「高岡発ニッポン再興」その127 最大70センチ沈下、液状化被災者を救いたい

出町譲(高岡市議会議員・作家)

【まとめ】

・液状化が深刻な「吉久地区」。「大規模半壊」どころか「準半壊」や「一部損壊」との判定。

・長岡技術科学大学木村悟隆准教授、罹災条件の認定基準に「陥没」追加を提案。

・罹災証明の判定次第で支援金が変わる。市区町村は被災者に寄り添った判定を下すべき。

今回も前回に続き、高岡市で液状化が深刻な「吉久地区」についてお伝えします。災害支援制度に詳しい、長岡技術科学大学の木村悟隆准教授は、現場を歩きながら、液状化を判断するための「潜り込み」について、「大規模半壊」になる可能性があると指摘しました。それでは高岡はどんな判断を下したのでしょうか。

内閣府の被害認定運用指針では、「傾斜」と「潜り込み」が要件となっています。今回吉久で「住家の床までのすべての部分が地盤面下に潜り込んでいる」と明記されています。その場合は、「大規模半壊」になるのです。木村准教授は「地盤面」に関して、「道路」を基準に見ています。

しかし、高岡市の「吉久地区」ではまったく違う結果が続出したのです。「大規模半壊」どころか、「準半壊」や「一部損壊」です。それでは、支援金の額も少なくなります。厳しい判定が出にくい状況なのです。高岡市は、これらの住宅に関して、潜り込んでいないという判断を下したのです。道路が隆起し一体が沈んでいるものの、建物自体の潜り込みはないとの見解なのです。つまり、運用指針の2本柱のうち、「傾斜」だけでの判定なのです。

罹災証明の判定次第で、支援金が変わってきます。住宅再建に直結する話なのです。ある被災者は、再調査を依頼しましたが、高岡市では、内閣府にも問い合わせた上で、判断を変えませんでした。

内閣府もお墨付きを与えました。この判定は動かないのかもしれません。木村准教授は全国各地で被災現場を視察し、アドバイスをしていますが、行政の在り方は平時と災害時は大きく違うと指摘。「罹災発行の判定は、市町村の判断に大きくゆだねられている。被災者に寄り添うことが大事だ」と強調しました。

それでは被災者を救えることはできないのか。木村准教授は「ここからは政治の出番です。運用指針も法律ではなく、あくまで運用指針。地震はそれぞれ違っており、運用指針を早急に修正し、被災者の負担を少しでも軽くすべきだ」といいました。

そして木村准教授は、罹災条件の認定基準に「陥没」を追加すればどうかと提案しました。確かに、今回の吉久の住居は、陥没しています。これをもって「全壊」にできないかというのです。「陥没」は液状化被害では要件に入っていますが、基礎が崩壊していることが条件になっています。木村准教授は「基礎が崩れていなくても、陥没していれば、『全壊』にする。今回は、家を解体しなければ、盛り土ができません。被災者の生活再建を考えると、認定基準を変えることも必要になる」と語りました。

そうですね。市役所が動かないなら、政治家が動くしかありません。被災者の生活を再建するのが最重要なのです。私は同僚の市議会議員、さらには地元出身の県議会議員、国会議員の先生の力なども借りながら、全力を尽くします。

トップ写真:液状化に見舞われた高岡市吉久地区 富山県高岡市(執筆者提供)

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