大河「光る君へ」の注目ポイントは 源氏物語特集展を担当する学芸員が語る

紫式部が源氏物語を書き始めたと伝わる石山寺の「源氏の間」を再現したコーナーに立つ鯨井さん(大津市御陵町・同市歴史博物館)

 紫式部が源氏物語を書き始めたと伝わる石山寺(大津市)で、鯨井清隆さん(38)は2023年1月から収蔵庫を調査した。「紫式部に関する絵画や工芸品が数百点ありました」と振り返る。

 紫式部が主人公のNHK大河ドラマ「光る君へ」の放送開始に合わせ、大津市歴史博物館(同市御陵町)が開催している特集展示「源氏物語と大津」を学芸員として担当している。

 展示に合わせた石山寺での調査では、「いい文字資料が多かった。堅田藩主だった堀田正敦が源氏物語の和歌をしたためた『詠源氏物語巻々和歌』は、昔から源氏物語が地位のある人の間で必須の教養だったことを物語っている。千年もの間読み継がれたのは、恋愛の物語だからではなく王朝文化や政治を学べるものだったからだ」と解説する。

 大河ドラマの注目点について、「第1回の放送で、子どもの時の紫式部が逃げ出した鳥を追いかけて藤原道長と出会う場面は源氏物語の『若紫』で、光源氏が後に妻となる紫の上に出会うシーンから採用していると思います。紫の上は飼っていたすずめが逃げて縁側に出てきて、光源氏に見初められます」と説明する。

 今回の展示では、この光源氏と紫の上の出会いのシーンを、体験型のデジタル展示で楽しめる。床に投影されたすずめなどの絵柄を踏むと、場面を紹介するビデオが呼び出せる。「フォトスポットなども含めて感覚的に親しみやすく体験してもらえたら。今回の大河ドラマを契機に若い人や子どもにも興味を持ってもらいたい」と願っている。

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