「あまりしゃべらなくなった…ここから一旦出したほうが絶対にいい」被災したこどもをどうケア? 「居場所」づくりの重要性【現場から、】

能登半島地震の発生から2月1日で1か月です。被災地となった能登半島ではいまだ1万人以上が避難生活を送っています。先の見えない生活が続く中で、特に被災した子どもたちの精神的なケアが課題となっています。

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能登半島の先端に位置する石川県・珠洲市。市内の約8割の建物が被害を受け、いまだ、ほぼ全域で断水が続いています。

受験を控える中学生たちは整った学習環境を求め、金沢市に集団避難を実施。珠洲市からは、市内の中学生の半数以上にあたる100人余りの生徒が親元を離れて生活することを決断しました。先の見えない生活が続く中、被災者はさまざまな決断を強いられています。

<珠洲市の避難所で暮らす宮口智美さん>
「なんか、子どももちょっと様子がおかしいなっていうのに私も気がついて、もうここから一旦出したほうが絶対にいいよということで決断しました」

宮口智美さん一家は、自宅が被害を受け一人息子の翼くんが通う小学校で避難生活を送っていました。しかし、慣れない避難所生活によるストレスを翼くんが感じていると気づき、翼くんを静岡の親戚に預けました。

<珠洲市の避難所で暮らす宮口智美さん>
「最初は何事もなく普段通り友達と遊んでいるように見えたんです。(ある時)一人でホワイトボードにずっと国の名前をいっぱい書き続けていて、大丈夫かなと思ったんですね。ずっと書いてて、何かあまりしゃべらなくなったというか」

離れて生活してからは、時間を見つけて連絡を取り合っています。

<宮口さん>
「出た。何してたん?」
<翼くん>
「宿題」
<宮口さん>
「宿題させられてるん」

<宮口さん>
「昨日さわやか行ってきたんでしょ?さわやかおいしかった?」
<翼くん>
「うん」
<宮口さん>
「何食べた?」
<翼くん>
「チーズハンバーグ」

<宮口さん>
「じゃあ頑張って勉強して」
<翼くん>
「もう終わる」
<宮口さん>
「また夜電話するわ!じゃあねー」

静岡に行ってから2週間ほどが経ち、翼くんは元気を取り戻しているようでした。

<珠洲市の避難所で暮らす宮口智美さん>
「とりあえず食べたいものを食べて、元気にやってくれているので安心です。普段の息子に戻ったなって思ってます」

感受性が強い子どもにとって、災害時の心のケアは特に重要な課題です。こうした課題を解決しようと、いま被災地では地元のNPOなどが、子どもの居場所づくりに励んでいます。

<子どもを預ける親>
「すごく助かります。避難所だと子どもも少なくなってきていないので、遊び場がなくて。ストレス発散じゃないですけど、楽しく遊んでるので」

災害派遣精神医療チーム=DPATとして、実際に被災地で支援を行った医師は、少しでも早く子どもの変化に気付くことが大事だと話します。

<静岡県立こころの医療センター 大橋裕副院長>
「いわゆるストレス状態にあるお子さんの変化にはいくつかサインがある。発言内容にそれが反映されたり、いつもはしない行動をしたり、いくつかのパターンがあると思うので、一番は周りの大人達がいくつかのサインに気付いてあげるということ。気づいたら、間髪おかずにそこに寄り添ってあげるということが大事なこと」

小学校再開のタイミングで翼くんが珠洲に帰ってきました。被災地でのストレスは子どもにとって負担ですが、親と離れ離れになることも心に変化をもたらします。子どもたちにとっての最善策とは何か。震災によって大人たちに課題が突き付けられています。

静岡県立こころの医療センターの大橋副院長によりますと、同年代の子と遊んだり交流することが子どもの精神ケアには非常に重要だということです。子どもたちにとっては、出来る限り日常に近付けてあげることが重要だと感じました。

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