本田仁美がAKB48にもたらした多くの可能性 矢吹奈子らも駆けつけた卒業コンサート

AKB48が1月26日、パシフィコ横浜 国立大ホールで『本田仁美卒業コンサート~夢と希望に満ちた道~』を開催した。AKB48チーム8栃木県代表としてキャリアをスタートさせた本田仁美は2018年、日韓同時放送のオーディション番組『PRODUCE 48』に参加し、同年10月にIZ*ONEのメンバーとしてデビュー。2021年にIZ*ONEとしての専任活動を終えたのち、AKB48の活動に復帰して以降はパフォーマンス力でグループを牽引し、AKB48を代表するメンバーの一人となった。本田のAKB48としての活動は、1月28日に秋葉原・AKB48劇場で行なわれた卒業公演をもって終了となった。本稿では26日に催されたパシフィコ横浜での卒業コンサートをレポートする。

コンサートの冒頭は、本田がダンサーとともに披露する「涙の表面張力」。本田がIZ*ONEでの活動終了後、初めてAKB48チーム8の公演に出演した際にもパフォーマンスした同曲で、この日のオープニングを飾った。続く「だらしない愛し方」から他のメンバーたちも合流すると、本田初のシングル表題曲選抜となった「NO WAY MAN」、さらに本田がセンターポジションを務める「元カレです」「どうしても君が好きだ」が披露され、コンサート序盤ブロックはAKB48メンバーとしての本田の節目を確かめるような楽曲が組まれた。

MCを挟んで、「ハート型ウイルス」「奇跡は間に合わない」「エンドロール」「思い出以上」などユニット楽曲で構成されるブロックに入る。本田は8曲続くユニット楽曲ブロックすべてでパフォーマンスに参加、曲間に素早く衣装替えをしながら巧みな表現をみせていく。「この涙を君に捧ぐ」では小田えりなとのデュオで、互いに向かい合って語りかけるように歌唱してみせる。

さらにユニット曲ブロックのラストには、サプライズで矢吹奈子が登場。IZ*ONEのメンバーとしてともに活動した矢吹と本田、2人でのパフォーマンスに選ばれた楽曲は「必然性」。2019年に、当時のIZ*ONE、乃木坂46、欅坂46、AKB48各グループからの選抜ユニット「IZ4648」として発表した同曲をセットリストに組み込み、IZ*ONEにおける本田の足跡も同コンサートの中に刻んだ。

コンサート中盤には、川栄李奈、野呂佳代、小嶋陽菜といったOGからのビデオメッセージもスクリーンに映される。彼女たちが口々に語る労いの言葉からは、本田がIZ*ONEの専任活動を終えたのちAKB48に復帰してグループをリードしてきたことの意義深さが窺える。さらに、本田とはテレビ番組『ラヴィット!』(TBS系)で親交の深いニューヨーク、インディアンスもステージに駆けつけた。

「Make noise」からコンサートは終盤に向かう。大きなテーマを背負う「僕たちは戦わない」やAKB48の一大クラシック「言い訳Maybe」も、本田に牽引されていっそう迫力を増す。さらに、「抱きしめちゃいけない」「夢へのルート」では初期から本田とキャリアをともにしてきたチーム8のメンバーたちとパフォーマンスし、クライマックスで本田の原点を爽やかに振り返ってみせた。そして、「スクラップ&ビルド」でコンサート本編は幕を閉じる。

アンコールでは淡い水色と白を基調にしたドレス姿で本田が登場し、「泣きながら微笑んで」を歌唱。続くスピーチでは、これまで関わってきた多くの人々への感謝を口にする。本田は活動を振り返り、AKB48チーム8という新しい土壌に植えられた“種”が、ファンからの“応援という栄養”によってつぼみをつけ花を咲かせることができたと表現し、ファンへの思いをあらためて伝えた。

そして、まだ叶えたい夢があると語る本田はグループ卒業後について、充電期間をとったのちに“新たな本田仁美”を見せることを約束する。さらにスピーチ終盤には韓国語、中国語でもファンに向けてメッセージを発信、客席では本田が滑らかに話すそれぞれの言語に反応するファンもみられ、本田のグローバルな活躍を実感させた。

スピーチを終えると、本田を囲むようにして並んだ全出演メンバーとともに「ジワるDAYS」「タンポポの決心」を披露、そしてAKB48メンバーとして最後の表題曲センターとなった「どうしても君が好きだ」を再度全員で歌唱して、コンサートは終演を迎えた。チーム8やIZ*ONEとしての活動から、グループを引っ張る立場を担ったAKB48復帰後のセンター曲まで、その足跡を確認する構成で卒業を寿ぎながらも、現在の本田がもつパフォーマーとしての頼もしさに導かれて、バラエティ豊かさや軽快さが際立つはなむけのコンサートとなった。

(文=香月孝史)

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