[社説]南城ハラスメント調査 市も実態把握すべきだ

 ハラスメント防止の先頭に立つべき行政や議会が、なぜ実態解明に腰が重いのか、疑問が膨らむばかりである。

 古謝景春南城市長の運転手として働いていた女性が、市長からセクハラを受けたと訴えている問題を受け、市議7人が市職員を対象に匿名のアンケートを実施した。

 アンケートへの協力を呼びかける用紙350枚を配布し、73件の回答があった。うち「市長や上司などからハラスメント行為を受けた」が22件、ハラスメントを「見た」「聞いた」が計34件だった。

 市は昨年4月以降、セクハラ防止規定に基づく市職員からの相談は「1件もない」と主張してきた。声を上げにくい環境があるのではないか。

 回答者の3割がハラスメントを受け、半数近くが見た、聞いたと訴える結果を重く受け止める必要がある。

 相談先は「上司・同僚」が12件、「職員労働組合」が5件、「役所の相談窓口」が1件などだった。

 一方、自由記述から「相談しても解決しない」という諦めもうかがえたという。

 アンケートは公式な調査ではないにせよ、市の相談体制の形骸化が見て取れる。

 古謝市長のセクハラ疑惑では被害を訴えた女性が第三者による調査を求めたにもかかわらず、市はセクハラ防止規定の対象ではない業務委託契約を理由に拒否している。

 今回の調査から市がハラスメントの実態把握や防止に後ろ向きと受け止めざるを得ない状況が浮き彫りになった。

 市は相談体制を見直し、働く全ての職員を対象に、実態を調査すべきである。

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 古謝市長は疑惑について「一切やっていない」と否定している。

 民間では業務委託契約であっても実質的に会社の指揮監督下にあれば、会社の安全配慮義務を認める判例があるという。

 市の規定に不備があるなら市長にも責任があり、その規定を盾に調査しないのは理にかなわない。

 豊見城市では2021年、当時の市長のパワハラ疑惑に関して、市が第三者委を設置し、調査している。

 南城市で被害を訴える女性は、セクハラで業務が継続できなくなったとも打ち明けている。被害のために仕事を失ったとしたら深刻だ。

 組織にはハラスメントをなくし、防止するために啓発する責務がある。

 市は市長のセクハラ疑惑の調査を実施する必要がある。

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 市議会は、昨年12月の定例会で市長の疑惑などを調査する特別委員会(百条委)の設置を賛成8、反対11の賛成少数で否決した。

 反対した与党系市議は、百条委ではなく、第三者委での真相究明を求めた。

 しかし、行政を監視するのは議会の役割ではないか。

 首長のハラスメントは全国で後を絶たないのが現状だ。

 疑惑が事実なら市政にも影響しかねず、議会もハラスメント対策に毅然(きぜん)とした対応を取らなければならない。

 市議会は百条委を設置し、行政のチェック機能を果たすべきである。

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