終着駅の敦賀、気比神宮までのメインストリートで勝負 歩いて楽しめる空間、空き店舗に出店も相次ぐ

歩道拡張工事が進む敦賀駅前大通り。オープンテラスなどへの活用を見込む。奥が北陸新幹線敦賀駅=1月9日、福井県敦賀市白銀町
北陸新幹線敦賀開業1年前イベント「つるがフェス」でにぎわう気比神宮前交差点。キッチンカーの出店は今やおなじみとなった=2023年3月、福井県敦賀市神楽町1丁目

 北陸新幹線の始発・終着駅となる福井県敦賀市のJR敦賀駅では、新幹線の全乗客がいったんホームに降りる。試算では乗り換えが年間980万人、乗降客が330万人。駅から市内随一の誘客力を誇る気比神宮に至るメインストリートを行き交う人は大幅に増えるとみられる。

 駅西口から国道8号まで西へ400メートルほど延びる駅前大通り。3月の新幹線開業に合わせ、交流とにぎわいの創出を目的とした歩道拡幅工事が急ピッチで進む。アーケード部分を含め9メートルと以前より2メートルほど広がった歩道は、既存店のオープンテラスやイベントに活用される。

 駅前商店街振興組合の河藤正樹理事長は「車移動では目的地までの間にある商店街は、通過されるだけだった。観光客に歩いてもらい、楽しんでもらい、気に入ったお店を見つけてもらう。人通りが増えれば新しい店も出てくる」。まちの好循環に期待を寄せる。

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 気比神宮付近の交差点広場では、週末に加え、クルーズ船の寄港や敦賀まつりなど、人出が見込めるイベント時のキッチンカーの出店が定着している。

 近くの本町1丁目商店街では2021年9月から、毎月のように店主らが歩道にブースを並べ、飲食やクラフト作品などを扱う「ほんいちマルシェ」を開催。歩行空間をステージにした「Tsuruga Free Music」も22年5月から毎月開かれている。

 歩行空間を活用したにぎわいが生まれたきっかけは20年10月、敦賀市のアル・プラザ敦賀などが立地する白銀交差点から気比神宮周辺までの国道8号南北約900メートル区間が4車線から2車線になり、歩道が最大約7メートルに拡幅されたことだ。各交差点付近には広場が設けられた。2車線化は、郊外に整備された敦賀バイパス供用による交通量減少が理由だ。

 市は同年11月、社会実験の位置付けで「国8空活(国道8号空間利活用)」と題し、歩道を活用したイベントを開催した。このときに思い描いていた「小さな催しが繰り返されることで、にぎわいが創出される“市民の普段使いの場”」が今、形になりつつある。

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 北陸新幹線敦賀開業が迫り、本町1丁目商店街では、空き店舗への新規出店が相次ぐ。

 特産おぼろ昆布の手すきの技を間近に見たり、体験したりできる昆布店、串揚げ店、焼き肉店と続き、カフェ開業の予定もある。

 一方、創業80年余りの老舗コーヒー店は23年、3代目店主が抽出技術で日本一になった。新規店と既存店が融合し、商店街の魅力が磨き上げられていく。

 本町1丁目商店街振興組合の小坂政徳理事長は「良いお店が増えて話題になれば、新幹線で気比神宮にやって来た人たちが商店街を歩いてくれる」と話す。

 敦賀駅西口の駅前大通りでも、新幹線が開業する3月に完了予定の“歩行空間”の整備に期待がかかる。

 駅前商店街振興組合の河藤正樹理事長は、自身が営む創業90年近い土産物店でさえ「こんなお店あったんだ。歩いたことがなかったから」とお客さんに驚かれたことがあるという。

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 “歩行空間”整備の波はさらに広がる。

 23年11月に敦賀商工会議所、敦賀市、県が発表した「神楽門前町魅力アッププラン」では、気比神宮前の国道8号交差点から西へと延びる神楽町1丁目商店街の通りを4車線から2車線化し「車中心の道路から、ウオーカブルな参道を目指す」といった施策の方向性が盛り込まれた。同商店街振興組合の中山喜美子理事長は「商店街を歩いて回遊してほしい。歩道に設置したベンチに座って飲食を楽しんでもらうなど滞留したくなる雰囲気にしたい」と夢を描く。

⇒【記者のつぶやき】「歩いて敦賀発見!」を読む

◇日本一の“敦賀要塞”

 敦賀駅舎は市の鳥「ユリカモメ」が翼を広げた姿をイメージした屋根が特徴で、先端部分までの高さは12階建てビルに相当する約37メートル。整備新幹線の駅では日本一だ。当面の終着駅となる敦賀での乗り換え利便性に配慮し、3階新幹線ホーム、2階乗り換えコンコース、1階在来線特急ホームで構成する「上下乗り換え方式」を採用したためだ。

 巨大駅舎は鉄道ファンから“敦賀要塞”と称され、2階乗り換えコンコースの延長200メートル、乗り換え改札機19台、2階と3階をつなぐ76段の階段も整備新幹線駅で日本一。

 1月20日の内覧会では3階ホームから見渡せる市街地や敦賀湾といった景色が話題に。地元では「敦賀駅舎自体が観光コンテンツになりうる」と期待されている。

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 3月16日の北陸新幹線福井県内開業を契機とした新時代の福井のあり方を探る長期連載「シンフクイケン」は第6章に入ります。テーマは「福井が変わる」。地域の特色を生かしたまちづくりや、県外客を意識した取り組みの現状と展望を探ります。連載へのご意見やご感想を「ふくい特報班」LINEにお寄せください。

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