清水建設/材料噴射型3Dプリント技術で有筋構造部材を自動造形

清水建設は材料噴射型の3Dプリンティング技術を活用し、鉄筋内蔵の有筋構造部材を自動造形できる技術を開発した。人の腕と同等の動きが可能なロボットアームを制御し、事前に組み上げた鉄筋への材料噴射と表面仕上げ、出来形計測の各工程を順に行う。実証試験では柱部材(断面寸法510ミリ×210ミリ、高さ1・5メートル)をプラスマイナス5ミリ以下の誤差で造形することに成功した。
同社は建設3Dプリンティングの実用化に向け2019年に材料押出型3Dプリンティング用の繊維補強セメント複合材料「ラクツム」を開発し、建築や土木の施工案件に採用してきた。材料押出型はプリント材料をノズルの真下に押し出しながら積層していくため、鉛直方向に配置する鉄筋を造形物の中に組み込めず、有筋構造部材を直接造形することが難しかった。
同社はプリント材料を圧縮空気でノズルから噴射し、造形物を製作する材料噴射型3Dプリンティング技術に着目。新たに開発した噴射型用のプリント材料を鉄筋外周から吹き付けていくことで有筋構造部材を造形する技術を構築した。
ロボットアーム型の3Dプリンターを使用し、鉄筋外周を旋回するロボットアーム先端のノズルからプリント材料を斜め下方に噴射。鉄筋内部に充てんが完了後、表層全体に配合の異なる表層用プリント材料を重ねて吹き付ける。コテで平滑に整える表面仕上げや3Dスキャンによる出来形計測までロボットアームが行う。
同技術を使った造形体は構造性能にも優れる。梁部材の載荷実験を行った結果、在来工法で施工したRC部材と同等以上の構造耐力と靱性を備えることを確認している。今後、材料の改良やロボット・センシング技術の高度化を図り、造形精度の向上と複雑形状に対するプリンティング技術の確立を目指す。既設構造物の補修や補強、応急復旧への適用も視野に技術開発を促進していく。

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