ヒルズで届ける麻布台風医療 麻布台クリニックの挑戦【後編】

昨年11月に開業した麻布台ヒルズの中にある「麻布台クリニック」。六本木ヒルズなどを手がけた森ビルが「緑に包まれ、人と人をつなぐ『広場』のような街 – Modern Urban Village -」というコンセプトを掲げ、多様な都市機能を融合させたヒルズの中で、医療機能を担っている。今回は麻布台クリニックの齋藤昌孝院長に事業内容やビジョンについて取材。前編では基本的な事業内容を、後編では地域に根付く医療の実践での新しい取り組みを紹介する。(取材・清水琉生)

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麻布台地域の強みを生かす

齋藤院長が現在挑戦する美容皮膚科は、カウンセリングや施術にたっぷり時間をかける上、皮膚科専門医が提供する美容医療として安心感を生めることが強みだ。「日本の制度の問題だと思いますが、開業したら自分が何科を名乗るかは自由に決められるんです。自由診療で儲けることを狙って、皮膚科のトレーニングを十分に受けていない医師が美容皮膚科をやっていることも少なくないんですよ」。そして「地域柄、普段から自分の健康を気に掛け、病気の治療よりも、もっと健康になりたいという需要がある」と齋藤院長は指摘。美容皮膚科を受診して自分がなりたい姿に近づけることで、心から生まれる健康もサポートできる。麻布台ヒルズでのクリニック経営を成り立たせるためにも、保険診療だけではなく、基本的に全額自費となる自由診療の存在意義は大きい。「自由診療であれば単価が高い分、1人に1時間など多くの時間を使うことができます」と齋藤院長。麻布台ヒルズのターゲット層に合わせた事業内容とすることで共鳴を強くしている。

また、麻布台ヒルズの周辺には大使館や外資系企業が多く、外国人が多いことも特徴。大使館員や外資系企業のワーカー、その家族も患者として想定される。齋藤院長の経験も生かしながら日本語以外の対応が十分にできるように受付やホームページを整えていく予定だ。

受付の内観(撮影・清水琉生)

患者が通いやすい環境だけでなく、クリニックに就職したいと思えるような環境も同じく重要だ。近年、優秀な女性医師が出産や子育てのライフイベントで一度医療現場を離れ、そのまま復帰できていない人が多く、「そういった方々がスキルを磨きながら現場復帰しやすくなるような環境にしたい」と語る。特に皮膚科は2000を超える種類の病気があり、皮膚科医として10年程度の経験ではまだまだ一人前と呼べない世界だという。「麻布台クリニックでは、知識や技術を高めるためのトレーニングを定期的に行い、医師も成長できる場にしたい」と齋藤院長は考える。麻布台ヒルズの中という特殊な環境にある麻布台クリニックだからこそできる、今後のスキルアップにつながる新しい挑戦への機会をたくさん用意し、働きたくなる場をつくっていく。

麻布台ヒルズとの協奏は続く

地域を巻き込む医療の実現のために、通常のクリニックでは行わないような事業もこれから動き出す。森JPタワーの4階にある、プロスポーツ選手も通い、手厚いフォローを受けられるパーソナルジムの「デポルターレクラブ」とのコラボレーションを進めている。他のヘルスケア関連施設との連携の話も出つつあり、麻布台ヒルズならではの協奏は齋藤院長にとっても刺激的だ。

将来的には麻布台クリニックの需要の高まりに合わせて診療科を増やし、総合クリニックを目指している。先月からは人間ドックの予約受付を開始し、来年度は産婦人科の診療を始める予定だ。齋藤院長もさらに新しいチャレンジを拡大したいと意気込む。麻布台に根付く医療でトータルでのウェルネスの実現へ、麻布台クリニックの挑戦は始まったばかりだ。

施設案内

医療法人社団なかよし会 麻布台クリニック
東京都港区麻布台一丁目3番1号 麻布台ヒルズ タワープラザ4階(森JPタワー)
TEL:03-5544-9390(代表)
TEL:03-5544-9395(健康診断・人間ドック 予約/問い合わせ)

ホームページ:https://www.azabudaiclinic.com/

齋藤昌孝(さいとう・まさたか)さん  96年慶應義塾大学医学部卒業。11年米エモリー大学博士研究員。博士(医学)。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。皮膚科全般、爪疾患、美容皮膚科を専門とし、13年には慶應義塾大学専任講師を務め、23年11月より麻布台クリニック院長に就任。

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