「グランブルーファンタジー リリンク」レビュー:長きにわたった開発期間は伊達じゃない。ゲームとしての手触り、映像表現ともに徹底的にこだわり抜かれた力作

Cygamesが2024年2月1日に発売したPS5/PS4/PC(Steam)用アクションRPG「グランブルーファンタジー リリンク」のレビューをお届けする。

2016年に発表されてから紆余曲折あり、約8年の歳月を経てついに発売を迎える「グランブルーファンタジー リリンク」。ソーシャルゲーム「グランブルーファンタジー」のファンにとっては、待ちに待ったものだろう。

これを書いている筆者は、「グランブルーファンタジー」未プレイのアクションゲーム好き。今回のレビューは、そうした立場のプレイヤーにとって、本作がどのように感じられたか? という視点から論じるものとなる。

結論として、本作は「グランブルーファンタジー」を知らなくても、3Dアクションゲームが好きならば見逃すのはもったいないタイトルに仕上がっている。そう感じられた理由について順を追って記していくので、ご一読いただけたらうれしい。なお、レビューのためにプレイしたのはPS5版だ。

これ以降、本稿では単に「グラブル」及び“原作”と呼ぶときはソーシャルゲームの「グランブルーファンタジー」を指し、「グラブル リリンク」及び“本作”と呼ぶときはレビュー対象である「グランブルーファンタジー リリンク」を指すものとする。

■「プレイヤーを通せんぼする存在」から垣間見た作品世界の“見せ方”のこだわり

「グラブル リリンク」の舞台は、「グラブル」には登場していない未知なる空域の“ゼーガ・グランデ空域”。原作から引き続き主人公を務める団長(容姿は2種類から選べる)率いる騎空団たちの活躍を描く、完全オリジナルストーリーが展開される。

本作のストーリーから筆者が受けた印象は「TVアニメシリーズの劇場版っぽい」というものだった。TVシリーズでおなじみの面々が、未知なる冒険の舞台を訪れ、新たな危機・新たな敵対者に遭遇することで、TVシリーズとは独立した展開を見せる。そうして描かれるのは、劇場版だからこその、スペクタクルに満ちた冒険――。

「グラブル」に触れていない人間の所感ではあるが、「グラブル」ファンの方も、さほど変わらない印象を受けるのではないかと思う。もちろん大作コンシューマータイトルである本作では、劇場アニメ以上のボリュームを誇る壮大な物語が展開される。

加えて、本作には「グラブル」未プレイのプレイヤーであっても夢中にさせるためのきめ細やかな工夫が、いたるところに施されている。

メインストーリーの中で、主要な登場人物たちの個性や魅力、そして関係性がさり気ない描写を通して把握できるようになっている、というのは序の口。自由行動時も主人公の独白といった形でおなじみのキャラクターたちについて語ってみせ、キャラクターひとりひとりの物語が、該当キャラによるフルボイスで語られるフェイトストーリー(読むことで該当キャラのステータスが上昇、エピソードによっては戦闘も発生する)によって気になったキャラクターのバックボーンをプレイヤーが自発的に掘り下げていける。

また、会話時のテキストでは作品世界の専門用語が強調されており、ボタンひとつで用語集の気になった言葉の項目にアクセスできる。かつて“空の民”と“星の民”の間で戦争が起きたといった歴史的背景や、“星晶獣”などの存在、主人公とルリアの特別な関係についても、物語を追いながらすんなりと理解することができた。

とはいえ、作品世界が魅力的なものではなかったら、どれほど至れり尽くせりな工夫が施されていても、その世界を深く知ろうという意欲は薄れ、物語に没入することはできなかっただろう。そのようにはならず、主人公たちに深く感情移入して冒険が楽しめたのは、「グラブル」が持つ独創的な世界設定を3D空間で表現すべく、こだわり抜かれたきめ細やかな映像表現や各種演出によるところが大きい。

「グラブル」では特徴的な描き込みがなされた2Dイラストが用いられているが、「グラブル リリンク」ではこれが馴染むような絵画的なタッチで、世界全体が表現されている。フォトリアルな方向性ではないが、細部や遠景まで見え方にこだわった描き込みにより、どこを切り取っても惚れ惚れするような“生きた世界”が構築されているのだ。

緊迫したカットシーンでの見せ方や、キャラクターたちの表情、カットシーンからプレイアブルなシーンへの繋ぎ目を感じさせないシームレスな転換――。ふと「これはゲームなんだ」と我に返る要因になるような要素は徹底的に取り除かれ、そのときどきのシチュエーションに深く没入できるようになっているのは特筆すべき点であろう。本作ではこうした大小様々なこだわりを、至るところで見て取ることができる。

