震災・原発事故13年 被災農地の行方(下) 農業復興へ全体構想を 営農型太陽光 新たな試みも 富岡

富岡町で進めている実証事業を説明する渡辺

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で被災した浜通りに設置が相次ぐ営農型太陽光発電施設は、太陽光パネル下で栽培する作物の管理が行き届かない事例も確認され、意欲ある担い手への農地集約や奨励作物の産地化など、今後の農業振興への影響を心配する声が上がる。

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 環境エネルギー政策を研究し県内の事情に詳しい信州大人文学部准教授の茅野恒秀(45)=環境社会学=は、本県の大規模太陽光発電施設(メガソーラー)の開発は復興予算による補助事業などを背景に、他県に比べ突出して多いとする。太陽光パネルの下で作物を育てる営農型太陽光発電も構図は同じだとし、「利益率が他より高いとみられ、事業者が進出しやすくなっている」と分析する。

 被災地の農地には広域的な営農再開を後押しする補助事業がある一方、営農型太陽光発電など再エネ関係の補助事業もある。茅野は、土地の荒廃を防ぐには営農型太陽光発電は有効としつつ、「継ぎはぎのように営農型が広がれば、農業の再開を阻害する要因になってしまう」と危惧する。「省庁の縦割りが被災地の農業復興をちぐはぐにしている」とし、被災地の農業の全体構想を描く必要性を指摘。調整に国や県、市町村などの連携が重要と訴える。

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 営農型太陽光発電の新たな形を模索する実証事業が富岡町で始まった。事業のイメージと参画する事業者・大学の役割は【図】の通り。パネル下の農地に太陽の光を均一に当てられる仕組みだ。町に本社を構える合同会社良品店を中心に、福島大と日大工学部、三つの企業が連携し展開している。パネルの間に光拡散板をはめ、パネルで影ができる地面にも光を届ける。花木や一年草、シュンギクなどを育て、効率的に栽培できる作物を選定する。パネルを支える土台は県産材を使い、強度を測定。保護塗装の有効性も検証する。3年後の実用化を目指している。

 従来の営農型はパネル下の光量が限られ、作物が十分に育たない事例も生じていた。均一に光を当てられれば、栽培に適した作物が増える可能性がある。パネルの設置面積も増やせるといい、発電と営農の両面で効率の向上が期待される。良品店代表社員の渡辺良一(37)は「景観に配慮したデザインにもこだわり、近未来的な風景を創造したい」と意気込む。

 事業に携わる企業間を結んだ福島イノベーション・コースト構想推進機構産業集積部長の楠瀬暢彦は「営農型太陽光発電システムの拡大に資する一つの革新的な取り組みだ」と期待する。(文中敬称略)

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