【人身事故を考える】地下鉄などで人身事故があった場合、損害賠償は誰が行うのでしょうか? 家族に降りかかるのは酷ではないですか?

飛び降りによる事故の損害賠償は誰が負担する?

厚生労働省は、平成29年度厚生労働省自殺防止対策事業「自死遺族等に対する差別・偏見の法律問題等相談啓発事業」において「自死遺族が直面する法律問題」の手引きをまとめています。

それによれば、踏み切りへの侵入や駅のホームからの飛び込みなどによって自殺を図った際、その遺族に対して損害賠償請求がされる場合があるとしています。この場合、遺族に損害賠償請求するのは鉄道会社です。

遺族に損害賠償請求される法的根拠は?

では、どのような根拠のもとで請求されるのか、支払う際の金額の水準や実際の対応などを説明します。

鉄道会社が遺族に損害賠償請求をする法的根拠は、鉄道営業法第三十七条にある「停車場其ノ他鉄道地内ニ妄ニ立入リタル者ハ十円以下ノ科料ニ処ス」という内容です。つまり、踏み切りや線路への侵入は違法ということになります。自死を目的として鉄道敷地内に入るのは故意であり、違法行為と判断されます。

ただし、自死のきっかけが精神疾患だった場合は、必ずしも自由な意思による侵入とはいえません。精神疾患によって自由意思による決定が難しいと判断できれば、責任を問えないこともあります。

先ほど「遺族に対して損害賠償請求がされる場合がある」と表現したのは、このためです。なお、鉄道営業法が制定されたのは明治三十三年です。古い法律であるために科料は10円以下となっていますが、罰金等臨時措置法の適用により実際には「1万円未満の科料」が科せられます。

実際に請求される費目と金額は?

飛び降り自殺などで損害賠償が発生した際、請求されるのは「振替輸送費」「復旧人件費」「乗車券払い戻し費用」「列車や鉄道の破損修理費用」などが主です。金額としては数十万円から数百万円が一般的で、1000万円を超えるケースは極めてまれです。

また、事情によって賠償金の支払いが難しい場合は交渉することも可能になっています。

鉄道自殺を図った際の損害賠償は遺族に請求される

線路や踏み切りで自殺を図った場合、鉄道敷地内に入るのは故意であり、違法行為と判断される場合があります。そのため、鉄道営業法第三十七条によって自殺者の遺族に損害賠償請求がされることがあるでしょう。

ただし、賠償金は数十万円から数百万円が一般的で、1000万円を超えることは極めてまれだといえるでしょう。

出典

厚生労働省 自死遺族が直面する法律問題 自死遺族支援のための手引
e-Gov法令検索 明治三十三年法律第六十五号 鉄道営業法

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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