本作の“見せ方”へのこだわりの中で、筆者が個人的に非常に気に入ったところを、ピンポイントかつ少々マニアックではあるがひとつ紹介しよう。RPGのようなジャンルのゲームをいくつかプレイしているゲームファンなら「ゲームの進行上、プレイヤーにまだ通過してほしくない進路を通せんぼする存在」に出くわしたことが何度かあるだろう。

こうした存在は筆者のこれまでの経験上、いかにも「通せんぼするための存在です」と言わんばかりの門番や警備員、または誰かが道の真ん中に放置した積荷の形を取っている場合が多かった。だが「グラブル リリンク」で最初に出会った「進路を通せんぼする存在」は、“チャンバラをして遊んでいる町の子どもたち”だったのだ。

彼らの存在により、この町の牧歌的でのどかな雰囲気、そこで生きる人々の生活感をいっそうしみじみと感じられて、静かに感嘆した点である。「グラブル リリンク」はこういった深度で、“世界を自然なものとして描く”ために「RPGのお約束はこんな感じ」といったセオリーから一歩踏み込み、プレイヤーへの“見せ方”にこだわって作られたのだろう。

そして、本作で「グラブル」の世界にはじめて触れる、その価値があると太鼓判を押せるほどに、このゲームはアクションRPGとしての高い完成度をも有しているのである。

■20人前後のキャラクターごとに異なる奥深さを備えているのはアクションゲームとして驚異的

「グラブル リリンク」はボタン操作の組み合わせで数通りのコンボをくり出して敵キャラクターを攻撃し、敵の攻撃にはガードや回避で対処する、近接戦闘主体のアクションゲームとしてスタンダードな作りがベースにある。ここにリキャストタイム制の“スキル”を組み合わせることで、状況にあわせた立ち回りを考えていくことになる。

このアクションゲームとしての手触りが非常に良い。ボタンを押せばキビキビと操作キャラクターが反応し、それでいて身体や攻撃の手応えといった“重み”も感じられる絶妙なバランスで成り立っている。

また、最大4人のパーティーメンバーとの共闘に付随して、“リンクアタック”や、“奥義”を連続で発動することで発生する“チェインバースト”など、仲間との共闘感が味わえるシステムも搭載。これらをコントロールすれば、ド派手な演出とともに有利な状況を作り出していけるのも実に痛快だ。シングルプレイ・マルチプレイ問わず、この共闘感は本作ならではの大きな魅力だと言えるだろう。

使用するボタンが多くて煩雑に感じたり、4人のパーティーメンバーがそれぞれド派手なエフェクトを発しながら戦うので、視覚的に敵の動きに対処しづらい状況が生じるといった気になる点はあるのだが、終始爽快で思った通りに動いてくれるプレイフィールの前では些細な問題だと思えた。

驚くべきは、こうした魅力が20人前後のプレイアブルキャラクター全員でなんら遜色なく味わえ、それでいて各キャラクターごとに強い個性を感じられるプレイフィールを実現していることだろう。

主人公ならスタンダードな性能かつ、コンボを最後まで繋げることでクラスレベルが上昇してアビリティ強化。イオなら遠距離からの攻撃・支援を得意とし、チャージ攻撃を積極的に行うことで“魔力の渦レベル”上昇でチャージ攻撃の威力がさらに上昇。ゼタなら空中に飛び上がってからタイミング良くボタン入力することで連続攻撃を叩き込めて、カウンター攻撃も駆使してテクニカルに攻め立てていける――このように、プレイスキル上達のために意識すべき点がキャラクターごとに異なり、それぞれに奥深さを備えている。

なお、どのキャラクターもかなり極めがいがあるが、とはいえゲームを通して単一のキャラクターでやり込んでいくタイプのアクションゲームと比べると、ひとりひとりの奥深さは“必要十分”といったものであるのも事実だ(それを人数分、個別に用意しているのだから、驚異的な作り込みなのは間違いない)。

無料で遊べるデモ版とは異なり、製品版ではメインストーリーでも早々に主人公以外のキャラクターを操作できるようになる。いろいろなキャラクターを能動的に試して、自分に合った戦闘スタイルを持つ者を探していくのが、本作のポテンシャルを活かした楽しみ方だと言えるだろう。

ちなみに、初期から操作可能なのは主人公、カタリナ、ラカム、イオ、オイゲン、ロゼッタの6キャラで、それ以外のキャラクターはメインストーリーを進めるごとに手に入る“キャラクター解放チケット”で徐々にアンロックしていくことになる。

カットシーンなどで物語に絡むのは初期から操作可能な面々であるものの、それ以外のプレイアブルキャラクターを操作している場合、ストーリー展開にあわせて、彼ら固有の台詞を発することがあった。こういった部分で“共に戦う仲間”であることをしっかり描いてくれるのも、好感が持てたところだ。

