SCREEN映画評論家36人が選ぶ! 【最も優れた映画2023】

創刊77周年を迎えたSCREENが毎年発表する「映画評論家選出外国映画ベストテン」も今回、69回目となりました。2023年も数多くの外国映画が日本公開されましたが、その中から映画のプロたちが選出した絶対見るべきベスト作品、ベスト男女優をここに発表します。見逃していた作品はありませんか?

※採点方法:第1位を10点、第2位を9点、以下1点ずつ減点し、第10位を1点として算出しました。なおリバイバル映画、および短編などは対象外です。

ベスト作品 第41位〜第19位

第41位
クライムズ・オブ・ザ・ フューチャー
マイ・エレメント

第37位
『コンパートメントNo.6』
ザ・スーパーマリオブラザーズ・ ムービー
『ぼくたちの哲学教室』
モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン

第36位
『ロスト・キング 500年越しの運命』

第35位
ミュータント・タートルズ: ミュータント・パニック!

第33位
マエストロ:その音楽と愛と
ヨーロッパ新世紀

第32位
To Leslie トゥ・レスリー

第30位
アステロイド・シティ
ウォンカと チョコレート工場のはじまり

第27位
VORTEX ヴォルテックス
Pearl パール
ベネデッタ

第26位
CLOSE/クロース

第25位
ジョン・ウィック: コンセクエンス

第22位
aftersun/アフターサン
『EO イーオー』
ザ・クリエイター/創造者

第21位
イニシェリン島の精霊

第20位
ザ・フラッシュ

第19位
ガーディアンズ・オブ・ ギャラクシー:VOLUME 3

ベスト作品 第18位

『ポトフ 美食家と料理人』

▶︎『ポトフ 美食家と料理人』関連記事はこちら

『ポトフ 美食家と料理人』
監督:トラン・アン・ユン
出演:ジュリエット・ビノシュ
配給:ギャガ
©︎ 2023 CURIOSA FILMS-GAUMONT-FRANCE2CINEMA

ベスト作品 第17位

『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』

ディズニープラスのスターで見放題独占配信中

▶︎『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』関連記事はこちら

『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』
監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:ハリソン・フォード
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©︎ 2024 & TM Lucasfilm, Ltd.

ベスト作品 第16位

『ウーマン・トーキング 私たちの選択』

▶︎『ウーマン・トーキング 私たちの選択』関連記事はこちら

『ウーマン・トーキング 私たちの選択』
監督:サラ・ポーリー
出演:ルーニー・マーラ
配給:パルコ
©︎ 2022 Orion Releasing LLC. All rights reserved.

ベスト作品 第15位

『スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース』

▶︎『スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース』関連記事はこちら

『スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース』
監督:ホアキン・ドス・サントス、ケンプ・パワーズほか
配給:ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント
©︎ 2023 CTMG. ©︎ & TM 2023 MARVEL. All Rights Reserved.

ベスト作品 第14位

『ザ・ホエール』

▶︎『ザ・ホエール』関連記事はこちら

『ザ・ホエール』
監督:ダーレン・アロノフスキー
出演:ブレンダン・フレイザー
配給:キノフィルムズ
©︎ 2022 Palouse Rights LLC. All Rights Reserved.

ベスト作品 第13位

『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』

▶︎『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』関連記事はこちら

『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』
監督:クリストファー・マッカリー
出演:トム・クルーズ
配給:東和ピクチャーズ
©︎ 2023 PARAMOUNT PICTURES

ベスト作品 第12位

『別れる決心』

▶︎『別れる決心』関連記事はこちら

『別れる決心』
監督:パク・チャヌク
出演:パク・ヘイル
配給:ハピネットファントム・スタジオ
©︎ 2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVED

ベスト作品 第10位(同点)

『ナポレオン』

18世紀末の革命期のフランス。若き軍人ナポレオンは才能を発揮して出世を重ね、運命の女性ジョセフィーヌと結婚も。だが皇帝にまで上り詰めた彼に思わぬ運命が待っていた。

▶︎『ナポレオン』関連記事はこちら

『ナポレオン』
監督:リドリー・スコット
出演:ホアキン・フェニックス、ヴァネッサ・カービー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

ベスト作品 第10位(同点)

『枯れ葉』

仕事を失ったアンサと工事現場で働くホラッパはヘルシンキのカラオケバーで出会い、惹かれあう。互いに名前も知らなかった2人は不運にも再会の機を逃してしまうが……。

『枯れ葉』
監督:アキ・カウリスマキ
出演:アルマ・ポウスティ、ユッシ・ヴァタネン
配給:ユーロスペース
©︎ SPUTNIK OY 2023 photo; Malla Hukkanen

