ロシア反体制派カラ=ムルザ氏、刑務所「移送」で居場所不明か 英外相が警告

イギリスのデイヴィッド・キャメロン外相は29日、ロシアで収監中の反体制派活動家ウラジーミル・カラ=ムルザ氏(42)の居場所を明確にするよう要請した。

ロシアとイギリスの二重国籍を持つカラ=ムルザ氏は昨年4月、ウクライナでの戦争を批判したことに関連した罪で、禁錮25年の刑を受けた。その後、シベリアの刑務所に収監されていたものの、移送されたとみられている。

ロシアでは刑務所間の移送は秘密に包まれており、数週間かかることもある。

イギリス外相のキャメロン卿は、ロシアはカラ=ムルザ氏の弁護士に対し、「早急に」同氏の居場所を知らせなければならないと述べた。

カラ=ムルザ氏が収監されていたオムスク州の刑務所にあてた質問には、同氏はすでにこの刑務所にいないとの返答があった。

に、「ウクライナ侵攻に反対する発言をしたために、ロシアで投獄されたイギリス人、カラ=ムルザ氏のことを深く心配している」と投稿した。

カラ=ムルザ氏の妻のエフゲニア・カラ=ムルザ氏は、カラ=ムルザ氏が、2023年9月から収監されている刑務所の懲罰房から「不明の場所」へ移動させられたことを、29日に知ったと述べた。

また、「夫の移送には何の根拠もない。夫は今も、2015年と2017年の2回、彼を殺そうとした同じ人たちの手にあるのだから、なおさら恐ろしい」と語った。カラ=ムルザ氏はこれまでに2度、毒殺されかけた経緯がある。

エフゲニア氏はその上で、「ロシア政府に対し、夫の居場所に関する情報を提供するよう要求する」と述べた。

キャメロン卿も、エフゲニア氏を支持すると語った。

カラ=ムルザ氏は、ソヴィエト連邦時代の有名な反体制派の家庭の出身。10代で母親とイギリスに渡り、英国籍を取得した。

ジャーナリストや政治家として活動していたカラ=ムルザ氏は、長年、ウラジーミル・プーチン大統領を批判し、ウクライナでの戦争や、ロシア政府の反体制派への弾圧にも反対していた。

また、人権侵害や汚職に関してロシア政府関係者を制裁するよう、西側政府の説得に努めていた。

昨年の裁判では、国家反逆、ロシア軍に関する「虚偽」情報の拡散、「好ましくない組織」への所属の各罪状で有罪とされた。

イギリス政府はこの判決を非難し、駐英ロシア大使を召喚。カラ=ムルザ氏の拘束と「虐待」に関わった人々の責任を追及する方針を示した。

米国務省も、カラ=ムルザ氏を「ロシア政府のエスカレートする弾圧の新たな標的」だと述べている。

ロシアの反体制派の指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏も、昨年12月にモスクワの東235キロメートルにあるメレホヴォ刑務所から、ロシア北部のヤマロ・ネネツ自治管区のハルプにある刑務所IK-3に移された。その際、支援団体と3週間近く連絡が取れなくなっていた。

(英語記事 UK demands clarity over whereabouts of activist

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