長崎・青山の私道訴訟が和解 業者が4年以上通行を禁止 住民の生活道路が復活

青山町の団地内を通る私道

 長崎県長崎市青山町の住宅団地内の私道通行を巡り、私道を所有する業者に対し、住民側が通行妨害禁止などを求めた訴訟は29日、長崎地裁で和解が成立した。住民側の弁護士によると、私道の所有権を業者から地元自治会に移し、通行禁止を解除するなどの内容。問題が表面化してから4年超を経て、住民は以前のように通行ができるようになった。
 住民側弁護士によると、業者との協議により、青城自治会(田中憲一会長、約90世帯)が私道の所有権を取得。住民だけでなく、郵便や宅配、ごみ収集車、タクシー、福祉車両などの通行も可能になった。同弁護士は、私道が古い上、広範囲で関わる住民も多かった点を挙げ、「(私道を巡る問題では)全国的に見ても複雑な事案だと思う。時間はかかったが、ひとまず紛争が解決してよかった」とした。
 田中会長は「地域には高齢者も多く、生活に不便をかけている住民はいないかと常に気がかりだった。ようやく普段の生活に戻ることができる」と安堵(あんど)した。
 私道は同自治会内を通る延長約700メートル、延べ面積約3700平方メートル。住民の生活道路として50年近く、使われていた。所有していた業者の会社整理に伴い、2018年に取得した福岡県の業者は、住民側に買い取りや車両通行料を求めたが断られ、19年10月に道路の一部をバリケードで封鎖。その後、バリケードは撤去されたがタクシーや福祉車両なども通行禁止となり、生活に支障が出ていたという。
 20年1月、同自治会の住民が業者側に通行妨害禁止などを求めて提訴。隣接する若草町自治会の住民の一部も加わり、最終的に約90人が原告となった。住民側は、分譲時に開発業者から私道も通行可能との説明を受けた上で購入したなどと主張。業者は、私道を通行できる権利に関する契約書はなく合意があったとは認められないとし、所有者が通行料を求めることは「法的にも問題ない」と反論していた。

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