【気になる輸入車⑧】選択肢が増えたコンパクトSUV最新動向2024「多才な個性が多彩なライフスタイルにジャストフィット」

ブームと騒がれた後、すっかりレギュラーカテゴリーとなって、いまだにその人気が衰えないSUV。コンパクトSUVと言われるクラスも、年々ラインナップが拡大しつつある。さらに近年は、他のカテゴリー同様に全体的にボディサイズも拡大中。コンパクトにまとまらない、多彩なライフスタイルにフィットする個性派たちから、目が離せない。(Motor Magazine2024年2月号より)

同じスタイリングでBEVとICEをもつBMW

ジャパンモビリティショー2023でワールドプレミアとなった新型X2とiX2。クーペスタイルのコンパクトSUVで、X2 xDrive20iは150kW/300Nmを発生する2L直4ツインターボエンジンを搭載する。

このクラスのパワートレーンに、PHEVやBEVがラインナップされてきているのは、やはりニュースである。しかもPHEVはEV走行できる距離も伸び、日本の日常生活だと、ほぼ電気のみの走行でこと足りるレベルのものも増えてきた。

そういったこともあり、現在このクラスは、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、PHEV、BEVと、さまざまなパワートレーンが、ライフスタイルに合わせて選びやすいのが嬉しいポイントとなっている。要は、生活に根差したフレキシブルなクラスということで、現在のユーザーのライフスタイルの現実が見えてくるのも面白いのだ。

では、もう少し詳しく見ていこう。まず、BMWからはX1、X2がフルモデルチェンジ。ともにガソリンエンジンのほか、iX1、iX2というBEVを用意。さらにX1はMHEVのディーゼルモデルもラインナップするなど、パワーオブチョイスをテーマとして掲げている。

そのどのモデルもクオリティが高く、価格差があまりないのも利点となっており(あくまで補助金を使えばの話ではあるが)、まさに好みに合わせて選べる内容となっているのがイイ。

3世代目となったX1。カーブドディスプレイの採用や、iDriveコントローラーの廃止など、UIのデジタル化が進んだ。BEV版のiX1も加わり、好みに応じてパワートレーンが選べるようになった。

来た来たトナーレ。扱いやすさとオシャレさのバランスが絶妙

続いてMINIからは、MINIカントリーマンが登場。これは日本ではまだ現行モデルだが、MINIクロスオーバーと呼ばれているモデルの後継となる。

アルファロメオ初の電動化モデルのトナーレ。ステルヴィオよりコンパクトなボディサイズで1.5L直4ターボに48Vモーターを組み合わせたMHEVと2023年8月にはPHEVモデルも加わった。

ちなみに世界ではこれまでもカントリーマンという名称で呼ばれていたが、なぜ日本のみクロスオーバーだったかというと、カントリーマン=田舎者と捉える方がいると困るからということではなく、別の会社が商標を持っていて使えなかったからというのが真実らしい。しかし、このたび晴れてカントリーマンという名称が使えるようになったということだ。

そのMINIカントリーマン、まずはガソリン/ディーゼルエンジンモデルが日本に導入されるようだが、その後BEVもやって来ることがすでに発表されている。

メルセデス・ベンツGLA&GLBはオーソドックスなガソリン&ディーゼルモデル。メルセデス・ベンツのBEVはEQA、EQBというモデルとなり、こちらも健在だ。

さて、アルファロメオ トナーレは、待ち望んでいた方も多いのではないだろうか? 来るぞ、来るぞと言われながら、実に数年が経った気はするが、ようやく上陸となった。ボディサイズ的に扱いやすいアルファロメオのSUVがようやく登場した。

MHEVモデルに続いてPHEVモデルがやってきたが、電気のみで72kmのEV走行が可能というから、日本市場ではかなりEVとして使えるタイプだと言っていいと思う。

EV走行距離が伸び、実用的になったPHEV

もうひとつ新しいところで、ニューモデルとして日本デビューを飾ったのがプジョー408。ユニークなファストバックスタイルの、ガソリン&PHEVモデルとなっている。こちらのEV走行も65kmということで、なかなかのものだが、とにもかくにもスタイルの美しさでは抜きんでている。

ファストバックとステーションワゴン、SUVを融合させた個性的でスタイリッシュなプジョー408。フロントにはライオンの牙をモチーフにしたデイタイムランニングライトやリアはライオンの爪をモチーフにした3本のランプを装備する。

そしてマイナーチェンジを受けたのがプジョー2008。かぎ爪をモチーフにした3本のデイタイムランニングライトなど、さらに個性的な顔つきになったが、BEVモデルはまだ変更になっていない模様だ。