ベスト作品 第9位

『モリコーネ 映画が恋した音楽家』

多数の名曲を残し2020年に死去した映画音楽のマエストロ、エンニオ・モリコーネ。彼はいかにしてファンの心をつかむ曲を生み出してきたかという謎に迫る長編ドキュメント。

▶︎『モリコーネ 映画が恋した音楽家』関連記事はこちら

『モリコーネ 映画が恋した音楽家』
監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
配給:ギャガ
©︎ 2021 Piano b produzioni, gaga, potemkino, terras

ベスト作品 第8位

『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』

大物映画プロデューサー、ワインスタインが性的暴行を繰り返していたことを取材するNYタイムズの記者ミーガンとジョディ。2人は業界の隠ぺい体質に問題があると気づく。

▶︎『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』関連記事はこちら

『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』
監督:マリア・シュラーダー
出演:キャリー・マリガン、ゾーイ・カザン
配給:東宝東和
©︎ Universal Studios. All Rights Reserved.

ベスト作品 第7位

『生きる LIVING』

1953年のロンドン。お堅い公務員のウィリアムズは人生に虚しさを覚えていたが、医師から癌であることを宣告される。余命を悟った彼は自身の人生を見つめなおすことになる。

▶︎『生きる LIVING』関連記事はこちら

『生きる LIVING』
監督:オリヴァー・ハーマナス
出演:ビル・ナイ、エイミー・ルー・ウッド
配給:東宝
©︎Number 9 Films Living Limited

ベスト作品 第6位

『エンパイア・オブ・ライト』

ディズニープラスのスターで配信中

1980年代の英国の海辺の街。老舗映画館エンパイア劇場で働くヒラリーは心に傷を抱えた孤独な女性。そんな彼女は新たに雇われた黒人青年スティーヴンに好意を寄せていく。

▶︎『エンパイア・オブ・ライト』関連記事はこちら

『エンパイア・オブ・ライト』
監督:サム・メンデス
出演:オリヴィア・コールマン、マイケル・ウォード
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©︎ 2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

ベスト作品 第5位

『フェイブルマンズ』

幼い時、両親と出かけた劇場で映画の虜になったサミー少年。自ら8ミリカメラを回して自主映画を撮り始め、才能を発揮するが、成長するにつれ家庭内に様々な変化が訪れる。

▶︎『フェイブルマンズ』関連記事はこちら

『フェイブルマンズ』
監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:ミシェル・ウィリアムズ、ポール・ダノ
配給:東宝東和
©︎ Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.

ベスト作品 第4位

『バービー』

毎日がハッピーな「バービーランド」で夢のように完璧な暮らしを送っていたバービー。だがある日、彼女の身体に異変が起き、その原因を探るためBFのケンと共に人間世界へ。

▶︎『バービー』関連記事はこちら

『バービー』
監督:グレタ・ガーウィグ
出演:マーゴット・ロビー、ライアン・ゴズリング
配給:ワーナー・ブラザース映画
©︎ 2023 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

ベスト作品 第3位

『エブリシング・エブリウェア・ オール・アット・ワンス』

コインランドリーを営む中国系移民の中年女性エヴリンが、いつもは優柔不断な夫がいきなり別人のような行動を起こし、どういうことか世界滅亡の危機を救う救世主に変身?

▶︎『エブリシング・エブリウェア・ オール・アット・ワンス』関連記事はこちら

『エブリシング・エブリウェア・ オール・アット・ワンス』
監督:ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート
出演:ミシェル・ヨー、キー・ホイ・クァン
配給:ギャガ
©︎ 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.

ベスト作品 第2位

『キラーズ・オブ・ザ・ フラワームーン』

画像提供 Apple

20世紀初頭のオクラホマ。石油の発掘で莫大な富を得た先住民オセージ族の娘モリーと結ばれた白人アーネストは、町の有力者である伯父の企みに加担していくことになる……。

▶︎『キラーズ・オブ・ザ・ フラワームーン』関連記事はこちら

『キラーズ・オブ・ザ・ フラワームーン』
監督:マーティン・スコセッシ
出演:レオナルド・ディカプリオ、リリー・グラッドストーン
配給:東宝ピクチャーズ
Apple Original Films/Apple TV+にて全世界配信中

ベスト作品 第1位

『TAR/ター』

ベルリン・フィル初の女性首席指揮者に就任したリディア・ター。多忙な日々を送る彼女は、名声を守り続ける重圧と、何者かが仕掛けた思いがけない陰謀によって、次第に悪夢のような状態に追い詰められていく。

