今季での支配下登録期待!今季が勝負の最速159km誇る楽天イーグルスの未完の右腕とは?【プロ野球ブレイク候補2024】

支配下登録に向け、今季が勝負!最速159キロを誇る未完の右腕

︎東北楽天ゴールデンイーグルス 清宮虎多朗

荒削りなダイヤの原石の名は「せいみや・こたろう」

「清宮虎多朗」というその名前が、まず印象的な選手である。読みは「きよみや」ではなく「せいみや・こたろう」。名前そっくりさんの日本ハム、「清宮幸太郎(きよみや・こうたろう)」は東京都の出身の打者だが、こちらは千葉県八千代市の出身の投手。その千葉では「清宮」と書いて「せいみや」と読むこのが一般的らしく、「せいみや」曰く、そもそも名字を読み間違えられることは「なかった」そうだ。ところが清宮幸太郎がリトルリーグ、そして早実での活躍で「清宮フィーバー」を巻き起こして以来、「“キヨミヤ”って間違えられることが増えました」…らしい。

名前つながりでもう少し「清宮幸太郎」に登場してもらうと、「きよみや」は前述の通り、リトルリーグ時代から日本はおろか世界の舞台で躍動、東京北砂リーグでは2012年のリトルリーグ世界選手権で投打に渡る活躍でチームを牽引して優勝。アメリカ・メディアでは「和製ベーブ・ルース」と評され、早実では当時、史上最多であった高校通算111本塁打、高校公式戦通算70試合で247打数100安打、打率.405、29本塁打、95打点というとてつもない成績を残すと、2017年のドラフトでは高校生としては最多タイにならぶ7球団競合の末に日本ハムに入団したアマチュアのエリート中のエリートであり、高校野球界のスーパースターであった。

「きよみや」はエリート。「せいみや」は叩き上げ

一方、こちらの「清宮虎太朗」は叩き上げ。八千代松陰中時代は2年次に全国大会に出場しているが、「投手」として投げるスピードボールは最速125キロ。“けっこう速い球”ではあるが、突出した数字ではない。そこで清宮虎多朗が取り組んだのが食トレ&トレーニング。中学時代すでに183cmあった身長に対して体重は68kgという細身だった身体を食トレによって八千代松陰高に進学する前に10kg近く増量したことで球速は131キロにアップ。

もうひとつ自分に課した“トレーニング”は初動負荷トレーニング。高校1年次の冬場にジムに通い、関節の柔軟性を高めると同時に、関節の使い方、投げる際の力の入れ方を学んだことで、いわゆる“ひと冬を超えた”春先には球速が143キロにまでアップさせた。
高校では身長も190cmを超え、清宮虎多朗曰く「上半身と下半身を連動させる」ことを意識した躍動感あるフォームで投げ降ろす直球は最速145キロに到達。「勝負どころで決まるスライダー」(千葉ロッテ・榎康弘スカウト)の評価も高く、千葉県下でも名の知れた存在となっていったのだ。

ところが高3最後の夏は西千葉大会の1カ月前に指のマメを潰したため登板機会をほとんど得られず、チームは初戦となった2回戦で敗退。自身は2回を投げて3安打1失点、最速139キロと精彩を欠き、最後の夏を終えた。同年のドラフトで楽天から「育成1位」で入団したのだが、本指名とならなかったのはそんな最後の夏の状態・成績だったからだろう。

右肘手術を乗り越え、着実に進化

プロ入り後も順風満帆とはいえなかった。

まずルーキーイヤーの2019年は、極度の制球難もあって二軍での登板も果たせないままにシーズンは終了。2年目の2020年には、当時のスポーツ紙の言葉を借りると「伸長190cmの大型育成右腕が覚醒へのベールを脱いだ」というように、二軍の練習試合ながらも対ロッテ戦で鳥谷敬をはじめ安田尚憲らから三振を奪うなど2回を4奪三振の好投を披露、前述の見出しを紙面に躍らせた。同年のイースタンではわずかに4試合の登板に終わってはいるが、8回2/3を12奪三振、与四球0、防御率0.00の好成績。この頃には直球のアベレージは140キロ後半を計測するなど、「未完の大器」がいよいよ覚醒しはじめた…かと思えたのだが…。

翌2021年は2月にトミー・ジョン手術を受けたことで実戦登板はゼロ。2022年は、6月に実戦復帰を果たすもイースタンでの登板は5試合で防御率11.57。ただし、同年秋のフェニックス・リーグでは直球は155キロを計測。現在に続く、清宮虎多朗の持つ圧倒的なスケール感を垣間見せたのはこの時といっていいかも知れない。

チャンスが出てくるところまで来た

そして迎えた2023年シーズン。二軍では主にストッパーを務め、6月末のヤクルト戦では自己最速となる159キロを計測(球場の計測システム・ホークアイは「161キロ」を表示)するなど39試合を投げて2勝2敗、22S、防御率4.00でイースタンのセーブ王となっている。

一方で130キロ台のスライダーと140キロ台中盤のフォークといった変化球の制度が課題とされているが、二軍の三木肇監督は「一軍で戦力になる可能性、チャンスが出てくるところまで来た」と、清宮虎多朗の成長を認めている。くわえて「努力家だから、トレーニングも身体作りもしっかりしてきた。それと一緒に球速も上がってきた」というから、清宮虎多朗はアマチュア時代も、今も、とにかく地道な研鑽を重ねているのだ。

「危機感もある。“やらないと”という気持ちを持ちながら取り組んでいきたい」(清宮虎多朗)というように、勝負の年となる今季。「未完の大器」「荒削りなダイヤの原石」が2桁番号を背に東北の地で暴れ回る姿を、ぜひ、見てみたい。

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