不法投棄、衛星で監視 茨城県と民間が実証実験へ AIが画像解析

県内の不法投棄、不適正残土件数の推移

茨城県は民間と連携し、人工衛星と人工知能(AI)を活用した産業廃棄物の不法投棄や建設残土の不適正な埋め立てを監視する実証実験に乗り出した。衛星画像をAIが解析し、地上での異常の早期把握を目指す。「空からの監視」体制を構築し、不法投棄などの防止につなげる狙いだ。

県と航空測量などを手がけるパスコ(東京)が連携して取り組む「光学衛星とAIによる廃棄物の不法投棄等の早期発見に向けた実証」が昨年9月、人工衛星を活用した内閣府のプロジェクトに採択された。2月末まで実証を続け、3月には結果をまとめ、実用化への検討を進める。

県は、人工衛星が継続的に撮影した画像をAIが解析し、不法投棄など地上での異常を察知できる仕組みづくりを目指す。発生を早期に把握することで職員らが短時間で急行し、事業者に指導・対処できることから、県廃棄物規制課は「実用化すれば、大規模な不法投棄を減らせる」と期待する。

実証では、県内のこれまでの不法投棄などの発生時期、位置情報を県が同社に提供。デジタルカメラのように地上を撮影する光学衛星を使い、発生前後の衛星画像をAIが比較・解析する。複数データを蓄積し、不法投棄や建設残土による地上の変化をAIが判断できるようにする。

県は2021年度から、県警OBなどでつくる専門チーム「不法投棄調査員」を組織し、県内全域でパトロールによる監視を強化。専用の通報アプリ「PIRIKA(ピリカ)」や、県民からの情報提供を促す報奨金制度を導入し、一定の成果を上げてきた。

同課によると、22年度に県内で発生した産業廃棄物の不法投棄件数は87件と前年度からほぼ半減した。ただ、建設残土の不適正埋め立て件数は微減の85件で、依然高水準にある。茨城県は首都圏からアクセスが良く、県南地域などでの対策には課題が残る。

県はAIを生かした人工衛星による空からの監視により、県内で廃棄物を捨てにくい環境をつくり、抑止につなげたい考え。同課は「県内全域を人の力だけで監視するのは限界がある。悪質な事業者に対し『監視されている』という意識を植え付けていきたい」と話した。

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