デジタルセラピューティクス(DTx)の普及動向調査を実施(2023年)~国産デジタルセラピューティクス(DTx)の開発中製品数は76にまで増加、多数の疾患を対象に様々なタイプのDTx(治療用アプリ)開発が進む~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のデジタルセラピューティクス市場を調査し、現状や課題、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

1.調査結果概要

デジタルセラピューティクス(Digital Therapeutics、以下 DTx)は、「治療補助等のために用られる医療機器としてのアプリケーション(測定用デバイスと一体となっているものも含む)」であり、アメリカやドイツでは既に多数のDTxが上市されている。日本においては2023年12月時点で3製品が医療機器製造販売承認を取得し、うち2製品が上市している。

国産DTxは主にベンチャー企業により開発されており、研究・開発に着手している企業数は2023年12月時点で40を超えているほか、製薬企業を中心に海外製DTxの日本への導入を図る企業も複数みられる。2023年11月時点で研究・開発が開始されている国産DTx製品数を76と推計した。これらの対象疾患の上位5つは、糖尿病、うつ病・不安障害、がん、慢性疼痛、心疾患となっている。これら以外にも多数の疾患がDTxの開発対象となっている。

また、研究・開発が進められているDTxのアプローチ(療法)も幅広く、認知行動療法等に立脚したもの以外にも、食事療法や運動療法など従来療法のデジタル化のほか、ニューロフィードバック(脳波をリアルタイムで測定・確認し、音や画像等でフィードバックする療法)を活用するもの、独自ビデオゲームを活用するものなど、様々なタイプのDTxが開発されている。

2.注目トピック~2020年代後半にはDTx上市製品数は数十にまで拡大すると予測

2023年12月時点では国内での上市済みDTx製品は2つに留まるものの、多数の研究・開発着手済み製品があり、またSaMD(Software as a Medical Device)など制度面の整備も進んでいる。
このような状況から、2020年代後半にはDTx上市製品数は数十にまで拡大すると予測する。加えて、DTx開発企業はDTxから派生したnon-SaMDサービス(非医療機器アプリを用いたヘルスケアサービス)の開発・展開をしている場合も多く、そのような展開も本格化する見通しである。
2030年代に入ってもDTxの上市は継続し、糖尿病以下上位5つの対象疾患などでは多数のDTxが利用可能になると予測する。また上市製品の増加に伴い、DTxの医療機関・患者への普及が本格化する見込みである。

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