V長崎退団から再契約 3度目の主将、MF・秋野央樹 自分の力を「ピッチで証明」

V長崎で3度目の主将を務める秋野。「みんなに選ばれた主将。責任を持ってやっていきたい」と意気込む=沖縄県読谷村陸上競技場

 昨季が終了して間もない11月19日。V長崎に4年半在籍したMF秋野央樹(29)は、契約満了発表のリリースで思いをつづった。「目標のJ1昇格を果たすことができず、チームを離れることは残念でとても悔しく思っています」。この言葉を含めた413文字に、ふがいなさが色濃くにじんだ。
 12月、気持ちを整理し、現役続行を目指してトライアウトにも初めて参加。次への一歩を踏み出そうとしていた。そんな中で、年末に届いた再契約のオファー。「まさか」と耳を疑ったが、「サッカーの神様から『長崎でまだやることがあるぞ』って言われた気がした」。迷うことなく「行きます。よろしくお願いします」と答えた。
 2019年夏にJ1湘南から期限付き移籍で加入。堅実なプレーですぐに信頼を得た。左足から長短のパスを正確に繰り出し、攻撃のリズムをつくった。20年はJ1クラブから引き合いもあったがV長崎を選び、完全移籍に切り替えた。
 その年、リーグ終盤まで徳島、福岡とJ1昇格争いを繰り広げた。忘れられないのは12月16日、3位で残り2試合となったホーム甲府戦。勝利しか許されない状況で、先制しながらも後半に追いつかれた。波状攻撃も実らず、昇格の道が絶たれた。ピッチに座り込み、泣きじゃくった。チームメートだったGK徳重健太(現J2愛媛)に手を差し伸ばされるまで、立つことができなかった。
 それ以降は試練が続いた。毎年のようにけがに見舞われ、22年には2度手術した。チームに貢献できない「申し訳なさ」と、自分への「いら立ち」を抱え続けながら3年間を過ごした。
 一度はV長崎を去ることが決まったが、下平ヘッドコーチ(HC)の就任で状況が一変した。下平HCとは、J1柏のU-18時代(10~12年)とトップチーム時代(16年)の計4年間、選手と監督の間柄だった。U-18の主将だった12年には一緒にクラブユース選手権初制覇も成し遂げた。
 そんな恩師がこのタイミングでV長崎に来た。そして、自分の力を必要としてくれた。「しもさん(下平HC)に声をかけてもらった恩がある。この巡り合わせがよかったと思ってもらえるようにピッチで証明したい」と強く思う。
 キャンプ初日の29日、V長崎で3度目となる主将就任が発表された。二つ目の「まさか」だったが、「みんなに選ばれた。気負いせず責任感を持ってやっていきたい」。J1昇格へ、揺るぎない覚悟で先頭に立つ。

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