シトロエンからはC5エアクロスSUV。こちらもガソリンとPHEVだが、EV走行は73kmと実用的となっている。

さて、ラグジュアリーSUVのDS3は、ディーゼルエンジンのみと潔い。その代わりDS4はPHEV、ガソリン、ディーゼルと3つのパワートレーンが用意されている。ちなみにPHEVモデルのEV走行距離は56kmだ。

そして、個人的にオシャレフレンチだと思うのが、ルノー アルカナ。その中でもエンジニアードがオシャレだ。MHEVモデルと、輸入車では唯一ルノーのみがラインナップしている、フルハイブリッド仕様。

燃費もWLTCモードで22.8km/Lとかなりの高レベル。モータースポーツ由来のドッグクラッチマルチモードATを使っているのが、またユニークなところだ。モータースポーツ由来の技術は、たまに聞くが、このように目に見える形で盛り込んでくるのは珍しく、走る実験室として自動車レースをやっているメーカーとしての意義を感じやすい。

これぞ本当のスタイリッシュSUVと言えるのが、レンジローバー イヴォークだ。リアへ向かって下がるルーフを採用するSUVの先陣を切り、後に続くモデルが雨後の筍のように現れ、一大ブームの立役者となった。こちらはMHEVとPHEVを用意。後者のEV走行距離は65.1kmだ。

サスティナブルという高性能は、効率だけではない

そして、EVにいち早く力を入れたメーカーのひとつ、ボルボからは初のEV専用プラットフォームSEAを使ったEX30がデビューした。EV専用ということで、室内はひと回り大きなボディサイズのC40やXC40よりも広く感じられるほどだ。

ボルボ史上最小のSUV電気自動車のEX30。一般的な立体駐車場にも対応する全長4235×全幅1835×全高1550mmとコンパクトなボディサイズが特徴。

また、サスティナブルを具現化したクルマとして、スピーカー位置をホームスピーカーのようなストレートタイプのものをダッシュボードの奥に配置したり、窓のスイッチ等をすべてセンターコンソールに集約するなどして、スペース効率だけでなく、配線の低減やリサイクル性の高さにまでこだわっているのが大きな特徴。それをスカンジナビアンデザインを用い、オシャレに昇華させているところはさすがだ。

さらにC40とXC40は、両モデルとも出力とトルクを向上したモーターに、駆動方式をフロントからリア駆動へと仕様変更が行われた。

普通にパッと使えるEV界の新定番

フォルクスワーゲンからは同社初となるBEVのID.4が登場。電気自動車専用のモジュラーエレクトリックドライブマトリックスアーキテクチャーを採用し、広い室内空間や最適な重量バランスによりダイナミックなドライビング性能を実現する。

フォルクスワーゲンのBEVブランド、ID.シリーズとして日本初導入となるID.4。ボディサイズは全長4585 ×全幅1850×全高1640mmで、ゴルフトゥーランに近いサイズとなる。

またID.4はBEVの中でも普通であることにこだわったクルマで、たとえるなら、EV界のゴルフという感じだ。そしてそれが誰でも普通にパッと使えるのがこのクルマのスゴいところなのである。普通であることは実はいちばん難しいことだと思うので、これはかなりの高レベルだ。

さて、日本に帰ってきたヒョンデからは、個性的かつ愛くるしいアイオニック5に続き、コナというニューモデルが登場。こちらも完全なBEVモデルで、一充電で456km走る本格派のコンパクトSUVだ。

2024年にはNというスポーツブランドも日本に投入されるということで、今後も楽しみが膨らむブランドである。

ロングボディも加わった人気のカングーとそのライバルたち

そして、もうひとつ最近の傾向として、商用車ベースの乗用車モデルの台頭が挙げられる。長い間ルノーカングーの独壇場だったカテゴリーなのだが、そのルノーカングーも2023年、14年ぶりにフルモデルチェンジを果たした。

14年ぶりのフルモデルチェンジとなる3世代目カングー。イエローにブラックバンパーと観音開きのダブルバックドアは日本で人気の組み合わせ。ロングホイールベース版のグラン カングーを導入することもアナウンスされた。

最新のADAS機構などを取り入れながら、乗り心地や静粛性まで超進化。さらにロングボディのグランカングーが2024年には上陸予定で、こちらも人気沸騰となりそうだ。

同じく商用ベース乗用車の3兄弟、シトロエン ベルランゴ、プジョー リフター、フィアット ドブロも、標準ボディとロングボディモデルをラインナップしており、兄弟ながらもそれぞれ個性を光らせている。こちらも今後の展開もまた楽しみだ。(文:竹岡 圭)

プジョー リフター ロング リフターをベースにホイールベースを190mm延長し、3列シート7人乗りとしたモデル。全長4760mm、全幅1850mmと使い勝手のよいサイズで、3列シートを取り外せば、最大で2693Lものラゲッジスペースを確保する。

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