姫路城なぜ美しい? 外壁、景観、不戦の城…思い出と共に輝き続ける名城に迫る 世界遺産30周年

東方向から見た姫路城=姫路市本町

 そのたたずまいから「美の城」とたたえられる世界文化遺産・国宝姫路城。見た目の美しさはさることながら、人々はその歴史や文化財としての価値、まちのシンボルとしての存在感にも「美」を見いだしているように思う。姫路城はなぜ美しいのか-。昨年12月に世界遺産登録30年の節目を迎えたのに合わせ、3回に分けて美しさの理由に迫りたい。(長尾亮太) ### ■「美しいと感じる」98% 理由の最多は「白さ」7割

 神戸新聞社は昨年12月から今年1月にかけて、無料通信アプリ「LINE(ライン)」を使って姫路城の「美しさ」に関するアンケートを実施した。今月26日までに467人が回答。「姫路城を美しいと感じるか」との問いには、98%に当たる456人が「感じる」と答えた。

 では、どんな理由で美しいと感じるのか。複数回答で尋ねると、約7割の人が「天守の外壁が白い」を選んだ。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産リストにも姫路城の特長の一つとして「白色の漆喰(しっくい)塗り土塀で統一された優美な外観」と記されており、多くの人が城壁の美しさに魅了されているようだ。

 次いで約6割が「景観を損なうビルなどが周りにない」を選択した。近代的な建物が眺めを遮ったり、背後に入り込んだりしない環境が評価されており、引き続き周辺エリアの開発への配慮が求められる。

 3番目に多かったのが「大天守の規模が大きい」(50%)。約32メートルに上る高さは、現存天守としては国内最大だ。それが姫山(標高約46メートル)と石垣(高さ約15メートル)の上に立っており、大きさを感じやすい。

 続いて大天守と西、乾、東の小天守3棟の連なり(48%)。見る角度によって表情が異なるため、城の魅力となっているようだ。総延長が12キロに上る石垣を挙げる人も多かった。

 「美しい」のほかに受ける印象については「壮大」「荘厳」「雄大」「平和」「りりしい」「かっこいい」「威風堂々」「誇り」などの回答があった。

<さまざまなエピソード…人生と結びつけ>

 アンケートでは姫路城の「美」にまつわるエピソードも募った。子どもの頃、子育て期、親の介護をしていた時…。名城とともに歳月を重ねてきた人たちが、人生の各段階の思い出と結びつけながら城の美しさを表してくれた。 ### ■焼け野原に凛とそびえ、勇気もらった

 幼少期から毎年家族で桜や菊を見に来ていた神戸市須磨区の40代女性は「子ども時代の楽しかった記憶が、城を見る度によみがえる。思い出がより美しくさせているのかも」と記した。

 「戦後、焼け野原と化した町で凜(りん)とそびえるお城に元気づけられた。城には力強さ、勇気をもらった」と書いたのは赤穂市の80代女性。米軍機による空襲を受けながら、奇跡的に戦禍を免れた姫路城の姿に復興への希望を見いだした。

 かつて息子たちと姫路城をスケッチしたという兵庫県姫路市の50代女性は「向き合った時間のおかげで城への愛着が芽生えた。『不戦の城』と呼ばれるので、世界全体の平和のシンボルになれば」と期待した。

 相生市の50代女性は「幼かった息子たちが初めて姫路城を見た時に『かっこええわ!』と言った。その時の表情が今でも思い出される」と振り返った。 ### ■美しくて、懐かしくて涙が出そうに

 神戸市長田区の40代女性は、脳梗塞で倒れた母親を連れて家族で訪れた春の姫路城を回顧。「城と桜が美しくて感動し、感謝の気持ちを持った。母は後遺症で言葉が出なかったが、今も天国で思い出してくれている気がする」とつづった。

 城は「わがまち自慢のシンボル」(姫路市内在住の60代女性)であり、時に郷愁も誘う。姫路で生まれ育った芦屋市の50代女性は「子ども時代は城に特別な感情を持たなかったが、故郷を離れて年齢を重ねると、姫路に戻った時に見える城が美しく、懐かしく感じられ、涙が出そうになる」。神戸市西区の50代女性は「高い所にあるので離れた場所からも見え、守られている感がある」とした。

 旅先や出張先から帰ってきた際のエピソードも目立った。姫路市の50代女性は「夜に新幹線や電車に乗って姫路駅に近づくと、ライトアップされた城がきれいに見え、家に帰ってきた気持ちになる」と答えた。 ### ■四季折々の表情、見る角度で違う

 城の見た目についての意見も多く寄せられた。姫路市の60代女性は「四季折々に違った表情を見せるため、飽きない。特に桜の季節、頬(ほお)を薄いピンクに染めた城が好き」と推す。「見る角度によって別物のように姿を変える。大小の天守群のなせる業」(同市の60代男性)、「正面(南)だけでなく、横や北から見た姿も素晴らしい」(同市の50代男性)との声もあった。

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