宮台真司が生きてきた「異界」とは? 消えると感情、恋愛にも影響?

1月31日「大竹まことゴールデンラジオ」(文化放送)、大竹メインディッシュのコーナーに東京都立大学教授、社会学者の宮台真司さんが登場した。宮台さんも著者に名を連ねる『ルポ 日本異界地図 行ってはいけない!? タブー地帯32選』が今月、発売されている。番組ではそのタイトルにもある「異界」について語られた。

宮台真司「ありとあらゆる問題について、感情の劣化が進んでいる。その背後に何があるんだということで最近、異界論(『ルポ 日本異界地図 行ってはいけない!? タブー地帯32選』)という本を出しました。異界とは異人たち、ストレンジャーたちの界隈ということですね」

壇蜜「うん」

宮台「たとえば90年代、引きこもりの初めの形態は登校拒否だった。そのあと社会に出られない人が増えていく。並行して鬱病も増えた。その背後は『異界が消えたからだよね』というのが僕の昔からの議論です。冒頭に文章(インタビュー)を載せていただいて。『異界には思い出深いものがあります』と。僕は3種類の異界を生きてきた。第1は民族学で悪所といわれるところなんですね。めまいが生じる場所ということで、芝居町と色町……」

壇蜜「色町」

宮台「昔はお祭り、あるいは色町・花町的な『めまい』というのを時間的な交代としていたのを、場所として人形町、葦原(吉原)をつくるとかした。第2の異界が差別する者たちの界隈ということ。被差別民がルーツなので、重なり合いが昭和の時代にはかなり話題になっていたと思います。3番目は鬼太郎の映画(『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』)が公開されましたけど、水木しげるが描いたような、空間でいうと人が住む場所、住まないところの間。時間でいうと、逢魔が時といいますが……」

壇蜜「夕方」

宮台「夕方ですね。そういうときに人でないものが近づいてくるよ、と。それぞれ僕の世代や僕以上の世代にとってはなじみ深いものだったと思うんですね。異界の特徴、3つ言いましたね。『悪所』『被差別の人たち』『逢魔が時、境界線に現れる、人でないもの』。それぞれ法に従えない人たち、従わない人たちなんです。2番目から言うと被差別の方々は、差別される、法に守ってもらえないので、法よりも掟が重要」

大竹まこと「なるほど」

宮台「たとえ法を破っても仲間を守るために前に進むと。恋愛はロミオとジュリエット、近松門左衛門、近松半二の世話物、心中もののことですが、全部そういう構造を持っているんですね。世間が認めなくても私たちはこの恋を貫徹させよう、場合によっては死も辞さず、という形ですね。文学的にはなじみがあるけど、それは所詮お話でしょう、となってしまったのはこの30年間の話」

大竹「はい」

宮台「駆け落ちというネタが映画で描かれるのは80年代までなんですね、90年代にはない。強いて言うと野島伸司脚本の93年『高校教師』」

壇蜜「最後のシーン。電車で、二人で……」

宮台「そう。よく憶えていますね。教師・生徒の恋愛が描かれていた。京本政樹演じるスクールガールフェチみたいなやつと、本当の恋を貫徹しようとする二人というのが対照されていて。そのころから高校生というと制服、『制服、萌え~』みたいな人たちが出始めたんだな、ということも表している」

大竹「はい」

宮台「法が許しても掟が許さない、法が許さなくても掟が許す、というような界隈が、皆さんにとってわかりやすい(「異界」の)イメージだと思いますし、恋愛にも関係しています」

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