旬を食べよう〜東海地方の伝統野菜〜【越津(こしづ)ねぎ】愛知県尾張地方(津島市)

日本列島のほぼ真ん中辺りに位置する東海地方は、古くからモノやヒトの往来が盛んで、豊かな自然と過ごしやすい気候に恵まれていることもあり、野菜づくりが盛んな地でした。

そんな東海地方には、数々の伝統野菜が地産地消されており、野菜本来の「旬」や食文化を教えてくれる貴重な存在として親しまれています。

名古屋市内のスーパーで購入した越津(こしづ)ねぎ

今月は、「あいちの伝統野菜」に選定されている「越津(こしづ)ねぎ」(写真)をフカボリします。

江戸時代から愛知県津島市(旧海部郡神守村越津地域)で栽培

包装ビニールをはずしたところ。先端は切って売っていたが、長さは約85センチあった。

和食・中華を中心に、色々な料理で重宝するネギは、8世紀以前に日本に渡来し、古くから親しまれている野菜の一つです。

主に白い部分を食べる「根深(ねぶか)ねぎ」や青い部分を食用にする「葉ねぎ」といった品種群があり、各地域には古くから食べられている「ご当地ねぎ」のようなものがあります。

愛知県の尾張地域で江戸時代から作られているのが「越津ねぎ」で、主に関東で作られている根深ねぎと、関西でよく作られている葉ねぎの中間の性質を持つとされています。

JA愛知北によると、江戸中期に海部郡神守村越津地域(現・愛知県津島市越津町)で栽培され始め、幕府への献上品として扱われていたそうです。

現在では江南市、一宮市、津島市、稲沢市などで栽培されており、11月から3月を出荷時期として、中京地域や関東地域に安定した出荷販売を行っているそうです。

江戸時代から当地で栽培され、現在でも種や生産物が入手できるという理由から、2002年に「あいちの伝統野菜」に選定されています。

根深ねぎと葉ねぎの中間の性質で、やわらかく食べやすい

根深ねぎと葉ねぎの中間の性質を持つとされる越津ねぎは、緑の部分も白い部分もやわらかく食味が良いため、鍋物や煮物、炒め物、薬味と、多様な料理に合います。

以下にいくつか調理例をご紹介します。

まずは、お弁当にもおすすめの「越津ねぎ入りの玉子焼き」です。
溶き卵に砂糖、白だし、みりん適量としょうゆ数滴、みじん切りにした越津ねぎをを加えてよく混ぜます。
あとは通常の卵焼きと同様に焼くだけです。
分量はお好みですが、卵3個にしょうゆ以外の調味料は各小さじ1が目安です。
やわらかく優しい越津ねぎの味わいが玉子焼きとよく合います。

次は、シンプルな「越津ねぎおかか」です。
みじん切りにした越津ねぎと鰹節を混ぜ、しょうゆで和えれば、これだけでご飯のおともになります。

簡単シリーズ「ちくわと越津ねぎのマヨ炒め」。
薄く切ったちくわと越津ねぎを、大さじ1ぐらいのマヨネーズを入れたフライパンでさっと炒め、仕上げに麺つゆで味付けをするだけです。
炒められて香ばしくなったちくわ、やわらかくとろけるようになった越津ねぎに、マヨネーズと麺つゆがコクと旨み、まろやかさを加えます。

最後は「鍋」です。
ここでは「シンプル」をテーマにしていますので、たっぷりの越津ねぎに鶏肉とお好みのキノコ類を合わせて、鶏ガラスープの素(もと)と水、酒、塩胡椒を加えて煮るだけです。シンプルですが、越津ねぎのおいしさを堪能できる料理です。コクを足したい場合は、しょうゆとごま油(またはラー油)を若干加えても美味しいです。

「鶏ガラスープの素」を「昆布だしの素」に、「塩胡椒」を「みりんとしょうゆ」に置き換えると純和風になります。

一般にネギは抗菌作用のあるアリシンという成分を多く含み、消化を促し、鎮静作用や血栓予防効果も期待できるとされています。

また文部科学省の食品データベースによると、葉ねぎ(ネギの青い部分)にはβカロチンとビタミンK、葉酸、ビタミンC、カリウムなどが豊富とのこと。これらは油で炒めることによって栄養価が上がるというデータもあります。

根深ねぎと葉ねぎの特徴を併せ持つ「越津ねぎ」は、美味しくて健康にも良い食材といえるでしょう。

体調を崩しがちな冬。300年以上前から東海地方で食べられ続けてきた「越津ねぎ」を食べて、厳しい冬を乗り切りましょう。

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