ケニアが歩んだ歴史と新旧二つの鉄道

ケニアが歩んだ歴史と新旧二つの鉄道

ナイロビでモンバサ・ナイロビ鉄道の機関車そばを歩く運転士の蔣立平さん(右)と研修生のホラスさん。(2023年5月23日撮影、ナイロビ=新華社記者/王冠森)

 【新華社ナイロビ1月30日】英国の植民地行政官チャールズ・エリオットは1903年、大英帝国が東アフリカに建設したメーターゲージ鉄道を「鉄道が実際に一つの国を作り上げた」と称賛した。「国」は英領東アフリカを指す。エリオットは「ブリタニカ国際大百科事典」のウェブサイトで英領東アフリカにおける白人至上主義政策の創始者とされている。

 ケニア・アフリカ政策研究所中国アフリカセンターのエグゼクティブディレクター、デニス・ムネネ氏は新華社の取材に対し「鉄道がケニアを作ったと称賛する人もいるが、英国による植民地化の道具だったと見る人の方が多い。植民地政策の本質は搾取であり、発展を促進するものではない。ケニアは独立して60年になる。われわれは絶えず歴史を振り返り、痛手から立ち直り、さらなる発展を推進していく」と語った。

 ナイロビ中心部にある鉄道博物館の入り口の壁には東アフリカの地図が掛けてあり、100年の歴史を持つメーターゲージ鉄道が明記されている。1896年にインド洋に面した港湾都市モンバサで着工し、北西の内陸部へと延伸されていった。

 同鉄道で働いていたケニア人のセビリ・ムワイレミさんは記者に、地元では「『鉄の蛇』がアフリカの平原を通り抜け、巨大な災禍をもたらす」という言い伝えがよく知られていると教えてくれた。

ケニアが歩んだ歴史と新旧二つの鉄道

ナイロビ鉄道博物館に展示されている旧式機関車。(2023年11月27日撮影、ナイロビ=新華社記者/李亜輝)

 博物館の展示資料によると、過酷な自然環境と労働条件の下、鉄道建設が1マイル進むごとに平均4人の労働者が死亡した。建設中に計2493人が命を落とし、約6500人が障害を負った。データが残っているのは契約労働者のみであり、実際の死傷者はさらに多かったとみられる。

 鉄道完成後、植民地当局は「白人国家」建設に着手した。白人入植者の流入が続き、先住民に属していた広大な土地が侵略、占有された。

 植民地当局の土地委員会は1933年7月の報告書で、ニャンザ州では約103万人の地元住民が1万8千平方キロの土地に閉じ込められ、1万7千人の欧州人が4万3千平方キロの土地を占拠していると記した。欧州人1人当たりの占有面積は地元住民の約145倍だった。

 1950年代から60年代にかけて、アジアとアフリカで民族解放運動が活発になり、アフリカでは30カ国以上が相次いで植民地支配を脱した。ケニアは63年12月12日に独立し、1年後に誕生したケニア共和国が「非同盟運動」に加わった。植民地支配から抜け出した後も植民地経済の呪縛が依然として発展の足かせとなっていた。

ケニアが歩んだ歴史と新旧二つの鉄道

ナイロビ鉄道博物館を見学する来館者。(2023年11月27日撮影、ナイロビ=新華社記者/李亜輝)

 ケニア人経済学者でナイロビ大学教授のイラキ氏は、ケニアが多くのアフリカ諸国と同様に1次産品の輸出に依存し過ぎていると考えている。工業化と製造業、新しいスキルや知識を持った人材が必要だという。

 中国企業が建設を請け負ったモンバサ・ナイロビ標準軌鉄道(SGR)が開業した2017年5月31日以降、鉄道は地域の交通輸送を加速、改善し、沿線都市の経済発展を効果的にけん引してきた。ケニア鉄道公社(KRC)の推定によると、同鉄道の国内総生産(GDP)成長率に対する寄与率は2%を超える。

 メーターゲージ鉄道で30年以上の勤務経験を持ち、現在はSGRの管理部門で働くムワイレミさんは「SGRプロジェクトは実際にケニアの経済と社会の発展を促す重要な要素となっている」と話す。

 SGRは中国とケニアの「一帯一路」共同建設の縮図でもある。人々は広大な大地で、両国が手を携えて発展する新たな光景を目の当たりにしている。

 首都ナイロビ郊外のジョモ・ケニヤッタ国際空港に到着した人々は、まず中国企業が建設した高速道路へ向かう。高規格道路は地元の悩みの種だった交通渋滞を大幅に緩和し、物流の利便性を高めた。北東部ガリッサ県では、熱帯のサバンナに見渡す限りのソーラーパネルが並ぶ。中国との協力で設けられた50メガワット太陽光発電所は、太陽エネルギーを絶え間なく電力に変換している。周辺地域の家々で使われていた灯油ランプは電灯に変わった。ジョモ・ケニヤッタ農工大学の中国・アフリカ協力農業モデル区では、試験栽培された白トウモロコシが豊作となった。中国の栽培管理技術はシンプルで習得しやすく、東アフリカの食料不足の緩和に役立つと期待されている。

ケニアが歩んだ歴史と新旧二つの鉄道

ナイロビ鉄道博物館を見学する来館者。(2023年11月27日撮影、ナイロビ=新華社記者/李亜輝)

 ムネネ氏は「『鉄の蛇』は植民者が原材料をアフリカから自国に輸送するための採掘鉄道だったが、SGRは発展を指向し、ケニアと他の東アフリカ諸国との接続を促進し、ケニアの経済発展を推進する」と語った。

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