【特集】「笑顔がいっぱいある映画」 小児がんで12歳の生涯を閉じた少女の軌跡を映画化 少女が遺した思いと家族の願い

【動画】銀幕によみがえる12年の軌跡 少女が紡ぐ物語

特集は、先週、福山で先行公開され、2月から全国で封切りされる1本の映画を取り上げます。その映画の主人公は、小児がんで亡くなった福山市在住の1人の少女です。家族の思いと、彼女の生きた軌跡をたどりました。

1月26日に福山市で公開が始まった映画『神様待って!お花が咲くから』は、小児がんを患いながらも、明るく生きた1人の少女と、それを見守った人達の物語です。そのモデルは、福山市で両親と兄・弟に囲まれて育った森上翔華さん。懸命の治療のかいもなく、5年前に12歳で亡くなりました。

■父・森上弘典さん

「6年間闘病生活を送って(亡くなって)5年になるが、本当に翔華が横におるっていう感じ。」

明るく元気で負けず嫌い。そして、一度決めたら最後までやりきる。そんな性格の、森上家の長女でした。

左足に、小児がんの「横紋筋肉腫」が見つかったのは、5歳の時。小児がんは、14歳までにかかるがんの総称で、7割から8割が治癒するとされます。

■父・森上弘典さん

「がんって治らないと思ったけど、かわいい長女なのでどうにかして治る、そんなにひどいものじゃないというのも反面ありました。だから正直驚くには驚きました。がんって言われた時には。」

にぎりこぶし大の腫瘍を切除したあとも、再発や転移を繰り返しました。その後の辛い抗がん剤治療の期間も、弱音を吐くことはなかったと言います。

■父・森上弘典さん

「私らの前でも笑顔。暗い顔を見たことがない。(抗がん剤治療で)髪の毛が抜けたら、女の子なんではげになる事が、私らも気にしてたんだけど、本人は全然(気にしていない)。抜けたよ抜けたよを、楽しんでる感じ。」

一番楽しみにしていたのは、学校に行くこと。体を動かすのが得意で、運動会の徒競走では、2着でゴールします。6年生の時には、「修学旅行だけは行きたい」と、主治医に直訴。学校や級友達の協力を得ながら、車いすでその念願を叶え、一番の思い出を紡ぎます。

■父・森上弘典さん

「修学旅行に行ったみんなが協力してくれたなって。すごく思い出になった。それが一番うれしいですね。みんなに親しまれていたんだなって。」

更に「自分の絵本を作りたい」と、病床で絵筆も取りました。主人公は、翔華さんの足型で描きました。

クリスマスに自宅に戻った際は、欲しがっていたものを揃えました。しかし、その1か月後でした。

■父・森上弘典さん

「卒業式には絶対出るって。みんなで一緒に卒業するって言ってたんだけど、12月の終わり頃から調子が悪くなって。」

2019年1月25日、家族全員に見守られながら、息を引き取ります。12歳の生涯でした。

卒業式への出席は叶いませんでしたが、級友がそれに応えました。

■父・森上弘典さん

「みんなで返事して、みんなで卒業するんだなあって。その時はすごく嬉しかったですね。いい友達ばっかりだった。」

その後、病院の看護師や保育士たちが、クラウドファンディングを実施。およそ3か月をかけて描いた絵を、絵本に仕上げます。主人公が、家族とピクニックに出かける物語は、翔華さんが考えました。外出できない患者を元気づけたいとの思いを込めています。

一方、翔華さんをモデルにした劇映画も完成しました。公開は、地元・福山での先行上映で幕を切りました。多様な世代の人達がスクリーンに見入ります。翔華さん役には、オーディションで選ばれた新倉聖菜さん。他に、父親役の布川敏和さんや、高畑淳子さんらが出演。闘病中も笑顔を絶やさなかった翔華さんが、周囲の人たちの心に変化をもたらす姿が鮮烈です。

■映画を鑑賞した人は…

「笑顔に10倍、100倍の薬なんだという言葉が(印象に)残った。」

「その人がどう生きていったかということが、環境をここまで変えるということに感動している。」

■父・森上弘典さん

「笑顔が出ると、人間って楽しくなると言うか、前向きに考えるようになる。それが翔華にあったかなと。この映画にも、笑顔がいっぱいある映画なので、それを見て頂いて、いま闘病生活を送っているお子さんたち、そして保護者の方に笑顔を出して頑張ってもらいたいなと。」

映画は小児がん啓発のため、厚生労働省とこども家庭庁の推薦映画に指定されました。周囲の人々を明るくしながら、12年の生涯を全力で駆け抜けた少女の物語『神様待って!お花が咲くから』は、2月2日から順次全国で公開されます。

【テレビ派 2024年1月30日放送】

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