「最終バスに乗り遅れたあのとき…」妻とのドラマチックな思い出を作品に 大宜味村在住の75歳、日本一短い手紙コンクールで大賞

一筆啓上賞の大賞に輝いた手紙(丸岡文化財団提供)

 日本一短い手紙のコンクール「第31回一筆啓上賞」(主催・丸岡文化財団)でこのほど、大賞に輝いた沖縄県大宜味村在住で自営業の森山高史さん(75)。「旅で出逢(あ)った日の妻」に宛てた手紙での受賞に「照れくさいけど一番気に入っている作品」とはにかんだ。(北部報道部・松田駿太)

 手紙は1997年11月、高史さんと妻の冨士子さん(70)が岐阜県の白川郷をそれぞれ一人旅している時に出会った日をしたためた。

 「最終バスに乗り遅れたあのとき、わざとゆっくり歩いていたんだ。たぶん、君もね。」

 旅先で意気投合した冨士子さんと、少しでも一緒にいたかったあの日の気持ちを伝えた。

 今回のテーマは「時」。出会いから今日に至るまでの月日に思いをはせながら、ペンを執ったという。

 そんな甘酸っぱい作品は、国内外から届いた3万4067通の上位5作に入った。「タイムカプセルを開けるように、妻と出会った頃を思い出した。結構ドラマチックな出会いの最初の一ページを表現できた」と喜んだ。

 高史さんはこれまでも同コンクールに応募してきたが、大賞は初めて。25日の結果発表で受賞を知り、冨士子さんとケーキでお祝いした。冨士子さんは「ああ、そうなの」とあっさりしていたという。

 高史さんは「あの日、妻も最終バスを逃すためにゆっくり歩いていたかは教えてくれなかった。恥ずかしくてちゃんと確認はできませんね」と頬を緩めた。

「照れくさいけど好きな作品」と語り、大賞を喜ぶ森山高史さん=26日、名護市・沖縄タイムス北部支社

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