PHR関連サービスに関する調査を実施(2023年) 2023年度のBtoBtoC型PHRサービス市場規模は29億5,200万円と予測

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のPHR関連サービスの市場を調査し、現状や課題、参入企業動向、将来展望を明らかにした。ここでは、BtoBtoC型PHRサービス市場規模について、公表する。

1.調査結果概要

PHR(Personal Health Record;個人の健康・医療情報の記録)を取り扱うデジタルサービス(主にスマートフォンアプリ)である「PHRサービス」は、現在様々な種類のものが展開されている。近年では、個人の健康情報(体重や歩数、食事、睡眠、血圧など)を記録し管理するためのサービスを個人に直接提供するBtoC型のサービスに加えて、医療機関や健保組合、自治体等を通じて個人にサービスを提供するBtoBtoC型のPHRサービスが増加している。

主なBtoBtoC型のPHRサービスとしては、健診結果等を取り扱う「健診施設向けPHRサービス」、母子健康情報等を取り扱う「電子母子健康手帳」、レセプト・健診情報等を取り扱う「健保向けPHRサービス」、カルテ情報等を取り扱ったり、通院の支援を行う「病院向けPHR/PRMサービス」、検体検査情報等を取り扱う「診療所向け検査PHRサービス」、アプリに記録した情報を医療機関に共有する「医療機関へのPHR共有サービス」などが挙げられる。
これらのBtoBtoC型のPHRサービス(6分野計)市場規模(事業者売上高ベース)は2020年度を12億400万円と推計し、2023年度の同市場は29億5,200万円にまで拡大すると予測する。

2.注目トピック~PHRと情報銀行

総務省・経済産業省は、「情報信託機能の認定スキームの在り方に関する検討会」において「情報信託機能の認定に係る指針(2023年7月にはVer3.0策定)」を2018年に取りまとめている。そこでは情報銀行の定義について、「実効的な本人関与(コントローラビリティ)を高めて、パーソナルデータの流通・活用を促進するという目的の下、利用者個人が同意した一定の範囲において、利用者個人が、信頼できる主体に個人情報の第三者提供を委任するというもの」とされている。

2018年には、一般社団法人日本IT団体連盟による情報銀行の認定制度が開始している(なお、情報銀行の展開に際して認定を得ることは必須ではない)。認定は情報銀行サービス実施中の事業を対象とした「通常認定」と、情報銀行サービス開始に先立ち、計画、運営・実行体制が認定基準に適合していることを認定する「P認定」に分かれる。2023年10月時点の認定企業・サービス状況は、通常認定がDataSignの「paspit」、P認定がMILIZEの「保険データバンクサービス(仮称)」、中部電力「地域型情報銀行サービス(仮称)」、大日本印刷「DNP健康データ利活用サービス FitStats」となっている。

PHRに関連する情報銀行事業者としては上記の大日本印刷などの大手企業のほか、ブロックチェーン技術を持つベンチャー企業などが新規参入している。既に参入表明している企業のほか、今後の参入の兆しがある企業も複数あり、今後、PHRに関連する情報銀行事業が活発化する可能性がある。

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