KAT-TUN中丸雄一、初の漫画『山田君のざわめく時間』への本気 漫画家としてのシビアな姿勢を探る

KAT-TUNの中丸雄一が1月23日に発売した初の漫画単行本『山田君のざわめく時間』(講談社)が好評だ。1月25日には3回目の重版が決定し、中丸が公式Xのアカウントで喜びの声をポスト。すでに店舗によっては在庫がなくなるという事態も発生しており「近いうちにまた入荷していただけると思うので、少しばかりお待ちいただけると嬉しいです」とコメントしている。

『山田君のざわめく時間』は『月刊アフタヌーン』2023年8月号(講談社)より連載を開始。半年間の短期集中連載を経て、2024年1月号で最終回を迎えている。今回発売された1巻の巻末には「続刊発売をめざして鋭意新ネタ!制作中!!!!!」との文字も。新たな描き下ろしも加えられるようで、まだまだ“山田君ワールド“は広がりを見せていきそうだ。

■アイドルではなく作家として、シビアな評価を受ける

1月25日、KAT-TUNのレギュラー番組『KAT-TUNの食宝ゲッットゥーン』(TBS系)に人気漫画『【推しの子】』の作者である赤坂アカ、横槍メンゴがゲストとして登場。中丸と“漫画家トーク“を繰り広げる一幕があった。横槍が中丸の連載先について「どこで描いてるか知ってる?『(月刊)アフタヌーン』やで」と話を始めると、赤坂が「『(月刊)アフタヌーン』!? あの漫画家が憧れる?」とリアクションを見せる。

中丸が「いや、でもアレじゃないですか。変な話、その、タレント活動も込みで面白がって……」と恐縮気味に返すも、即座に「そんな生ぬるい雑誌じゃないですよ」と撤回する赤坂。その言葉に、中丸も「確かにめっちゃ厳しいこと言われます」と、真剣に執筆活動を続けてきたことを伺わせた。

『山田君のざわめく時間』の面白さは、たしかに“KAT-TUNの中丸雄一“が描いているということが大きい。サブキャラクターにやたらとアイドル事情に詳しい“斉藤君“が登場し、熱くKAT-TUNのライブ演出へのこだわりを語らせるなんていう回もあって笑いを誘うのも中丸だからこそできること。実際に単行本の表紙裏には、中丸の言葉で「現在、芸能活動を四半世紀しております。そこで経験したことをほんのり加えて、日頃の気になるざわめきを漫画にしてみました」という言葉もあった。

しかし、そんな中丸の経験や日頃の気づきがエッセイ的に綴られるだけで成立するほど、『月刊アフタヌーン』での連載は「そんな生ぬるい雑誌じゃないですよ」というのは確か。マッサージを受けるときにお尻の部分をどう伝えるか。エレベーターに乗ったときに誰がボタン操作をするべきか……と、アイドルとして長年生きてきた中丸が、そんな生活の中にある小さなことで悶々とする視点を持っていることが微笑ましいのだ。

芸能人として華々しい活躍を遂げる中丸雄一を感じながらも、山田君とその仲間たちが現実のすぐばにあるように感じられるフィクションの世界を作り上げる。それは、どこか現実と夢のような時間をファンと共有するアイドル業を続けてきたバランス感覚の為せる技かもしれない。

■超多忙の中、それでも溢れるように描き続ける

加えて、驚かされるのがそのバイタリティだ。『山田君のざわめく時間』の担当編集を務めた『月刊アフタヌーン』の助宗佑美氏が答えたインタビューでは、中丸から大量のネーム提出があったことが語られている。

KAT-TUNとしての活動に加えて、ソロで出演するバラエティ番組。さらには最近では嵐の二宮和也らと手掛けるYouTubeチャンネル『よにのちゃんねる』の出演に編集にとフル稼働。さらに、今月に入って個人チャンネル『中丸銀河チャンネル』も立ち上げたばかりだ。加えて、プライベートでは結婚も発表し、『家事ヤロウ!!!』(テレビ朝日系)の1月23日オンエア回では「台所に立つようになった」「いよいよ本当に家事をちゃんとやらなきゃ」とも語っていた。

そんな多忙なスケジュールのどこに漫画を執筆する時間があるのだろうか。しかも、大量のネームを送るほど精力的に。あとがきを読むと、どうやら早朝に執筆時間を取っているそうだが、そのみなぎる創作意欲そのものにこそ読者としてはざわつかずにはいられない。『山田君のざわめく時間』を通してだからこそ語られるクスッとさせられるエピソードたち。その続刊を楽しみにしつつ、今後も止まることのない中丸雄一のクリエイティブに大いに期待をしている。

(文=リアルサウンド ブック編集部)

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