MVPやサイ・ヤング賞は「クーパーズタウンへの切符」となるのか

MVPやサイ・ヤング賞、新人王といったアワードを受賞することは、間違いなく素晴らしいことである。少なくともそのシーズンに素晴らしい活躍を見せたことの証であり、アワードの受賞歴は殿堂入り投票で評価を受ける際にも助けとなる。しかし、殿堂入り選手全員がこれらのアワードを受賞しているわけではない。サイ・ヤング賞の表彰が始まった1956年以降に引退して殿堂入りした122選手のうち、MVP、サイ・ヤング賞、新人王の受賞経験がない選手は53人もいる。アワードの受賞歴と殿堂入りの動向は無関係なのだろうか。

MLB公式サイトのサラ・ラングス記者は、MVPやサイ・ヤング賞の受賞歴が「クーパーズタウンへの切符」となるのか、これまでの受賞者のデータをもとに検証を行っている。新人王が検証の対象から外されたのは、そもそも新人王を受賞するチャンスはキャリアで1度しかなく、これまでに殿堂入り投票の対象となった87人のうち、19人しか殿堂入りを果たしていないなど、明らかに相関関係が弱いからである。また、87人のうち、MVPやサイ・ヤング賞の受賞経験があるのは21人だけ。新人王を受賞することは、殿堂入りどころか、スター選手になることとイコールでもないのだ。

まずはMVPから見ていこう。ラングス記者はMVPを3度以上受賞することは「殿堂入りに値する」としている。MVPを3度以上受賞した11人のうち、まだ殿堂入りの資格がないアルバート・プホルスとマイク・トラウト(エンゼルス)を除くと、9人中7人が殿堂入り。バリー・ボンズとアレックス・ロドリゲスは殿堂入りしていないが、これはステロイド問題が大きく影響しているからであり、MVPを3度以上受賞するような名選手は基本的には殿堂入り当確だ。

MVPを2度受賞した選手を見てみると、まだ殿堂入りの資格がないミゲル・カブレラ、ブライス・ハーパー(フィリーズ)、大谷翔平(ドジャース)を除くと、15人中12人が殿堂入り。ラングス記者は「殿堂入りの可能性は高いが、確定ではない」としている。殿堂入りしていないのはフアン・ゴンザレス、ロジャー・マリス、デール・マーフィーの3人。いずれも全盛期には球界を代表するスター選手だったが、数字の積み上げが足りなかった。

MVPを1度だけ受賞した場合、ラングス記者は「五分五分だ」としている。これまでに殿堂入り投票の対象となった85人のうち、殿堂入りしているのは42人。割合で言うと44%だ。ハンク・アーロン、チッパー・ジョーンズ、ケン・グリフィーJr.といった名選手も含まれているが、その一方でジム・コンスタンティ、アル・ローゼン、ゾイロ・ベルサイエスのように殿堂入り投票の対象にすらならなかった選手もいる。なお、次回の殿堂入り投票では2001年にMVPとなったイチローが登場するが、有資格初年度での殿堂入りが確実と言われている。

次にサイ・ヤング賞を見てみよう。MVPと同様に、ラングス記者はサイ・ヤング賞を3度以上受賞することは「殿堂入りに相応しい」としている。現役のマックス・シャーザー(レンジャーズ)、クレイトン・カーショウ(現在FA)、ジャスティン・バーランダー(アストロズ)を除くと、サイ・ヤング賞を3度以上受賞した8人のうち、ロジャー・クレメンスを除く7人が殿堂入り。クレメンスもステロイド問題の影響を受けている選手であり、サイ・ヤング賞を3度受賞すれば、実質的には殿堂入り当確と言えそうだ。

サイ・ヤング賞を2度受賞した場合はどうだろう。ラングス記者は「五分五分だ」としている。現役のジェイコブ・デグロム(レンジャーズ)、コリー・クルーバー(現在FA)、ブレイク・スネル(現在FA)を除くと、8人中4人が殿堂入り。ティム・リンスカム、デニー・マクレーン、ブレット・セイバーヘイゲン、ヨハン・サンタナはいずれもサイ・ヤング賞を2度受賞した名投手だが、全盛期が短かったため、殿堂入りに相応しい通算成績を残すことができなかった。現役の3人も将来的に殿堂入りできるかと言われると、微妙と言わざるを得ないだろう。

サイ・ヤング賞が1度だけの場合、将来の殿堂入りを占う参考には全くならない。これまでに殿堂入り投票の対象となった48人のうち、殿堂入りしているのは10人だけであり、割合で言うと21%だ。ボブ・ターリー、ディーン・チャンス、マイク・マコーミックの3人は殿堂入り投票の候補にすらならなかった。なお、次回の殿堂入り投票では2007年にサイ・ヤング賞を受賞したCC・サバシアが登場。通算251勝、3577回1/3、3093奪三振と実績も申し分なく、有資格初年度での殿堂入りを果たす可能性もあるとみられている。

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