廃線跡・北摂ニュータウン・歴史ある街並みを眺めながら…JR宝塚線『新三田』~『尼崎』乗車リポート

JR宝塚線を走る区間快速 ※写真は新三田行きの電車

◆鉄アナ・羽川英樹「行ってきました!」

JR宝塚線は、『大阪』~福知山線『篠山口』間の路線を指す愛称ですが、今回は運転頻度の高い区間、『新三田』~『尼崎』を乗車リポートします。

【動画】鉄アナがリポート! JR宝塚線『新三田』→『尼崎』を行く

『新三田』は1986(昭和61)年の福知山線全線電化で誕生した駅。周辺には北摂三田ニュータウンや自然豊かな有馬富士公園がひろがります。

今回乗車した区間快速は、平日昼間は1時間に4本出ていますが、うち『新三田』始発が3本、『篠山口』発が1本設定されており、『川西池田』までは各駅に停まります。

ほどなく人口10万人を抱える三田市の中心、『三田』に到着。駅舎と向かいの商業施設「キッピーモール」はペデストリアンデッキで結ばれており、かつてここには阪急百貨店「三田阪急」が入っていましたが、2021年に撤退しています。また隣接する神戸電鉄の三田駅からは新開地やウッディタウン中央方面への電車が発車しています。

『道場』を過ぎるとトンネルの連続。『武田尾』はトンネルと鉄橋にはさまれた秘境駅です。ここから『生瀬』までは廃線跡ハイキングが楽しめるんです。

かつての福知山線は急カーブが連続する武庫川沿いに敷かれており、蒸気機関車がモクモクと煙を吐きながら力走していました。そんな旧福知山線跡が、一部枕木なども残したまま4.7キロメートル・約2時間のハイキングコースとして人気を集めています。ただし、6つあるトンネルの中は灯りがなく真っ暗なので、お出かけの際は必ず懐中電灯をお持ちください。

『西宮名塩』はトンネルに挟まれた山間の駅。ここには1991(平成3)年のニュータウン誕生とともに誕生した名物の斜行エレベーターがあります。高低差60メートル、全長150メートルを2基のエレベーターが2分で結んでおり、山を切り開いた高台には西宮名塩ニュータウンが南斜面に広がっています。

『宝塚』は、特急「こうのとり」(新大阪~福知山・豊岡・城崎温泉を結ぶ)も停車する主要駅。ここで阪急宝塚線・今津線と接続します。駅から続く「花のみち」の横には宝塚ホテルや宝塚大劇場が立ち並び、華やかな散策路にもなっています。

『川西池田』は、兵庫県の川西市と大阪府の池田市という隣接する2つの都市の名前がくっついた珍しい駅名。かつては能勢電鉄がこの駅まで乗り入れていました。現在は、阪急・能勢電の川西能勢口駅と、550メートルのペデストリアンデッキで結ばれています。

『伊丹』は駅前に有岡城跡があり、その向こうは陸橋で巨大なイオンモールと結ばれています。そしてここは清酒発祥の地で、酒蔵通りにその栄光の名残がありました。旧岡田家住宅には17世紀の町家と酒蔵がしっかりと保存され、雑貨商として栄えた旧石橋家住宅とともに入館無料で公開しています。

『塚口』を出て右カーブにさしかかると、2005(平成17)年に発生した列車脱線事故の現場になります。現在は慰霊施設「祈りの杜」として保存されています。

『新三田』から約40分で、区間快速は複雑な配線の『尼崎』7番ホームに滑り込みます。JR神戸線の三宮・姫路方面と、JR東西線の北新地・京橋方面は乗り換えとなります。

1995(平成7)年に発生した阪神・淡路大震災の時には、迂回(うかい)路線として大きな役割を果たした、この路線。もともとは阪鶴鉄道として1899(明治32)年に福知山までが全通したのが始まりです。その後、国有化されてからも、長年にわたり単線非電化で競合路線に後れをとっていました。しかし1986年に新三田まで複線電化されるとその速達性が注目され、今、沿線は人口が急激に増えています。

ちなみに、競合する阪急と、大阪(大阪梅田)への所要時間を比較すると、伊丹からはJRが14分に対して阪急が20分、宝塚からはJRが26分に対して阪急が34分と、JRがかなり優位に立っています。

普段は通勤通学での利用が多い路線ですが、武庫川に沿った沿線は山間のニュータウン・秘境・廃線跡・タカラヅカ・清酒発祥地など、いろんな顔を持ち合わせています。そんな街々を冬の晴れ間に途中下車しながら歩いてみるのも面白いものです。(羽川英樹)

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