余計なひと言を言っちゃったり、空気が読めなかったりするんですが、決してそこを狙いすぎない。その塩梅が難しかったです。でも、木村監督が書く脚本って、日常で使う言葉が多くて、自然な流れになるので、そこに助けてもらった部分はかなり多いと思います。

レッドカーペットを歩くことって、こんな感じ?

──むっちゃんの同僚・グリコ役の筧美和子さん、憧れの対象となるベンジー役の中島歩さん、グリコの元彼・モー役の綱啓永さんとの絶妙な掛け合いについては、かなりリハーサルを重ねられたのでは?

莉子 リハーサルは、ほぼほぼありませんでした(笑)。同世代の綱くんは共通の友達がいる程度で、中島さんも筧さんも初めましての状態だったんです。現場では軽くテストした後に、「次、本番いきましょう」という流れで、その間もこれといった演出も特に何もなく。会話劇だから、リズムが大切だと思うんですが、それを自分で考えながら演じることは大変でしたが、現場のいい雰囲気に助けられて、セリフもすらすらと出てきました。撮影後にも綱くんと「こんなにセリフ量のある作品を経験したことで、私たち怖いモノなしになったよね!」と話したぐらい、強いマインドを持てるようになりました。

──ちなみに、どのシチュエーションでの撮影が印象的でしたか?

莉子 美容室のシーンはどれも印象的でした。例えば、モーが自動ドアに何回も挟まるシーンでは、何度も笑いをこらえましたし(笑)。あと、宇宙服を着たシーンは普通のスタジオで撮ったんですが、本格的に作られていたので、ヘルメットがかなり重くて大変でした。役とはいえ、そんな経験もなかなかできないので、木村監督が言われるがままジャンプしたりして、楽しんでいました。

──個人的には、お好きなシーンは?

莉子 むっちゃんも電話をかけてくる、筧さんのグリコと中島さんのベンジーが家に一緒にいるシーン。この映画の一番長いシーンで、13分ぐらいあると思うんですが、中島さんと筧さんが作り出す空気感がいいので、ずっと見ていられるんですよ。会話劇でそこまで大きな動きもないと、見ている側も限界があると思うんですが、最初に完成したこのシーンを見たとき、「ちょっとすごいな……」と思ったぐらい好きです。

──そして、本作がワールド・プレミア上映された第36回東京国際映画祭では初めてレッドカーペットを歩かれましたが、いかがでしたか?

莉子 二十歳にして、こんな体験はなかなかできないので、「とにかく楽しもう」と思っていたのですが、「レッドカーペットを歩くことって、こんな感じ?」って、ずっとフワフワしていて、アッという間に終わっちゃいました(笑)。実は綱くんがめっちゃ緊張していて、歩く前にストレッチとかしていたんですよ。それに突っ込んでいたりしたら、「はい。どうぞ!」みたいな流れで歩いていたので、ずっと笑っていました。

ちょっとずつ確実にコマを進められるようになりたい

──本作は初の主演映画になりましたが、モデル活動から初めて、女優としての転機になった作品や出来事を教えてください。

莉子 私、お芝居をすることが楽しいと思えるまで、だいぶ時間がかかったタイプだと思うんです。最初の頃は、モデルの延長線上と思っていたのか、セリフを覚えて、カメラの前で演じるってことがとても恥ずかしかったんです。そんなとき、「小説の神様」という映画に、佐藤大樹さんの妹役で出していただくことになったんです。その顔合わせのときに、プロフェッショナルな皆さんを目の当たりにして、「私は何もお芝居ができないし、考え方も甘すぎる」と実感したんです。とても悔しかったですし、そんな気持ちで作品に出演していたことも恥ずかしくなり、本格的にワークショップに通うようになり、お芝居の基礎を学んだんです。

──放送中のWOWOWドラマ「アオハライド」でも、これまでの莉子さんのイメージとは異なる槙田悠里役を演じられていますよね。

莉子 ここ数年楽しくお芝居をやらせていただいている中で、どこか欲が出てきたというか、悪役じゃないけれど、もっといろんな役をやりたいと思っていたんです。そんなときに、悠里役のお話をいただいたのですが、「私でいいんですか?」と正直ビックリしました。今までやったことのない役なので、「この役に挑戦したら、より成長できるんじゃないか?」と思ったんですが、演じていてとても楽しかったですし、いろいろな方から「よかったよ」と言っていただけて、うれしかったです。

──また、現在放送中のドラマ「SHUT UP」では仁村紗和さん、片山友希さん、渡邉美穂さんという個性的な女優さんと共演されています。

莉子 いろいろこだわりを持ったチームで作っているので、映像が非常にきれいですし、貧困などメッセージ性が強い作品なので、とても丁寧に作っています。普段はあまり巡り合わないジャンルで活動している女子4人なので、最初は「どんな感じになるんだろう?」と思ったんですが、素の部分も似ているからか、皆さんとすぐに仲良くなれて、現場は女子校みたいに和気藹々としているんです。だから、演じながら、シリアスな作品とのギャップも楽しんでいます。

──今後、どのような女優を目指していきたいですか?

莉子 特にこうなりたいはないですけれど、現状維持というものが難しいこの世界で、ちょっとずつ確実にコマを進められるようになりたいです。役としては、今までにない役、最初は難しいなとは思っても、楽しく演じられる役にもっと出会えたらいいな、とは思っています。そのためには、もっと頑張らなきゃいけないし、モデルからのファンの方が、私が出ているという理由で、いろんなジャンルの作品に興味を持ってくれたらうれしいです。時々、「莉子ちゃん、お芝居始めちゃったから……」と言うファンの子もいるんですが、私はお芝居だけをしたいわけではなく、モデルもしたいし、何でもやりたいので、そこも含めて応援してもらえたらうれしいですね。

フィルムカメラの現像するまでのワクワク感が好き

──いつも現場に持っていくモノやアイテムを教えてください。

莉子 3年ぐらい前に父親からプレゼントしてもらったフィルムカメラ「NATURA」です。もともと現像するまでのワクワク感が好きで、最初は「写ルンです」とかを使っていたんですけれど、フィルムカメラって、いろいろ画質とかにこだわると中古なのに、高値がついていて、プレゼントでもらったときは嬉しかったですね。常にカバンに入れていて、撮らないときがあっても現場には持っていきますし、大体ひと現場で24枚撮り終える感じ。今は「SHUT UP」のオフショットを撮っています。

違う惑星の変な恋人

1月26日(金)より、新宿武蔵野館・UPLINK吉祥寺ほか、全国順次公開中

(STAFF&CAST)
監督・脚本:木村聡志
出演:莉子、筧 美和子、中島 歩、綱 啓永、みらん、村田 凪、金野美穂、坂ノ上 茜

(STORY)
何でも話し合う仲となった美容室で働くむっちゃん(莉子)とグリコ(筧 美和子)の元に、グリコに未練のある元恋人モー(綱 啓永)に現れる。グリコはシンガー・ソングライターのナカヤマシューコ(みらん)のライブで旧知のベンジー(中島 歩)と再会し、同行していたむっちゃんはベンジーにひと目ぼれ。むっちゃんはグリコとモーの協力を得てベンジーと恋仲になるべく奮闘するが、ベンジーはナカヤマシューコと関係を持つ一方、久々に会ったグリコにひかれていた。

公式HP https://www.chigawaku.com/

(C)「違う惑星の変な恋人」製作委員会

撮影/映美 取材・文/くれい響 ヘアメイク/長坂 賢 スタイリスト/高橋美咲 衣装協力/PS Paul Smith

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