【サッカー】イラクFWの退場が大論争のアジア杯 | 日本きょう1/31バーレーン戦

食べるしぐさをするイラクのFWアイメン・フセイン=写真:ロイター/アフロ

スポーツマンシップとは何かを考えさせられた。カタールで開催中のサッカーのアジアカップで議論を巻き起こしているヨルダンーイラク戦のゴールパフォーマンスによるイラクのエースの「退場劇」である。

問題の行為は2024年1月29日の決勝トーナメント1回戦、イラクがヨルダンに2―1で勝ち越した後半31分に起きた。日本戦でも2発を決めたイラクのFWアイメン・フセインは大会通算6得点で得点ランキングトップ。相手のクリアボールに反応し、右足でトラップ、落ち着いてグラウンダーのシュート。ヨルダンのゴールネットを揺らした。イラクはこの追加点でグッと勝利に近づいた。はずだった。

芝を食べるしぐさでレッドカード

ところが喜んだフセインは突飛な行動に出た。ピッチに座りこみ「芝生の草を食べるしぐさ」をしたのだが、その行為が問題視され、主審から2枚目のイエローカードを出され、累積でレッドカードに。その場で退場させられたのだった。

1人少なくなったイラクはその後、ヨルダンに後半アディショナルタイム、立て続けに2得点を許した。天国から地獄。まさかの逆転負けを喫した。プレーとは直接関係ないゴールパフォーマンスが、フセインの退場につながり、試合の流れを大きく左右した。それが結果的にイラクの敗退につながった。海外メディアは、FWフセインの退場について「イラク国民は激怒している」と伝えるメディアと「ヨルダンを挑発したと受け止められるので当然だ」という論調で二分している。

そもそも「芝生の草を食べるしぐさ」でなぜ2枚目のイエローカードが出たのか。実は前半46分、ヨルダンが先取点を挙げた際にも、ヨルダンの選手たち5人が車座になって芝生に座り込み、口元に手を運ぶしぐさをしていた。ヨルダンの国民食で祝宴に出される「マンサフ」を食べるシーンを思わせる。ところが、ヨルダンには主審の「お咎め」はなかった。その主審には「不公平だ」などの誹謗中傷が続々届いているといい、アジアサッカー連盟はそれに対し、「強く非難する」という声明を出す事態に発展している。

アジアカップの公式サイトは、「過度のゴールセレブレーション」のためフセインに警告が出されたと記している。米ESPNは「ゴールパフォーマンスの真似をしてレッドカード。イラク敗退、ヨルダンが劇的勝利。アジアカップで論争巻き起こる」との見出しで報じている。

レッドカードを出した主審はイラン人だった。イラクFWのフセインの「芝生の草を食べるしぐさ」が、イスラム教でタブーとされる「不浄の手」にあたる左手を使っていたこともあり、アジアの文化や習慣の違いに絡む挑発や侮辱と主審がみなした可能性もあるという。世界で戦うアスリートは相手に敬意を払うスポーツマンシップの精神と同時に、文化の違いを理解する教養も必要なのだ。相手をからかったり、侮辱したりしたと受け止められる行為は、大きな代償を払うことを改めて思い知る。

日本代表きょうバーレーン戦

そんな論争が尾を引くAFCアジアカップ(アジア杯)カタール大会の決勝トーナメント1回戦で日本代表(FIFAランキング17位)は31日午後2時半(日本時間午後8時半)、バーレーン代表(同86位)と対戦する。「敵を知り己を知れば百戦危うからず」。イラクのような「失態」は許されない。(Pen&Sports編集長・原田 亜紀夫

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