▶︎『TAR/ター』関連記事はこちら

『TAR/ター』
監督:トッド・フィールド
出演:ケイト・ブランシェット、ニーナ・ホス
配給:ギャガ
©︎ FOCUS FEATURES. LLC

ベストワン作品『TAR/ター』を紐解く

(文・斉藤博昭/デジタル編集・スクリーン編集部)

年に何度か、観ながら心の〝ざわつき〞が収まらない映画に出会うことがある。本作はまさにそんな一本。観た人たちの感想も、かなり〝ざわつく〞ものばかりだった。

誰もが認めるのは、主人公の強烈なキャラクター。ドイツの有名オーケストラで初の女性主席指揮者となったリディア・ターの言動、佇まいは時に神経を逆撫でするレベル。完璧主義者で、すべてに対して上から目線。我が物顔のトークショーや、気に入らない学生に対する辛辣な攻撃、さらに同僚を蹴落とす工作……。

ターを巡ってパワハラやセクハラ、キャンセルカルチャーの問題も絡んでいき、そのあたりも2023年の現在、多くの人が生々しく受け止めることになった。

実際に本作は、地位の高い人の転落劇を見てみたいという、人間の隠れた本能を刺激するし、ホラー映画のような戦慄描写もあったりする。ただそれだけでは、スキャンダラスで露悪的な魅力で終わってしまった可能性もある。

しかしター役のケイト・ブランシェットが、最高峰のアーティストだけが踏み入ることのできる葛藤や苦闘に深い部分まで没入。常人には理解しがたい感情や感覚を、演技を通して〝納得させる〞という離れ業をやってのけた。

もちろん一流指揮者としてのタクトさばきもパーフェクト。その結果、物語はセンセーショナルなのに、どこか崇高な作品を観ているような錯覚をおぼえる。そこが『TAR/ター』の凄さなのだろう。ターと同性パートナーの生活も、展開のうえで重要な役割を果たしながら、ことさら強調されない。そんなアプローチも今っぽい。

冒頭は長回しのカットなどもあり、嵐の前の静けさというムードだが、前半に不可解だった問題が中盤から後半にかけて確信に迫っていくあたりも、映画らしい醍醐味。そして1回観ただけでは謎が残るパートもあり、その意味を噛みしめるためにリピートしたくなるのも本作の魔力で、トッド・フィールド監督の構成力に唸るしかない。

前作『リトル・チルドレン』から16年ぶりの新作ということで、監督作への並々ならぬ執念と、綿密な計算が実を結んだのかも。本作の成功で、次回作はインターバルを空けずに作ってくれればいいのだけれど!

ラストに関しても、いくつもの解釈が可能な本作。この運命は、ターにとって不本意だったのか? いや、むしろ最高の居場所を見つけられたのか? 観る人によって後味が変わるのも映画であると、高らかに宣言する傑作である。

ベスト男優 第8位〜第4位

第8位
エズラ・ミラー
キー・ホイ・クァン
ダヨ・ウォン
ダリオ・アルジェント
ティモシー・シャラメ
バリー・コーガン
ヒュー・グラント
ブノワ・マジメル
フランツ・ロゴフスキ
ポール・メスカル
マイケル・キートン
メルヴィル・プポー
ライアン・ゴズリング
ルイジ・ロ・カーショ

第5位
キアヌ・リーヴス
トム・クルーズ
レオナルド・ディカプリオ

第4位
ハリソン・フォード

ベスト男優 第2位

ホアキン・ フェニックス

2023年の日本公開作『ナポレオン』『ナポレオン』より

ベスト男優 第2位

ブレンダン・ フレイザー

2023年の日本公開作『ザ・ホエール』 『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』『ザ・ホエール』より

ベスト男優 第1位

ビル・ナイ

2023年の日本公開作『生きる LIVING』『生きる LIVING』より

ベスト女優 第6位〜第4位はこちら

第6位
アネット・ベニング
アルマ・ボウスティ
アンドレア・ライズボロー
オードラ・マクドナルド
オリヴィア・コールマン
ジュリエット・ビノシュ
タン・ウェイ
フィービー・ウォーラー= ブリッジ
マリオン・コティヤール
ミシェル・ウィリアムズ

第5位
キャリー・マリガン

第4位
マーゴット・ロビー

ベスト女優 第3位

リリー・ グラッドストーン

2023年の日本公開作『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』 『ファースト・カウ』『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』より

ベスト女優 第2位

ミシェル・ヨー

2023年の日本公開作『エブリシング・エブリウェア・ オール・アット・ワンス』 『トランスフォーマー ビースト覚醒』 『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』より

ベスト女優 第1位

ケイト・ ブランシェット

2023年の日本公開作『TAR/ター』 『バーナデット ママは行方不明』『TAR/ター』より

© 株式会社近代映画社