プレイヤーひとりが倒れても、ほかのパーティーメンバーが全滅しなければ一定時間(ボタン連打や、仲間の救助アクションにより短縮可能)で復活できる本作において、メインストーリーのプレイ中にゲームオーバーになることは、実はほとんどない。それでいて、難易度をノーマル~ハードと上げることでプレイスキルの上達を目指す余地が広がっていく辺りの調整は、絶妙な塩梅だと感じた。

逆に難易度を下げたり、2段階のアシストを活用すれば、アクションゲームが苦手なプレイヤーでも爽快なプレイが楽しめる。幅広いプレイヤーを想定し、それぞれが夢中になるための調整も、本作においてかなり力を入れている部分であることがプレイしてみるとよく分かるだろう。

■ゲームを支える技術力が融合したボスバトルはメインストーリーの華

シングルプレイ専用のメインストーリーは章仕立てになっており、各章はストーリー部分、プレイアブルな部分をあわせて1時間弱くらいで攻略できるボリューム感となっている。訪れる場所のロケーションも豊富で、いずれも絵作りへのこだわりに抜かりはない。

訪れるフィールドはいずれもそれなりの広さがあり、探索要素やサブ的なチャレンジ要素が配置されていたり、ロケーションを活かしたギミックが用意されていたりする。バトルシステムのみならず、あらゆるプレイアブルな場面で“動かしていて楽しい”が実現されていると感じられた。

各章の終盤をはじめ、要所で待ち受けているボスバトルは、BREAKモードを狙えるオーバードライブモード、防御力が大幅強化されるため、無理な攻撃は避けたほうが無難なバーストオーラなどにより、状況が刻一刻と変化する。HPを一定数減らすことによる行動パターンの変化といった特殊なシチュエーションや、カットシーンとのシームレスな行き来により盛り上がる演出が用意されている場合も。

ゲームシステム×ストーリー展開×映像演出、このゲームを支える各種技術力が融合して熱い戦いが楽しめる一部のボスバトルは、とくにメインストーリーの“華”と言えるだろう。

拠点の街で受注できるクエストは、シングルプレイで挑むも良し、オンラインでほかのプレイヤーを募って共闘するも良し。それぞれのクエストに攻略内容による評価や、複数の目標が設定されており、これらを達成すればよりレアな報酬が手に入る。やり込む上では、ストーリー以上に中心を占めるモードになるのだと思う。

探索やクエスト報酬で手に入る素材は、武器の上限解放や、武器に装着して能力の底上げや特殊効果の付与を行う“ジーン”の強化に用いることになる。キャラクターのレベルアップなどで手に入るポイントを消費して行う“キャラクター強化”と共に、ゲームの進行にあわせてこまめにチェックすることになるだろう。

ひとつ、アクションゲーム好きであることによる個人的な好みで言えば、こういった成長要素によってHPや攻撃力といった基礎ステータスを少しずつ上げていく行程は、育成方針によってプレイフィールが大きく変化するわけでもないこともあり、少なからず煩わしさを感じた。

とはいえ、じっくり育成することでさまざまな腕前のプレイヤーが自分のペースで楽しめるゲームを目指すというのは、非アクションゲームである「グラブル」をアクション要素のあるゲームに落とし込むための方向性としては、恐らく正しいのだと思う。

■マルチプレイも含めた遊びのバリエーションはさらに広く、深く

今回のレビューはシングルプレイでの所感をベースにしたものだ。本作はシングルプレイだけでも非常に高い満足感を得られるが、マルチプレイによるやり込みを想定したゲームデザインやコンテンツも含んでいる。いっしょに遊ぶ相手がいれば、遊びのバリエーションが拡張されるのは確かだろう。

メインストーリーではさほど意識しなくても問題なかった属性相性や、敵の弱点を突くといった立ち回り方の工夫、それらを前提としたパーティー編成など、エンドコンテンツをやり込むなら、考えるべきことはたくさんありそうだ。武器やジーン、スキルのシナジーを考えた最良の育成をキャラクターごとに模索するのなら、クエスト報酬獲得のために果てしない戦いに身を投じることになるだろう。

「グラブル リリンク」のリッチな映像表現、アクションRPGとしての丁寧な作り込み、コンテンツの豊富さ、それらを束ねた総合力は「長期にわたった開発期間も伊達ではない」と言えるものに仕上がっていた。「グラブル」ファンならば感慨深いことこの上ないだろうし、これらを味わうために「グラブル」を知らずとも本作から作品世界に飛び込んでいけるための工夫も、豊富に用意されている。

そして、そうする価値は十分にあると断言できるゲームだ。

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