栃木県内30の酒蔵の日本酒を味わえる宇都宮市本町の試飲施設「酒々楽(ささら)」が31日、多くの日本酒ファンに見守られながら閉館した。四半世紀にわたり運営してきた県酒造組合(尾崎宗範(おざきむねのり)会長)は新天地での営業再開を検討しているが、移転先は未定だ。
酒々楽は1999年12月、本県の多彩な地酒の魅力を知ってもらい普及を図ろうと、組合事務所の建物内に開設された。1杯100円または200円で利き酒を楽しめる施設としてファンを集めてきたが、築70年以上が経過する建物は老朽化が激しく、昨年11月、事務所移転と建物の取り壊しが決まった。
組合は酒々楽の移転・継続を模索しているが、平日の夕方2時間という営業時間や他の飲食店と競合しないようにする現行形式での営業継続は難しく、いったん閉館することにした。
最終日、開店時刻の午後5時には約25人が列を作った。千葉県から駆け付けたという女性、交流サイト(SNS)を見て初めて来店した男性、常連客などが閉店時刻まで店内を埋め、閉館を惜しみながら地酒を味わっていた。
あいさつした尾崎会長は「多くの皆さんに支えられ、続けてこられたこと、栃木の酒をたくさん飲んで紹介していただいたことをうれしく思う」と感謝した。
店舗前では能登半島地震で被災した酒蔵の「能登杜氏(とうじ)」を支援するため、在庫の酒やグラスなどの販売も行われた。